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痔になりやすい職業は?お尻の職業病
公開. 更新. 投稿者: 44 ビュー. カテゴリ:便秘/痔.この記事は約6分33秒で読めます.
目次
3人に1人は「痔主」

「痔(じ)」というと恥ずかしい病気のように思われがちですが、実は日本人の3人に1人が何らかの痔疾患を経験しているといわれています。
痔は決して珍しい病気ではなく、長時間の座位・便秘・冷え・生活習慣の乱れといった、誰にでも起こり得る条件から生じる“生活習慣病”です。
一方で、特定の職業や働き方は、痔の発症リスクを大きく高めることが知られています。
この記事では、痔になりやすい職業やその背景、さらに職業別の予防法を詳しく解説します。
痔は「仕事病」でもある
痔の原因の多くは、肛門周囲の血流障害とうっ血にあります。
肛門の血管はデリケートで、座りっぱなしや立ちっぱなしなどで長時間圧迫を受けると、静脈がうっ滞しやすくなります。
また、便秘やいきみ、運動不足、冷えといった要因も肛門の血管を膨らませ、痔核(いぼ痔)をつくる原因になります。
つまり、職業上の姿勢や排便習慣が痔を生み出しているともいえるのです。
そのため、痔はある意味で「職業病」でもあります。
痔になりやすい職業トップ5
① デスクワーク(事務職・プログラマー・会計職など)
長時間座りっぱなしでパソコンに向かう職種では、骨盤内の血流が滞りやすく、肛門周囲の静脈叢(じょうみゃくそう)がうっ血します。
特に冬場の冷えは血流を悪化させ、いぼ痔(痔核)を引き起こす大きな要因です。
典型的な症状:
・排便時の出血
・肛門部の違和感・しこり
・長時間の座位で痛みが強まる
対策:
・1時間ごとに立ち上がってストレッチをする。
・お尻の下にやわらかいクッションを使う(ドーナツ型よりも中央が浅いタイプがおすすめ)。
・体を冷やさず、温かい飲み物をこまめにとることも大切です。
② トラック・タクシー・バスの運転手
運転職は、座り姿勢+振動+排便我慢という痔の三重苦が揃っています。
長距離ドライバーの場合、水分を控える傾向があり便が硬くなりやすいことも問題です。
また、トイレに行きづらい環境のため、便意を我慢して痔を悪化させるケースが非常に多くみられます。
典型的な症状:
・強い痛みを伴う外痔核(血栓性外痔核)
・いきみで悪化する脱出性のいぼ痔
・便秘と下痢の繰り返し
対策:
・休憩時には必ず立ち上がり、数分でも体を動かす。
・コーヒーだけでなく水を意識的に飲む。
・トイレを我慢しない習慣が、最も大事な予防になります。
③ 立ち仕事(販売員・美容師・看護師・調理師など)
立ちっぱなしの仕事もまた、下半身の静脈に負担をかけ、うっ血を招きます。
重力により血液が下肢にたまりやすく、骨盤内の血流も悪化。
下肢静脈瘤と痔を併発する人も少なくありません。
典型的な症状:
・長時間の立位で肛門が重い
・夜間に痛みや腫れが出る
・排便時に少量の出血がある
対策:
・休憩時間に軽く足を上げて休む。
・着圧ソックスや弾性ストッキングを使って下肢血流をサポートする。
・勤務後の入浴・坐浴は肛門血流を改善する最も効果的な方法です。
④ 力仕事(建設業・倉庫業・農業など)
重いものを持ち上げるときに腹圧が急激に上昇します。
その圧力が肛門の静脈に伝わり、痔核が膨張します。
排便時のいきみと同じ原理で、繰り返されると脱出性のいぼ痔や血栓性外痔核を引き起こします。
典型的な症状:
・いきんだ後に急に痛みと腫れが出る
・しこりを触れる
・痛みで座れないほどの外痔核
対策:
・作業中に呼吸を止めず、息を吐きながら力を入れる。
・便秘を防ぎ、排便時のいきみを減らす。
・腹圧をかけた後は坐浴で血流を促す。
⑤ 妊娠・出産を経験する女性
妊娠中は、子宮が骨盤内の血管を圧迫するため、肛門静脈がうっ血します。
さらに出産時の強いいきみやホルモン変化によって、外痔核や内痔核が悪化しやすくなります。
