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おねしょの治療は必要か?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約6分49秒で読めます.
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夜尿症は自然経過で治癒する例が多く、かつては治療せずに経過を見守る考えが強かった。
しかし、夜尿症は本人や家族の精神的負担が大きいため、近年では就学以降の持続や成人への移行が見られる場合は、様々な治療が試みられている。
治療においては、夜尿症を引き起こしている原因を見極めることが重要となり、生活指導、薬物治療(抗利尿ホルモン、三環系抗うつ薬、抗コリン薬など)や夜尿アラーム療法などが行われる。
おねしょは病気
おねしょは医学的には夜尿症という病気ととらえられています。
しかし病気という認識が母親に少なく、医療機関を受診する子どもは少ないです。
夜尿症とは、5歳以後に少なくとも月1回以上のおねしょがあるものをいいます。
夜尿は5歳児で10~15%、10歳児で7%程度にみられ、男の子に多いことが知られています。
おねしょは5〜6歳までに80%がしなくなるといわれていますが、それを過ぎても月に数回以上おねしょをすることを「夜尿症」といいます。
夜尿症の推計患者数は全国の5〜15歳のうち約80万人(6.4%)です。
このうち5%には腎疾患や糖尿病といった基礎疾患が隠れていることがありますが、残りの95%では特に基礎疾患はみられません。
治療の基本は生活指導で、これで夜尿症の2〜3割は治ります。
具体的には、⑴夕食は寝る2〜3時間前に取る、⑵水分・塩分の取り過ぎに注意する、⑶寝ている間の寒さに(冷え)に注意する、⑷寝る前にトイレに行かせる、などが挙げられます。
なお、就寝中に起こしてトイレに行かせることは睡眠リズムを崩すため、かえって良くありません。
これらの生活指導で改善がみられない場合は、薬物療法やアラーム療法を考慮します。
おねしょの薬物療法
薬物療法では、抗利尿ホルモン薬、抗コリン薬、三環系抗うつ薬が使用されますが、第一選択となるのは、抗利尿ホルモン薬です。
抗利尿ホルモン薬は、尿を濃くして、尿量を減らす薬です。
基本的に、市販のアレルギー性鼻炎や感冒薬などとの相互作用もなく、使いやすい薬です。
ただし、水の再吸収を促進するため、投与前に水分を過剰に摂取すると、体内に水分貯留が起きることがあります(水中毒)。
そのため、夜間の水分制限ができない場合には使用できません。
例えば、夜遅くまでスポーツの練習があって汗をかき、水をたくさん飲んでそのまま寝てしまうようなケースです。
また高熱が出て体がストレスを感じている時も、抗利尿ホルモンの分泌が促進されるため、同薬の投与は控えます。
抗コリン薬は、膀胱機能を安定させて、睡眠中の膀胱容量(尿保持力)を増加させますが、適応症は過活動膀胱などであり、夜尿症は適応外であることに注意が必要です。
三環系抗うつ薬は、3剤の中で一番古くから使われていますが、米国では過剰投与により致死的な不整脈が起こったことから、使用が禁止されました。
日本でも徐々に使用されなくなっていく傾向にあります。
薬物療法をすると、多くの患者は1年ほどで改善がみられます。
ただ、改善したからといって、服薬を一気にやめると再発する恐れがあるため、徐々に用量を減らすようにします。
おねしょとアラーム療法
もう一つの治療法であるアラーム療法は、海外では抗利尿ホルモン薬とともに第一選択とされています。
下着にセンサーを付け、尿が漏れたら音と振動で知らせます。
おねしょをする前に無理矢理起こすのではなく、アラームを鳴らしてできる限り早く覚醒させる、あるいは完全に覚醒させなくても、おねしょを意識させるようにします。
これは睡眠中の膀胱容量を増加させる効果があります。
おねしょは自然治癒することが多く、1年で10〜15%ずつ治癒するといわれています。
ただし治療をすれば、自然治癒と比べて治癒率を2〜3倍に高められることが知られています。
おねしょの心理的影響
夜尿症は、眠りが深過ぎてしまうことがベースにあり、夜間尿量が多い「多尿型」、膀胱の容量が小さい「膀胱型」、両者が混ざり合って起こる「混合型」があります。病型に応じた治療を行うことで、自然に治るのを待つよりも早く治癒が望めます。
夜尿症が子どもの発達に及ぼす影響として「自尊心の低下」などが挙げられます。
夜尿症は5歳児の15%、10歳児の5%にみられます。
15歳では1%に減るが、成人まで持ち越してしまう人も0・5%ぐらいいます。
夜尿症のベースには、眠りが深すぎて、尿意を感じても目覚めない覚醒障害があります。
そこに、夜眠っている間に作られる尿の量と、尿を貯める膀胱の容量とのアンバランスが加わると夜尿症が引き起こされます。
正常な人の場合、夜間は抗利尿ホルモンがたくさん分泌され、尿量は昼間の50~60%に減ります。
一方、昼は膀胱を収縮させている副交感神経の働きが夜には弱まり、膀胱容量は1・5~2倍に増える。排尿で安眠が妨げられないよう体が備えた絶妙な仕組みです。
こうした調節機能が働かないのが夜尿症で、大きく3タイプに分けられます。
まず、抗利尿ホルモンの分泌が夜になっても増えず、多量の尿が作られてしまう「多尿型」。
二つ目は、尿量は少ないのに、夜間も膀胱が小さいままで尿があふれ出てしまう「膀胱型」。
最後が、多尿と膀胱の容量不足が同時に起きる「混合型」で、最も重症のタイプです。
治療は三つのうちのどのタイプかを見極め、それぞれに適した生活指導を行うことが第一歩になります。
多尿型の場合、夕食時以降の水分を制限し、尿の排出を遅らせる塩分やタンパク質は昼間に摂取するよう心掛けます。
膀胱型では、排尿をできるだけ我慢して、膀胱の容量を増やす訓練をします。
1日の排尿回数は?
