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咳でお腹が痛くなる?
公開. 更新. 投稿者:喘息/COPD/喫煙.この記事は約3分51秒で読めます.
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咳と腹痛の関係

「咳が止まらない。しかもお腹まで痛い――」そんな経験はありませんか?
咳と腹痛。一見無関係に思えるこの2つの症状が、実は密接に関係していることをご存じでしょうか。
咳によって生じる腹痛のメカニズム、体力消耗との関係、高齢者への影響などを解説しながら、適切な対処法について勉強します。
咳のメカニズムとは?
●咳嗽とは?
咳嗽(がいそう)とは、肺や気道に入った異物を排除するための生理的な反射であり、喉頭や呼吸筋、横隔膜の協調によって発生する「強制呼気運動」です。
咳は単なる症状のひとつではなく、身体を守るための防御反応でもあります。
●咳に関与する筋肉
・横隔膜
・腹直筋、腹斜筋などの腹筋群
・肋間筋(肋骨周囲の筋肉)
これらの筋肉は咳のたびに収縮を繰り返します。つまり、激しい咳は筋トレに近い状態を生み出すのです。
咳と腹痛のつながり
●咳が原因で筋肉痛になる理由
風邪や気管支炎などで咳が続くと、普段は使わない腹筋群が繰り返し強い力で動かされます。その結果、
・腹筋の筋肉痛
・肋間筋の筋肉痛
・胸部・腹部の重だるさ
といった症状が現れることがあります。
これは、スポーツの後に起こる筋肉痛と同じメカニズムです。
●咳による「体力の消耗」
1回の咳で約2kcalのエネルギーを消費するともいわれています。
・1時間に30回の咳 → 60kcal
・1日中咳が続く → 数百kcalに達する可能性
そのため、咳が長く続くと風邪による微熱以上に体力を奪われることもあります。
咳による痛みの種類と見分け方
●腹痛の種類
腹痛と聞くと、まず以下のような消化器由来の痛みを連想する方が多いでしょう。
・便秘・下痢
・胃腸炎
・胆石や虫垂炎などの急性腹症
しかし、咳によって生じる腹痛は、
・筋肉痛(筋繊維の損傷)
・神経性の痛み(肋間神経への刺激)
といった「運動由来」の痛みである点が大きな違いです。
見分けるポイント
項目 | 咳による腹痛 | 消化器由来の腹痛 |
---|---|---|
痛みの場所 | おへそ周りや肋骨下部 | みぞおち、下腹部など多様 |
痛みのきっかけ | 咳をした時にズキッと痛む | 食後、空腹時、排便時など |
その他の症状 | 筋肉痛に近い感覚 | 吐き気、下痢、発熱などを伴う |
高齢者は要注意―咳による肋骨骨折
高齢者では、咳の衝撃により骨折が起きることがあります。特に骨粗鬆症を抱える高齢女性では、強い咳によって肋骨が折れる例も報告されています。
咳骨折のサイン
・咳をするたびに胸が刺すように痛む
・深呼吸や寝返りでも痛む
・レントゲンで骨折が確認される
このような場合、咳止め薬の使用が推奨されるケースもあります。
咳と体力消耗の科学的側面
咳は身体にとってかなりエネルギーを要する行為です。
・呼吸筋群の動員(特に横隔膜と腹筋)
・1回2kcal × 数百回 → 体力消耗
・筋損傷 → 修復にエネルギーが必要
そのため、咳が長期にわたる場合、食欲低下・睡眠障害と相まって、体力が著しく低下する可能性があります。
対策としての栄養管理
・高タンパク質・高エネルギー食を意識
・水分と電解質の補給
・ビタミンCや亜鉛など免疫強化栄養素の摂取
対処法と医療機関を受診すべきタイミング
●自宅でできる対処
・咳止め薬(市販薬や処方薬)の適切な使用
・加湿器やマスクで喉の乾燥予防
・なるべく安静にして腹筋への負担を減らす
●受診を検討すべき症状
・咳が1週間以上続く
・発熱や痰がからむ
・咳をすると肋骨周囲が激しく痛む
・呼吸が苦しい
これらが見られる場合は、感染症や肋骨骨折、気管支炎・肺炎などの可能性があるため、医療機関の受診をおすすめします。
おわりに:咳は「全身運動」である
咳は単なる喉の反応ではなく、全身の筋肉を使う「激しい運動」にもなり得ます。特に長引く咳には、腹痛や体力消耗、場合によっては骨折のリスクすらあるのです。
したがって、咳を軽視せず、その影響を正しく理解し、必要に応じて適切な対策を講じることが大切です。
「咳がつらい。しかもお腹が痛い…」そんなときは、自分の体からのSOSかもしれません。