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抗凝固薬と抗血小板薬の併用は無意味?
公開. 更新. 投稿者:脳梗塞/血栓.この記事は約4分6秒で読めます.
5,428 ビュー. カテゴリ:抗血小板療法と抗凝固療法の併用
抗凝固療法に抗血小板療法を併用すると、さらに脳卒中の再発予防効果があるというエビデンスはなく、出血性合併症の危険が高まるため、一般には行われていません。
ただし、ワルファリンできちんと治療をしているのに血栓・塞栓症を再発した場合やステント治療を受けた心房細胞患者さんに対しては、抗血小板薬と抗凝固薬の併用を考慮します。
一方、心房細動の方がアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞を起こした場合には、アスピリンなどの抗血小板薬を併用しなくても、ワルファリン療法だけで十分に再発を予防できるというエビデンスがあります。
抗凝固薬
抗凝固薬とは、血液凝固過程の最終段階であるフィブリン形成を抑えて血液凝固を防ぐ薬。
そのプロセスには血液凝固因子が複雑に絡み合っているが、経口の抗凝固薬のターゲットは大きく2つに分かれる。
1つは、肝臓における凝固因子の生合成を阻害すること。
ワーファリンは、酸化型のビタミンKが還元型に変換される過程を阻害し、合成に還元型のビタミンKを必要とするビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑えて、その後の凝固過程が進まないようにする。
もう1つは、個々の凝固因子の作用を直接阻害するというものだ。
経口薬では、フィブリノゲンをフィブリンに変えるトロンビン(活性化第Ⅱ因子)の阻害薬、すなわち抗トロンビン薬と、プロトロンビン(第Ⅱ因子)を活性化してトロンビンにする活性化第Ⅹ因子(第Ⅹa因子)の阻害薬、すなわち抗Ⅹa薬の2つが実用化されている。
抗凝血薬(ワルファリンK、ヘパリン)
心房や心室に血液がうっ滞するとフィブリン活性が上昇しやすい→心臓や下腿静脈などに塞栓源が存在する場合、抗凝血薬。
・フィブリンなどの血液凝固因子の働きを抑え、フィブリン血栓(二次血栓)の形成を抑制する
・主に血栓の停滞によって生じる血栓が原因で起こる血栓症や塞栓症(静脈血栓塞栓症、心原性脳塞栓症など)の治療・予防に用いる
アスピリン
アスピリンは、血小板のアラキドン酸からトロンボキサンA2に至る反応をつかさどる酵素の一つである、シクロオキシゲナーゼ1を阻害し、TXA2の産生を抑制する。
TXA2は強力な血小板活性化物質の一つだ。
アスピリンのCOX1阻害作用は不可逆的であるため、いったん血小板がアスピリンによってCOX1活性を失うと、血小板の寿命である7~10日間の期間中、機能が阻害されたままになる。
COX1阻害作用は低用量のアスピリンでも十分発揮されるので、高用量を投与する必要はない。
アスピリンはシクロオキシゲナーゼの抑制によるトロンボキサンA2の産生抑制を通じて血小板の粘着・凝集能を阻害する作用をもち、血栓症の予防に用いられる。
アスピリンは消化性潰瘍には投与禁忌であるがミソプロストール(サイトテック)との併用で慎重投与となる。
手術等を受ける場合、アスピリンは7日前から中止もしくは慎重投与、チクロピジンは10~14日前から中止。
プラビックス、パナルジン、プレタール
プラビックス、パナルジン、プレタールはいずれも、細胞内の重要なセカンドメッセンジャーであるcAMP濃度を上昇させて、血小板の活性化を抑制する薬と言っていい。
cAMP濃度が減少すると、血小板内の遊離Ca2+イオンが増え、血小板活性化物質の放出といった、血小板凝集につながる反応が進んでしまう。
プラビックスは、肝臓で活性代謝物に変換されるプロドラッグだ。
活性代謝物は、血小板膜上のアデノシン二リン酸(ADP)受容体のサブタイプP2Y12に不可逆的に結合し、アデニレートシクラーゼの働きによってcAMP濃度を上昇させ、血小板活性化につながる反応をブロックする。
プラビックスには、血小板の凝集に重要な働きをする血小板膜糖蛋白(GPⅡb/Ⅲa)の活性化を阻害する作用もあることが分かっている。
パナルジンの作用メカニズムもプラビックスと同じ。
活性代謝物がADP受容体P2Y12を阻害して血小板の活性化を抑制する。
これら2剤はチエノピリジン系薬と総称される。
プレタールは、cAMPを分解するホスホジエステラーゼ3(PDE3)の活性を阻害することで、cAMP濃度を上昇させる薬だ。
プレタールは、血管に対する作用も知られている。
血管平滑筋細胞のPDE3活性を阻害して、血管拡張作用や平滑筋細胞の増殖抑制作用を示す。
血管内膜の保護作用なども報告されている。
狭心症と抗血小板薬
ACSはプラークが破綻し血栓が形成されて発症し、抗血小板薬はこれを抑制する。
アスピリンの有効性が多数の研究で明らかになっている。
アスピリン禁忌例にはトラピジルやチエノピリジン系薬剤(チクロピジン、クロピドグレル)が代替薬として用いられる。
冠動脈ステント留置例では、ステント血栓症予防のためアスピリンを一生涯使用し、チエノピリジン系薬剤を併用する(ベアメタルステント:1ヶ月、薬剤溶出性ステント:1年以上)。
・抗血小板薬を含めて薬剤を中止するように他科医師や薬剤師に勧められた場合には必ず循環器主治医に相談してください。
プロスタグランジン製剤
強力な血管拡張物質の1つであり、細胞膜上のアデニル酸シクラーゼの活性化、血管弛緩作用、血小板凝集抑制などを発揮する。
重症下肢虚血に用いられるが、潰瘍縮小の効果に留まり、下肢切断を免れる効果はない。
PGI2は血管内皮細胞から産生され、きわめて強力な血管拡張作用などがある。
ベラプロスト(プロサイリン、ドルナー)、エポプロステノール(フローラン)はさらに血小板凝集抑制作用、赤血球変形能なども有する。
プロスタサイクリンの作用増強薬のイブジラスト(ケタス)は抗アレルギー薬としても用いられている。
参考書籍:日経DI2012.3
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