2025年7月10日更新.2,514記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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薬剤師過剰時代は本当に来るのか?現状と未来

薬剤師過剰時代の到来

「薬局はコンビニより多い」「薬剤師は過剰になる」。こうしたフレーズは10年以上前から繰り返されてきましたが、2025年現在、薬剤師の需給バランスはどうなっているのでしょうか?

薬局・薬剤師数の推移と現状

まず、日本における薬局や薬剤師の数は以下のように推移してきました:

年度薬局数薬剤師数
2005年約51,000軒約230,000人
2023年約60,000軒約320,000人以上

コンビニの店舗数(約56,000軒)を上回り、薬局はまさに“飽和状態”とも言われています。

「薬剤師過剰」と言われる理由

◉ 薬学部の急増
2000年代後半からの薬学部新設ラッシュにより、薬剤師国家試験の合格者数は一時1.4万人規模にまで拡大しました。

◉ 登録販売者制度の導入
ドラッグストアでOTC薬を販売できる「登録販売者」が2009年から導入されたことで、OTC分野での薬剤師の需要が減少しました。

◉ 一人薬剤師薬局の増加
1店舗に1人の薬剤師しかいない「個人薬局」が多数存在し、効率の悪い経営や医療資源の分散も問題視されています。

◉ 医薬分業の頭打ち
医薬分業率は一時70%を超えましたが、近年はほぼ頭打ちとなり、新たな処方箋増加は見込みにくい状況です。

現在の需給ギャップと地域格差

厚生労働省の需給予測(2045年まで)によると、

・供給:最大で年間9,000人規模の薬剤師が新たに加わり続けた場合、2045年には約45万人に達する
・需要:高齢化等を考慮しても、33〜40万人程度が上限とされる

したがって、最大で12万人超の薬剤師が過剰となる可能性があるとされています。

ただし、これはあくまで全国平均。実際には、

・都市部では供給過剰、求人倍率は2.0倍以下(2024年)
・地方や僻地では未だ薬剤師不足

と、地域間格差が大きな課題となっています。

国家試験合格者数の推移と少子化の影響

近年、薬剤師国家試験の合格者数は若干の減少傾向を見せています:

年度受験者数合格者数合格率
2015年約15,000人約11,500人約77%
2024年約13,300人約9,200人約69%(新卒約85%)

背景には、薬学部の定員割れや、少子化による志願者数の減少があります。今後、年9,000人ペースの純増は維持困難になる可能性が高いです。

今後の薬剤師需要拡大の鍵

「薬剤師は過剰」と言われる一方で、新たな需要創出が模索されています。

◉ 在宅医療
・薬剤師による残薬管理や服薬支援により、医療費削減効果が期待される
・高齢化が進む中で、在宅医療対応薬局のニーズは拡大中

◉ 病棟薬剤師の拡充
・急性期病院では病棟常駐型の薬剤師が求められており、10床に1人の配置が理想
・チーム医療に参画できる臨床能力が求められる

◉ OTC薬における役割拡大
・登録販売者では対応できない高度なカウンセリングに期待
・第1類医薬品の拡大と説明義務強化で、差別化可能

◉ 健康サポート薬局、地域連携薬局
・法制度に基づく認定薬局の取り組みが本格化
・セルフメディケーションや予防医療への貢献も

薬剤師の未来:どう生き残るか?

薬剤師として今後生き残るためには、「資格を持っているだけ」では通用しません。

◉ スキルの差別化が必要
・在宅療養支援
・服薬指導力(多職種連携)
・健康相談・予防医療対応
・臨床薬理・薬物動態への理解

◉ 経営構造の見直し
・「1人薬剤師」型の個人薬局は経営的に厳しい
・規模・機能強化された薬局への再編、M&Aが進む可能性大

◉ ドラッグストアとの統合モデル
・OTC、処方せん、在宅のすべてを担う薬局が標準に
・薬剤師の「総合型スキル」が問われる時代へ

結論:薬剤師は過剰か?

薬剤師数は確かに増加しており、「量」だけ見れば過剰時代に突入しつつあります。しかし、地域格差、在宅やチーム医療、予防医療の拡大など、「質の高い薬剤師」への需要はむしろ拡大しています。

要点まとめ:
・都市部では薬剤師は「やや過剰」だが、地方では不足も
・少子化・合格率低下により、供給はやや下振れ傾向
・在宅・病棟・健康支援薬局など「新たな需要」は確実に存在
・生き残るには、専門性と柔軟性がカギ

薬剤師が「数」ではなく「機能」で評価される時代。時代の変化を恐れず、適応と挑戦を続けられるかどうかが、真の意味での“薬剤師の価値”を左右していくでしょう。

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