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薬物乱用頭痛には何を使えばいい?
公開. 更新. 投稿者:頭痛/片頭痛.この記事は約3分58秒で読めます.
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頭痛薬の使いすぎが頭痛の原因に?

慢性的に頭痛が続く人が、「薬が手放せない」と言いながら、
市販の鎮痛薬や処方された頭痛薬を頻繁に服用していませんか?
そのような人の中には、薬そのものが頭痛を悪化させているケースがあります。
それが「薬物乱用頭痛(Medication Overuse Headache:MOH)」です。
薬物乱用頭痛(MOH)とは?
薬物乱用頭痛とは、頭痛の治療薬を月10日以上(薬剤によっては15日以上)服用し続けることで、
かえって頭痛が悪化してしまう慢性頭痛の一種です。
このくらい使っている人は多いのではないでしょうか。「乱用」といっても常用レベルで起こります。
MOHの定義(国際頭痛分類より)
・原因となる頭痛(片頭痛や緊張型頭痛など)がある
・急性期治療薬の使用が月に10〜15日以上、3か月以上継続されている
・頭痛が1か月に15日以上あり、薬剤の使用中止により改善がみられる
〇典型的な悪循環
・頭痛が頻繁に起こる
・鎮痛薬をよく使う
・鎮痛薬の効果が弱くなる
・使用量・回数が増える
・頭痛がさらにひどくなる(慢性化)
・薬が原因の頭痛(MOH)に
MOHの治療原則:まず“薬”をやめる
〇治療の3原則
・原因薬剤の中止
・反跳頭痛(離脱頭痛)への対応
・予防薬の導入
〇原因薬の中止:即時中止が基本
原因薬の中止には「漸減」と「即時中止」の方法がありますが、
近年は即時中止の方が再発率が低いという報告もあります。
〇中止の際の説明ポイント
・現在の頭痛は薬の影響で悪化していること
・月10日以上の服薬が原因であること
・改善のためには服薬中止が不可欠であること
患者の理解と納得が不可欠です。医師と患者の信頼関係が治療成功の鍵を握ります。
〇中止後に起こる“反跳頭痛”への対応
薬物中止直後には、一時的に頭痛が悪化(反跳頭痛)することがあります。
この期間は通常2〜10日間程度で、トリプタン由来のMOHでは比較的早く改善する傾向が見られます。
この時期には:
・安静と十分な睡眠
・ストレス回避
・一時的なレスキュー薬(医師管理下での使用)
・水分・栄養の補給
などが対処法として用いられます。
再発を防ぐための「予防薬」とは?
薬物乱用頭痛の予防として使われる薬には以下のような薬があります。
薬剤名 | 主な作用機序・特徴 |
---|---|
バルプロ酸(デパケン) | GABA作用・抗てんかん薬、片頭痛予防エビデンス高い |
プロプラノロール(インデラル) | β遮断薬、緊張型・片頭痛どちらにも効果 |
アミトリプチリン(トリプタノール) | 三環系抗うつ薬、頭痛・不眠・抑うつにも有効 |
トピラマート(トピナ) | 抗てんかん薬、体重減少あり |
ロメリジン(ミグシス、テラナス) | Caチャネル遮断薬、耐容性良好 |
薬物乱用頭痛患者は、連日性の痛みによる抑うつ傾向を伴うことが少なくありません。
特に片頭痛とうつ病は高頻度で合併するとされており、下記のような抗うつ薬が併用されることもあります:
・三環系抗うつ薬(アミトリプチリン等):効果は高いが副作用も
・SSRI・SNRI:効果のエビデンスは乏しいが、忍容性が高く併用されやすい
→ SNRI(デュロキセチンなど)は神経障害性疼痛にも有効
MOH予防のカギは「教育」と「制限」
〇服薬日数の記録と管理
患者が頭痛日記をつけることで、薬の使用回数を可視化し、
10回以上の月はMOH発症リスクが高いと自覚することができます。
〇市販薬でもMOHは起こる
「市販薬だから大丈夫」と思いがちですが、
週2〜3回の服用でも半年程度でMOHに至る可能性があります。
複合鎮痛薬やカフェイン含有薬は要注意です。
〇他科・他院からの処方にも注意
月経痛など頭痛以外の目的で処方された鎮痛薬もカウント対象
他院からの重複処方や過去の服薬歴の聴取が重要
頭痛の中には、鎮痛薬だけでなく健康食品や他の薬が関与するものもあります。
・ビタミンE製剤(ニコチネート含有):血管拡張による頭痛
・シロスタゾール(抗血小板薬):脳血管拡張により頭痛が生じることも
MOHは「よかれと思った薬」が引き起こす頭痛
薬物乱用頭痛は、「薬を飲むこと」が頭痛を長引かせてしまうという
皮肉な悪循環から始まります。
・適切に中止すれば7割の患者は改善
・予防薬とストレス対処で再発も抑えられる
・医療者・患者の協働でコントロール可能
薬を「効かせる」ためには、「使わない日を作る」ことが必要です。
頭痛と上手に付き合うために、月10回以内の服薬ルールを守るよう、
日頃から意識していきましょう。