2025年7月9日更新.2,512記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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早寝早起きがつらいのはなぜか?体内時計の仕組みと整え方

体内時計の仕組み

「早起きは三文の徳」と昔から言われますが、実はこれには科学的な裏付けがあることをご存じでしょうか?
私たちの体には「体内時計(サーカディアンリズム)」という概念があり、24時間周期の地球のリズムに合わせて、体のあらゆる機能が調整されています。

しかし、現代人は夜遅くまでスマホやパソコンに触れ、人工照明のもとで生活しています。こうした生活習慣が体内時計を狂わせ、健康や幸福感に悪影響を及ぼしているのです。

体内時計の基本:本来は25時間のリズム

人間の体内時計は、自然状態では「約25時間」の周期を持っていると言われています。
これは、外界からの刺激を遮断して生活したときの実験などで明らかになっており、人間は放っておくと毎日1時間ずつズレていく構造になっているのです。

なぜ24時間で生活できているのか?

毎日このズレを修正している要因の一つが「光」です。特に朝の光は、体内時計をリセットする最も強力な刺激となります。
朝起きて太陽の光を浴びることで、体は「今が朝だ」と認識し、24時間に同調した生活リズムを維持しているのです。

早寝がつらい理由:体内時計は夜型寄りだから

「早寝早起きは苦手」という人が多いのは、体内時計が24時間よりもやや長いためです。
夜更かしは自然にできても、早く寝ようとしても眠れないのは、体がまだ「寝る時間じゃない」と感じているからです。

たとえば、普段12時ごろに寝ている人が、「明日は早いから今日は10時に寝よう」と思って布団に入っても、すぐには眠れません。
これは、体内時計が「まだ起きている時間だ」と判断しているからです。

特に、通常の就寝時間の2~3時間前がもっとも眠りにくいタイミングとされており、例えば普段12時に寝ている人が10時に布団に入ってもなかなか寝付けません。

体内時計をリセットする“鍵”は朝の光にある

ではどうすれば、早寝早起きのリズムに整えられるのでしょうか?
答えは「朝の光」にあります。

私たちの体内時計は、日々の光の刺激によって24時間に調整されています。
特に朝の光は強力な「リセットスイッチ」。太陽の光を浴びることで、体は「今が朝だ」と認識し、そこから約14~16時間後に眠気がやってきます。

例:朝7時に光を浴びる → 夜10〜11時ごろ自然な眠気がくる

起きる時間が先、寝る時間はその後に決まる

「寝る時間を早めれば、翌朝も早く起きられる」と思いがちですが、実は逆です。
起床時間を先に決めることが、早寝の第一歩なのです。

睡眠のメカニズムでは、「起きてから一定時間が経つと眠くなる」ようになっているため、起きる時間を早めれば、自然と眠くなる時間も早まります。

体内時計が担う驚くべき役割

体内時計は、単に「眠くなる時間」や「起きる時間」だけを調整しているのではありません。体内のホルモン分泌、代謝、免疫、血圧、体温など、生命活動のほとんどに関わっています。

ホルモン分泌の時間帯
・成長ホルモン:深夜に分泌され、日中の活動で傷ついた組織を修復
・コルチゾール・アルドステロン:朝に分泌が増加し、覚醒と活動を促す
・血小板凝集能:朝に高まり、日中のケガに備える
・血液線溶能:夕方に高まり、睡眠中の血栓リスクを低下させる

こうしたホルモンの分泌タイミングは、すべて体内時計に従っています。

若者は夜型、高齢者は朝型になりやすい?

年齢とともに体内時計の性質も変化します。

・若者の多くは夜型(朝が弱い)
・高齢者の多くは朝型(自然に早起き)

この変化には、メラトニンやコルチゾールの分泌リズムの加齢変化が関係していると考えられています。
年齢を重ねることで、より朝方の生活が自然にフィットするようになるのです。

体内時計を整える具体的な方法

●朝の光を浴びる
最も大切なのが「朝日を浴びること」です。
起床後に太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされ、約14~16時間後に自然な眠気が訪れるようになります。

例:
朝7時に起きて光を浴びれば、夜10~11時頃に自然に眠くなる。

起床時間を一定にする
眠くなる時間は起きる時間に依存しているため、就寝時間が多少ずれても「起床時間は一定に保つ」ことが重要です。
休日に寝だめをしようとすると、体内時計が乱れ、月曜日がつらくなります(いわゆる「社会的時差=ソーシャルジェットラグ」)。

寝室環境を整える
・カーテンを少し開けて寝る(朝日で自然に目覚める)
・夜はスマホのブルーライトを避け、間接照明でリラックス
・寝る前にカフェインやアルコールを控える

まとめ:早寝早起きは「習慣と仕組み」で克服できる

「早寝早起きがつらい」のは、あなたのせいではありません。
人間の体内時計が、自然にズレやすく設計されているからです。

でも、朝に光を浴びて、同じ時間に起きることを続ければ、体は必ずリズムを取り戻します。

まずは「朝7時に起きて光を浴びる」ことから始めてみませんか?
体内時計が整えば、早寝も自然とできるようになります。あなたの生活が、もっと気持ちよく、健やかになるはずです。

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