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抗血小板薬と抗凝固薬の出血の副作用の違いは?
公開. 更新. 投稿者:脳梗塞/血栓.この記事は約5分38秒で読めます.
4,377 ビュー. カテゴリ:血液サラサラの薬の副作用
「血液サラサラにする薬」という説明をするバファリンなどの抗血小板薬と、ワーファリンなどの抗凝固薬で、出血やアザなどの副作用がありますが、作用機序の違いから副作用の出方にも多少違いがあるようです。
まず、それぞれの働き方の違いについて見ていきます。
その前に「血液サラサラにする薬」と言うと、まるで、ドロドロの血液をサラサラにするような、血行が良くなるイメージを持つ人もいるので、あまり多用しないほうがよいだろう。
一次止血と二次止血
血管が傷つくと、血管が収縮するとともに、血液中の「血小板」が即座に傷口に粘着します。粘着した血小板は活性化物質を放出して周囲の血小板を活性化させ、互いにくっつきあって凝集塊を形成し、とりあえず傷口をふさぎます。
これを「一次止血」といいます。
血小板の凝集塊は、そのままでは不安定であり、より強固に固めるのが「フィブリン」です。
フィブリンは、血液と傷口の組織因子が接することをきっかけに凝固反応が爆発的に進み、生成されます。
凝固反応は、血液中の12種類ある凝固因子(発見順に第Ⅰ~ⅩⅢ因子の番号が付けられている、第Ⅵ因子は欠番)が次々に反応することで進みます。
最初の刺激は小さくても徐々に反応が増幅して大量のトロンビン(活性化第Ⅱ因子、酵素)ができ、トロンビンが可溶性のフィブリノーゲンを不溶性のフィブリンに変えます。
この過程を「二次止血」といい、一次止血と二次止血で強固な血栓を形成します。
この止血の仕組みは、傷口を塞ぐ効果がありますが、病的な血栓の形成にもつながります。
一次止血と抗血小板薬
一次止血で形成される血小板血栓には、抗血小板薬が使われます。
血小板か血管に異常が起こる一次止血の異常では、皮下出血や鼻出血などの出血が起こります。血小板は、通常20万~30万個/μLが血中を循環しています。そのうち3万個/μLは内皮細胞の間隙を埋めているため、血小板が3万個/μL以下に減少すると、体中の血管内皮細胞の間隙から血球が漏れやすくなり、通常なら出血しないようなわずかな刺激で出血したり、刺激がなくても出血するようになり紫斑が出現します。
鼻血、口腔や歯肉からの出血などの粘膜出血も起こります。
二次止血と抗凝固薬
二次止血の異常、すなわち凝固系に異常が起こった場合は、関節内出血や筋肉内出血、臓器出血、月経量の増加、不正出血などが起こる。血尿や血便、吐血、喀血などが見られることもある。
凝固因子は、肝臓でビタミンKを利用して産生される。
ビタミンKは、通常、腸内細菌が産生するが新生児では腸内細菌が未発達でビタミンKが不足する。
そのため、頭蓋内出血の予防にビタミンKが投与される。凝固因子は肝臓で合成されるため、肝機能が著しく低下している場合も、凝固因子の合成ができず、出血が起こりやすくなる。
ワーファリンなどの抗凝固薬はもちろん、ビタミンKを産生する腸内細菌を殺菌してしまうセファロスポリン系抗菌薬や、凝固因子を合成する肝臓を破壊してしまう抗癌剤などによっても出血を起こしてしまう。
動脈血栓と静脈血栓
血栓は血の塊です。
血の塊というと赤い血のイメージですが、白い血栓というものもあるという。
血栓の形成には血小板凝集と血液凝固能の亢進が関与します。
血栓には、動脈血栓と静脈血栓の2種類があります。
前者は血小板の活性化によって、後者は血液のうっ帯(血流などが停滞した状態)に伴う凝固系の亢進によって生じます。
一般に、動脈に形成される動脈血栓は、血小板凝集を主体とする血小板血栓(白色血栓)、静脈に形成される静脈血栓は、凝固能亢進によるフィブリン血栓(赤色血栓)とされ、動脈血栓には抗血小板薬、静脈血栓には抗凝固薬による治療が中心となります。
そこで、アテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の予防には抗血小板薬が、心原性脳塞栓症の予防には抗凝固薬が使われているのです。
血栓は凝固系と血小板が連動して作用することにより形成されるもので、どちらか一方だけで血栓が形成されるものではありません。
血液の流れの速いところは血小板が活性化しやすいので、動脈には血小板をたくさん含んだ血栓が形成されます。一方、血液凝固因子は活性化されてもすぐに流されてしまうため、血液凝固反応は進みにくくなります。
この血栓がアテローム血栓性脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。
また、動脈血栓は血小板の含有量が多いため白く見えるので、白色血栓とも呼ばれています。
一方、血液の流れが遅く停滞したところでは凝固系が活性化するので、フィブリンという血液凝固に関わるタンパク質をたくさん含んだ血栓ができます。
これが静脈血栓で、エコノミー症候群や心原性脳塞栓症の原因となります。
また、血流が遅いため赤血球がよどみ、赤血球の含有量が多くなり赤く見えるので、赤色血栓とも呼ばれています。
脳梗塞と血栓
脳梗塞の病型のうち、アテローム血栓性脳梗塞は、内頸動脈など脳内外の主幹動脈にできた動脈硬化性病変(アテローム)が壊れ、そこに血小板主体の血栓が形成されて、そこで閉塞を起こしたり、血栓の一部が剥がれて末梢の脳血管を塞栓することで発症する。
動脈は血液の流れが速いので、フィブリンを形成する凝固因子は流れやすく、結果的に血栓は血小板主体となる。
その色調から白色血栓と呼ばれる。
また、心原性脳塞栓は、心臓でできた血栓が血液の流れに乗って運ばれ、脳血管を塞栓することで生じる。
血栓のサイズは大きくなりやすく、比較的太い脳血管を突然閉塞するので、広範な脳梗塞を来しやすい。
心原性脳塞栓を引き起こす最大の原因疾患は心房細動だ。
心房細動とは、心房では不規則な電気興奮が起こり、細かく震えてまとまった収縮ができなくなる状態をいう。
心房細動を起こした左心房内では、血液のうっ滞や血管内膜の抗血栓作用低下といった、血液凝固反応の活性化につながる要因がそろう。
加えて心房細動患者は高齢者に多いため、脱水で血液粘度が高く、凝固系が亢進しやすい。
このため心房細動を起こすと、左心房内、特に左心耳内に大きな血栓ができやすい。
この血栓は、フィブリンが赤血球を取り込むため赤色を呈するので赤色血栓と呼ばれる。
一口に脳梗塞と言っても、この血栓の種類によって選ぶべき抗血栓薬が違っている。
つまり、白色血栓が強く関わるアテローム血栓性脳梗塞の予防には血小板の凝集を抑制する抗血小板薬を使い、赤色血栓が強く関わる心原性脳塞栓の予防には、血液凝固反応を抑制する抗凝固薬を使う。
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