一般的に成人の一日の排尿回数は、平均で6~7回で、これが 8回を超えると「頻尿」といわれます。
また夜中に2回以上トイレ に起きるようになると「夜間頻尿」と言われます。
男女差があり、男性は1日に5.5回、女性は1日に7.2回だそうです。
尿道の短さや、括約筋の強さなどが関係しているようです。
しかし、おねしょは男児のほうが多いです。これは女児のほうが発達が早いことと関係しています。
過活動膀胱
過活動膀胱は尿意切迫感(急に排尿したくなり、これ以上我慢すると漏らしてしまいそうになること)を有し、通常これに頻尿(1日8回以上排尿すること)および夜間頻尿(睡眠時間中に1回以上排尿に起きること)を伴い、切迫性尿失禁(排尿したくなってすぐに我慢できずに失禁してしまうこと)を伴うこともあれば伴わないこともある状態と言われています。
日本排尿機能学会が行った40歳以上の約4600人を対象とした排尿症状の疫学調査によると、尿意切迫感が週1回以上、かつ、排尿回数が1日8回以上の条件をみたすものを過活動膀胱とすると、40歳以上の日本人における過活動膀胱患者は810万人と推定されている。
過活動膀胱がある人の医療機関への受診率は22.7%にとどまり、性別では男性36.4%、女性7.7%である。
過活動膀胱は尿意切迫感と頻尿とから定義される症状症候群である。
膀胱内圧測定を行えば、60〜70%の例で不随意性膀胱収縮の存在する排尿筋過活動であるといわれている。
下部尿路症状とは、尿をためる、出す、に関係する症状を広く意味する用語で、主に「蓄尿症状」、「排尿症状」、「排尿後症状」の3つに分けられます。
畜尿症状 | 排尿症状 | 排尿後症状 |
---|---|---|
昼間頻尿 夜間頻用 尿意切迫感 尿失禁 膀胱知覚 | 尿勢低下 尿線分裂、尿線散乱 尿線途絶 排尿遅延 腹圧排尿 終末尿滴下 | 残尿感 排尿後尿滴下 |
蓄尿症状とは、頻尿(尿の回数が多い)、夜間頻尿や、急に抑えきれないような強い尿意を感じる尿意切迫感、不随意に尿が漏れる尿失禁などを含みます。
排尿症状とは、尿勢の低下(尿の勢いが弱い)、尿線の途絶(排尿が1回以上途切れる)、排尿遅延(排尿準備ができてから開始までに時間のかかる)などを含みます。
排尿後症状とは残尿感(排尿後に完全に膀胱が空になっていない感じがする)、排尿後尿滴下(排尿直後に不随意的に尿が出てきてしまう)を含みます。
下部尿路症状をおこす疾患で代表的なものに前立腺肥大症、過活動膀胱、脳血管障害や末梢神経障害などの神経の病気、尿道狭窄症などがあります。
膀胱機能の神経支配
部位 | 支配神経 | 受容体 | 機能 |
---|---|---|---|
膀胱体部排尿筋(平滑筋) | 骨盤神経(副交感神経) | ムスカリン性アセチルコリン受容体(M2、M3) | 収縮 |
下腹神経(交感神経) | β3受容体 | 弛緩 | |
内尿道括約筋(平滑筋)、前立腺 | 下腹神経(交感神経) | α1A受容体 | 収縮 |
外尿道括約筋(横紋筋) | 陰部神経(体性神経) | ニコチン性アセチルコリン受容体 | 収縮 |
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