2025年7月9日更新.2,511記事.

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セレスタミンは抗アレルギー薬?

セレスタミンは抗アレルギー薬?

花粉症やアレルギー性鼻炎の時期になると、よく処方される薬のひとつに「セレスタミン」があります。一見すると“抗アレルギー薬”として使われているように思われがちですが、実はその中身は、ステロイド薬(ベタメタゾン)と第一世代抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミンマレイン酸塩)の合剤です。

つまり、「抗アレルギー薬のような顔をしたステロイド薬」といえる存在なのです。

セレスタミンとは?配合されている薬の正体

セレスタミン配合錠は、以下の2成分を含みます。

・ベタメタゾン(ステロイド):抗炎症・免疫抑制作用を持ち、アレルギー反応を抑える。
・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(第一世代抗ヒスタミン薬):ヒスタミンH1受容体を遮断して、くしゃみ・鼻水・かゆみなどのアレルギー症状を抑える。

この組み合わせにより、強力な抗アレルギー作用が得られます。花粉症や蕁麻疹などに対して即効性があるため、つらい症状に対する「頓服薬」として処方されることが多いです。

頓服薬としてのセレスタミン

セレスタミンは、毎日服用するタイプの抗アレルギー薬とは異なり、症状が悪化したときに追加で使用する「頓服薬」として使われるケースが多いです。

特に花粉症のピーク時、こんな使われ方をします。

「普段はアレグラを飲んでいますが、今日はくしゃみが止まらなくて……」
「ひどいとき用にセレスタミンを出しておきますね。症状が強いときにだけ飲んでください」

このように抗アレルギー薬に「追加で処方される」ことが多いのです。

実際、花粉症治療ガイドラインでも、症状が強い時期に短期間ステロイドを併用することが選択肢として挙げられています。セレスタミンはそのような「臨時対応」に適しているわけです。

ステロイドに準じた注意が必要

セレスタミンに含まれるベタメタゾンは、プレドニン(プレドニゾロン)に匹敵、あるいはそれ以上の強力な作用を持つステロイドです。

このため、以下のような副作用やリスクが懸念されます。

◆ 主な副作用リスク
・副腎皮質機能抑制(長期使用時)
・感染症の悪化(免疫抑制作用)
・血糖上昇、高血圧、浮腫
・胃腸障害(胃潰瘍・吐き気)
・精神症状(不眠・イライラ・抑うつ)

◆ 使用上の注意
・頓服としての短期使用が原則
・長期間・連用は避けるべき
・糖尿病や胃潰瘍の既往がある人には慎重投与

つまり、セレスタミンは「ステロイド薬としての慎重さ」が必要であり、「ただのアレルギー薬」として捉えるのは非常に危険なのです。

「眠気」にも要注意 ―第一世代抗ヒスタミン薬の影響

セレスタミンに含まれる「d-クロルフェニラミン」は、第一世代抗ヒスタミン薬です。現在主流となっている第二世代抗ヒスタミン薬(ザイザル、アレグラ、クラリチン等)に比べると、眠気や口渇といった副作用が非常に強い傾向があります。

◆ 眠気の注意点
・運転・高所作業・機械操作は避ける
・服用後のパフォーマンス低下に注意
?高齢者ではふらつきや転倒のリスクも

そのため、頓服であっても「仕事の合間に使う」などの使い方は推奨されません。
夜間や休息前の服用が基本となります。

なぜ未だに使われているのか?

「眠気が強くて、ステロイドも入っているなら、なぜセレスタミンなんて今でも使われるの?」と思う方もいるでしょう。

答えはシンプルで、
・効果が早く、しっかり出る
・コストが安く、保険適応の中で収まる
・古くからあり、医師も使い慣れている

特に「明日プレゼンがあるのにくしゃみが止まらない」「眠れないほどかゆい」といった緊急性のあるケースで、一時的に症状を強力に抑える手段として、セレスタミンは重宝されています。

実は薬局泣かせ? ―500錠包装の落とし穴

ここまで「患者にとって」の話をしてきましたが、薬局にとってのセレスタミンにはまた別の苦労があります。

◆ PTP包装が500錠単位
セレスタミンのPTP包装(シート)は500錠入りのみ。これは非常に大きな単位です。

◆ 使用頻度は少なく在庫が滞留
・多くても「1患者1処方で5〜10錠」
・花粉症シーズンのみの使用
・処方医が限定的で、地域差も大きい

そのため、薬局ではデッドストック化するケースが多く、在庫管理に頭を抱える薬の一つとなっています。

セレスタミンの正しい使い方まとめ(薬剤師的アドバイス)
・使用目的:通常の抗アレルギー薬で抑えきれない一時的な症状の緩和
・使用方法:頓服。毎日は飲まない
・使用期間:原則1日〜数日間の短期使用。長期はNG
・副作用:眠気、胃腸障害、免疫低下、ステロイドによる影響
・使用時の注意:運転・機械操作は避ける。妊娠中・糖尿病・胃潰瘍持ちの方は必ず医師と相談

結論:「抗アレルギー薬」というより「ステロイド系の緊急用薬」

セレスタミンは確かにアレルギー症状に効く薬です。しかし、それは“通常の抗アレルギー薬”とはまったく性質が異なるという点に注意が必要です。

・ステロイドとしての影響力
・第一世代抗ヒスタミン薬による強い眠気
・使用は「非常時限定」
・在庫管理も難しい薬局泣かせの薬

これらの特性をふまえると、セレスタミンを「万能なアレルギー薬」と誤認することはリスクが高いと言えるでしょう。

薬剤師からの一言アドバイス:
セレスタミンは“花粉症の最終兵器”。だけど、使うときは“覚悟”も必要です。

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