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排尿に影響を及ぼす薬剤
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約2分28秒で読めます.
6,133 ビュー. カテゴリ:薬剤性排尿障害
服用薬が患者の日常生活のQOLに影響を及ぼしていないか、考えるときに、食事に対する影響、睡眠に対する影響、食事に対する影響、排泄(排便・排尿)に対する影響などを考えます。
その中で薬が及ぼす「排尿」に対する影響について考えてみる。
前立腺肥大症に対する抗コリン薬の投与などの禁忌事例については注意深くみているが、薬の副作用による排尿障害が患者のQOLに及ぼしている悪影響については、高齢患者については薬が原因なのか年齢的なものなのか判断がしづらいため「医師にご相談を」と丸投げしがちである。
患者に対する情報提供についても、ノンコンプライアンスに陥る可能性を考えるとやすやすとは言いづらいこともあります。が、しかし思考を止めることをしてはならない。
排尿障害や尿失禁の原因となる薬剤は多い。主なものは以下のとおり。
- 三環系抗うつ薬
- 過活動膀胱(OAB)治療薬(ムスカリン受容体拮抗薬)
- 腸管鎮痙薬(アトロピン硫酸塩、ブチルスコポラミン臭化物)
- 抗ヒスタミン薬(H2受容体拮抗薬含む)
- 睡眠薬、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬)
- 抗精神病薬(フェノチアジン系薬)
- トリヘキフェニジル塩酸塩
- α遮断薬
- 利尿薬
薬剤性の排出障害は、①α受容体刺激作用、②β受容体刺激作用、③ムスカリン受容体遮断(抗コリン)作用、④中枢性の排尿反射抑制作用などにより生じ得る。
例えば、パーキンソン病治療薬のビペリデン塩酸塩(アキネトン)、トリヘキシフェニジル塩酸塩(アーテン)は、膀胱に存在するムスカリン受容体(主にM3受容体)を遮断することにより膀胱平滑筋の収縮を抑制する。
また、レボドパ(ドパストン、ドパゾール)、ペルゴリドメシル酸塩(ペルマックス)は、脳の線条体にあるD1/D2受容体を刺激する。
クレンブテロールヤテオフィリン(テオドール)などの気管支拡張薬は、膀胱平滑筋に直接作用し、モルヒネはμオピオイド受容体を介して排尿反射を抑制する。
そのほか、イミプラミン塩酸塩(イミドール、トフラニール)や、アミトリプチリン塩酸塩(トリプタノール)などの三環系抗うつ薬は、抗コリン作用のほか、末梢でのカテコールアミン作用の増強、カルシウム拮抗作用による膀胱平滑筋弛緩作用などにより、排出障害を引き起こす。
ドネペジルのように頻尿や尿意切迫などの畜尿障害を引き起こすものもある。ドネペジルはコリン作動性作用が膀胱平滑筋の収縮、尿道括約筋などの弛緩を促し、排尿を促進すると考えられている。
トラニラスト(リザベン)、ケトチフェンフマル酸塩(ザジテン)は、まれではあるが、薬剤性膀胱炎を来し、頻尿症状が表れることがあるため注意したい。
抗コリン作用については、薬剤ごとの評価ではなく、服用薬剤の「総抗コリン負荷」が重要である。それぞれの薬剤の抗コリン作用は弱くても、併用することで総抗コリン負荷が強くなる。その結果、尿閉を来す可能性はある。例えば、患者が抗うつ薬、OAB治療薬、抗ヒスタミン薬、抗不安薬など、抗コリン作用を有する薬剤を4~5剤服用しているケースは少なくない。
医師も、別の診療科から処方されている薬の抗コリン作用についてはあまり気にしていないこともある。患者に対する副作用に関する情報提供を行う場合には、特定の薬剤を原因薬剤の可能性として指摘するのではなく、年齢的なものもあるとした上で、複数の薬剤の相乗的な作用によって副作用を生じる可能性があるということを伝えるといいだろう。
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