出産後は睡眠不足・便秘・冷えなども重なり、慢性化しやすい傾向があります。
対策:
・妊娠中から便通コントロールを意識し、繊維と水分をしっかり摂取する。
・授乳中でも使える軟膏や坐薬(例:ポステリザン軟膏など)は医師に相談を。
・入浴・坐浴で温めることは安全で有効です。
痔を悪化させる生活習慣
痔の職業的要因に加えて、次のような生活習慣が痔のリスクを高めます。
● 食事習慣
香辛料(唐辛子など)の摂りすぎは刺激を強め、炎症を悪化させます。
唐辛子は消化されにくく、便に混ざって排出されるため、「お尻に唐辛子を塗っているようなもの」とも言われます。
アルコールや喫煙も血流を悪化させ、痔核のうっ血を助長します。
食物繊維不足や水分不足は便秘を引き起こし、排便時のいきみにつながります。
● ウォシュレットの使いすぎ
清潔を保つのは良いことですが、強い水圧・長時間の洗浄・高温の温水は皮膚バリアを壊します。
過度な洗浄で常在菌バランスが乱れ、かゆみや炎症を起こすことも。
使用は短時間・弱水圧が基本です。
● 運動不足と冷え
運動不足は腸の動きを鈍らせ、便秘を悪化させます。
また、冷えは骨盤内血流を滞らせるため、痔核がうっ血しやすくなります。
特に冬場の冷え性の女性は注意が必要です。
痔の種類と治療の基本
痔には大きく分けて「痔核」「裂肛」「痔瘻」の3種類があります。
痔核(いぼ痔)
肛門のクッション構造を形成する静脈叢がうっ血して膨らむ病気。
・外痔核:肛門の外側(皮膚側)にでき、痛みが強い。
・内痔核:肛門の内側(直腸側)にでき、出血が主症状。
初期は軟膏や坐薬などの保存療法で治りますが、痔核が脱出する重症例では手術(結紮切除やALTA硬化療法)を検討します。
裂肛(きれ痔)
硬い便の通過で肛門の出口が裂けて起こる病気。
便秘の女性に多く、排便後の痛みや出血が特徴です。
慢性化すると肛門が狭くなり、ポリープや見張りイボを形成します。
便通を整え、軟膏で炎症を抑えることで治癒しますが、狭窄例では手術が必要です。
痔瘻(あな痔)
肛門の小さなくぼみから細菌が侵入し、膿がたまってトンネル(瘻管)を作る病気。
自然治癒はほとんどなく、外科手術が第一選択です。
放置すると再発や感染、まれに癌化する危険があります。
手術だけでは治らない理由
多くの人が「痔は手術しないと治らない」と思っていますが、実際にはそうではありません。
軽症〜中等症の多くは、生活習慣の改善と外用薬でコントロール可能です。
また、手術をしても生活習慣が変わらなければ再発します。
痔は「切って終わり」ではなく、「付き合っていく病気」ともいえるのです。
職業別・痔の予防ポイントまとめ
職業とリスク要因
・デスクワーク:座りっぱなし・冷え 【対策】1時間ごとに立つ・温める・便秘予防
・運転職:座位+振動+排便我慢 【対策】休憩でストレッチ・水分補給・トイレを我慢しない
・立ち仕事:下半身うっ血 【対策】足を高くして休む・入浴・着圧ソックス
・力仕事:腹圧上昇 【対策】息を止めない・いきみ防止・坐浴
・妊娠・出産:圧迫・ホルモン変化 【対策】便通管理・温め・医師に相談
まとめ:痔は「働き方と習慣の鏡」
痔は命に関わる病気ではありませんが、生活の質を著しく下げる病気です。
そして、あなたの働き方や生活習慣を映し出す“鏡”でもあります。
長時間の座位、ストレス、排便我慢、冷え、便秘――これらを放置しないことが最大の予防。
もし症状が出たとしても、早期に軟膏・坐浴・生活改善を始めれば、多くは手術をせずに治まります。
・痔は「生活習慣病」であり、「職業病」でもある
・デスクワーク・運転職・立ち仕事・力仕事は高リスク
・手術が必要なのは重症例や痔瘻のみ
・痔の再発防止には、姿勢・排便習慣・血流改善が不可欠
・ウォシュレットや香辛料も「やりすぎ」「摂りすぎ」に注意
「痔は恥ずかしい病気ではなく、“働く現代人の宿命”」
だからこそ、日々の生活習慣を見直すことが最大の治療であり、最良の予防法です。




