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薬剤師過剰時代は本当に来るのか?現状と未来
公開. 更新. 投稿者:薬局業務/薬事関連法規.この記事は約3分4秒で読めます.
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薬剤師過剰時代の到来

「薬局はコンビニより多い」「薬剤師は過剰になる」。こうしたフレーズは10年以上前から繰り返されてきましたが、2025年現在、薬剤師の需給バランスはどうなっているのでしょうか?
薬局・薬剤師数の推移と現状
まず、日本における薬局や薬剤師の数は以下のように推移してきました:
年度 | 薬局数 | 薬剤師数 |
---|---|---|
2005年 | 約51,000軒 | 約230,000人 |
2023年 | 約60,000軒 | 約320,000人以上 |
コンビニの店舗数(約56,000軒)を上回り、薬局はまさに“飽和状態”とも言われています。
「薬剤師過剰」と言われる理由
◉ 薬学部の急増
2000年代後半からの薬学部新設ラッシュにより、薬剤師国家試験の合格者数は一時1.4万人規模にまで拡大しました。
◉ 登録販売者制度の導入
ドラッグストアでOTC薬を販売できる「登録販売者」が2009年から導入されたことで、OTC分野での薬剤師の需要が減少しました。
◉ 一人薬剤師薬局の増加
1店舗に1人の薬剤師しかいない「個人薬局」が多数存在し、効率の悪い経営や医療資源の分散も問題視されています。
◉ 医薬分業の頭打ち
医薬分業率は一時70%を超えましたが、近年はほぼ頭打ちとなり、新たな処方箋増加は見込みにくい状況です。
現在の需給ギャップと地域格差
厚生労働省の需給予測(2045年まで)によると、
・供給:最大で年間9,000人規模の薬剤師が新たに加わり続けた場合、2045年には約45万人に達する
・需要:高齢化等を考慮しても、33〜40万人程度が上限とされる
したがって、最大で12万人超の薬剤師が過剰となる可能性があるとされています。
ただし、これはあくまで全国平均。実際には、
・都市部では供給過剰、求人倍率は2.0倍以下(2024年)
・地方や僻地では未だ薬剤師不足
と、地域間格差が大きな課題となっています。
国家試験合格者数の推移と少子化の影響
近年、薬剤師国家試験の合格者数は若干の減少傾向を見せています:
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2015年 | 約15,000人 | 約11,500人 | 約77% |
2024年 | 約13,300人 | 約9,200人 | 約69%(新卒約85%) |
背景には、薬学部の定員割れや、少子化による志願者数の減少があります。今後、年9,000人ペースの純増は維持困難になる可能性が高いです。
今後の薬剤師需要拡大の鍵
「薬剤師は過剰」と言われる一方で、新たな需要創出が模索されています。
◉ 在宅医療
・薬剤師による残薬管理や服薬支援により、医療費削減効果が期待される
・高齢化が進む中で、在宅医療対応薬局のニーズは拡大中
◉ 病棟薬剤師の拡充
・急性期病院では病棟常駐型の薬剤師が求められており、10床に1人の配置が理想
・チーム医療に参画できる臨床能力が求められる
◉ OTC薬における役割拡大
・登録販売者では対応できない高度なカウンセリングに期待
・第1類医薬品の拡大と説明義務強化で、差別化可能
◉ 健康サポート薬局、地域連携薬局
・法制度に基づく認定薬局の取り組みが本格化
・セルフメディケーションや予防医療への貢献も
薬剤師の未来:どう生き残るか?
薬剤師として今後生き残るためには、「資格を持っているだけ」では通用しません。
◉ スキルの差別化が必要
・在宅療養支援
・服薬指導力(多職種連携)
・健康相談・予防医療対応
・臨床薬理・薬物動態への理解
◉ 経営構造の見直し
・「1人薬剤師」型の個人薬局は経営的に厳しい
・規模・機能強化された薬局への再編、M&Aが進む可能性大
◉ ドラッグストアとの統合モデル
・OTC、処方せん、在宅のすべてを担う薬局が標準に
・薬剤師の「総合型スキル」が問われる時代へ
結論:薬剤師は過剰か?
薬剤師数は確かに増加しており、「量」だけ見れば過剰時代に突入しつつあります。しかし、地域格差、在宅やチーム医療、予防医療の拡大など、「質の高い薬剤師」への需要はむしろ拡大しています。
要点まとめ:
・都市部では薬剤師は「やや過剰」だが、地方では不足も
・少子化・合格率低下により、供給はやや下振れ傾向
・在宅・病棟・健康支援薬局など「新たな需要」は確実に存在
・生き残るには、専門性と柔軟性がカギ
薬剤師が「数」ではなく「機能」で評価される時代。時代の変化を恐れず、適応と挑戦を続けられるかどうかが、真の意味での“薬剤師の価値”を左右していくでしょう。