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下痢にガランターゼが効く?
公開. 更新. 投稿者:下痢/潰瘍性大腸炎.この記事は約3分37秒で読めます.
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乳糖不耐症とガランターゼの役割:風邪の下痢にも効くのか?

「ガランターゼって何の薬?」「下痢に効くって本当?」そんな疑問を持たれる方も多いかもしれません。この記事では、乳糖不耐症とその治療に用いられる乳糖分解酵素製剤「ガランターゼ」の仕組みや適応、使用実態について、医薬品の視点からわかりやすく解説します。
乳糖不耐症とは何か?
乳糖不耐症とは、乳糖(ラクトース)をうまく消化吸収できず、腹痛や下痢を起こしてしまう状態を指します。乳糖は、母乳や牛乳、ミルクなどに多く含まれる糖分で、
・ラクターゼという小腸の酵素によって
・グルコースとガラクトースに分解され
・腸から吸収される
というプロセスを経ます。
このラクターゼが欠乏、または活性低下していると、乳糖が分解されずに腸内に残り、水分を引き寄せて浸透圧性の下痢を引き起こします。
一次性と二次性乳糖不耐症の違い
乳糖不耐症には、大きく分けて次の2種類があります:
● 一次性乳糖不耐症(先天性)
生まれつきラクターゼが少ない、あるいは加齢とともに酵素活性が低下する体質によるもの。比較的まれですが、日本人には比較的多いとされ、成人で牛乳を飲むとお腹を壊す人の多くはこのタイプです。
● 二次性乳糖不耐症(後天性)
風邪やウイルス性腸炎などで小腸の粘膜が傷つき、一時的にラクターゼの産生が低下することで起こります。こちらは乳幼児や小児に多く、特に下痢が長引いた後に発症します。
ガランターゼとは?
ガランターゼ(一般名:乳糖分解酵素)は、乳糖を消化できない人のために、外から酵素を補う薬です。主に小児の下痢治療などで使われます。
適応症には以下が含まれます:
・一次性乳糖不耐症
・二次性乳糖不耐症
・単一症候性下痢症
・急性消化不良症
・感冒性下痢症
・白色便性下痢症
・慢性下痢症
・未熟児・新生児の下痢
とくに注目すべきは「感冒性下痢症」や「単一症候性下痢症」に対する適応。風邪による一過性の下痢に対して短期的に処方されることもあるのです。
海外ではどうなのか?
乳糖不耐症の治療は、世界的には以下のようなアプローチが一般的です:
・乳糖を含む食品の制限
・水分と電解質の補給(経口補水液など)
・対症療法(整腸剤や止瀉薬)
ガランターゼのような酵素製剤の使用は国によって評価が分かれており、臨床エビデンスの質に関しては限定的とされています。
エビデンスの実際と理論的根拠
ガランターゼの使用は「理論上は有効」とされる一方で、有効性を明確に示した大規模な臨床研究は限られています。特に風邪による一時的な下痢に対しての使用については、
・明確な推奨ガイドラインが存在するわけではなく
・医師の臨床判断や経験に基づく処方が主流
というのが現状です。
なぜ日本では処方されるのか?
ガランターゼが処方される背景には、次のような要因が考えられます:
・日本人に乳糖不耐症が多く、日常的に乳製品を摂取する機会が多い
・小児科ではミルクとの関係が重視されやすい
・下痢が長引くと家庭での対応が難しく、速やかな改善を求められる傾向
これらの要素が合わさり、ガランターゼの使用が実臨床で支持されている部分もあると考えられます。
注意点と服薬指導
ガランターゼは基本的に安全性の高い薬ですが、以下のような注意が必要です:
・乳製品摂取の直前または同時に服用することで効果が最大化
・過剰摂取の必要はなく、指示された用量・回数を守る
・効果が見られない場合は速やかに医師に相談を
また、風邪による一時的な下痢に対して使う場合は、長期服用は基本的に不要です。