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おねしょは治療すべき?夜尿症の原因と対応法
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約3分48秒で読めます.
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子どものおねしょは病気か、それとも成長の一環か?

「子どものおねしょは成長の途中で自然に治るもの」と考えられがちですが、近年では、放っておかずに治療を行うことで、より早く負担なく改善する道があることがわかってきました。
この記事では、夜尿症(おねしょ)の定義、原因、治療法、心理的影響、そして日常でできる対策まで、最新の知見をもとに詳しく解説していきます。
夜尿症の基本―おねしょは“病気”です
●夜尿症とは?
夜尿症とは、5歳以降で月に1回以上のおねしょが3か月以上続く状態を指します。
発症率と年齢別の割合:
・5歳児:約10〜15%
・10歳児:約5〜7%
・15歳児:約1%
・成人まで持ち越す:約0.5%
●おねしょが「病気」とされる理由
医学的には夜尿症という診断がつく状態であり、実際に厚生労働省の調査でも5〜15歳のうち、約80万人(6.4%)が該当するとされています。
●母親の認識と医療機関受診率
一方で、「そのうち治るもの」「病院に行くまでもない」という認識が根強く、受診率は決して高くありません。しかし、適切な治療を行うことで子ども本人や家族の負担を軽減できる可能性があります。
夜尿症の原因とタイプ分類
夜尿症の根本には、以下の3つのメカニズム異常が関係しています:
●多尿型
夜間の抗利尿ホルモン分泌が少なく、夜間の尿量が増えるタイプ。
●膀胱型
膀胱容量が小さく、少量の尿でも排尿が起こってしまうタイプ。
●混合型
多尿と膀胱容量不足が同時に存在する重症タイプ。
なぜ起きるのか?
・覚醒障害:尿意があっても起きられない(深い眠り)
・神経調節機能の未熟さ
・遺伝的要因も関与(親に夜尿歴がある場合のリスク上昇)
夜尿症の治療方針と選択肢
●生活指導(2〜3割がこれで改善)
・寝る前2〜3時間前までに夕食を済ませる
・寝る前の水分と塩分の制限
・就寝前にトイレを済ませる
・就寝時の冷え対策
・※夜中に無理に起こすのは逆効果
●薬物療法
主に以下の3種類があります。
①抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン)
・尿を濃縮し、夜間の尿量を抑える
・第一選択薬
・水分制限ができない状況では禁忌(水中毒のリスク)
②抗コリン薬
・膀胱容量を増やす
・適応は過活動膀胱であり、夜尿症は適応外
③三環系抗うつ薬
・最も古くから使用されているが、米国では使用禁止
・日本でも使用頻度は減少中
補足:薬をやめる際は徐々に減量しないと再発のリスクがあります。
アラーム療法
・海外では薬物療法と並ぶ第一選択
・下着にセンサーを取り付け、尿漏れを感知するとアラームで通知
・睡眠中の排尿意識を高め、膀胱容量の増加を促す
・約半年〜1年で効果が出るとされる
心理的・社会的影響
●自尊心の低下
繰り返すおねしょは、「恥ずかしい」「自分は普通じゃない」という感情を持たせ、自尊心の発達を妨げる可能性があります。
●学校生活への影響
宿泊行事を嫌がる、他人との比較で自信を失う
●家族への影響
睡眠障害やストレス、しつけと誤解した対応によるトラブル
タイプ別対策の実践
●多尿型の対策
・夜の水分制限
・塩分・タンパク質の摂取は朝〜昼に集中させる
●膀胱型の対策
・排尿を少し我慢させ、膀胱の容量を増やす訓練
・おしっこをするタイミングのコントロール練習
●混合型の対策
・生活指導と薬物療法・アラーム療法の併用
・改善には長期戦が必要なこともある
おわりに:夜尿症は恥ずかしいものではなく、治せる“症状”です
夜尿症は決して「恥ずかしい」「しつけが悪い」などと決めつけるべきものではありません。医学的に明確な病態があり、適切に対応することで多くは改善します。
早期の受診と治療によって、子どもの心の健やかな成長と、家族の安心した日常を取り戻すことができます。悩んでいる場合は、まず医療機関に相談してみることをおすすめします。