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抗血小板薬はどれが強い?
公開. 更新. 投稿者:脳梗塞/血栓.この記事は約4分31秒で読めます.
9,964 ビュー. カテゴリ:抗血小板薬の作用機序
トロンボキサンやプロスタグランジンに関与する薬剤と、cAMP濃度とカルシウムイオン濃度が血小板凝集に関係するのでその2つを標的とする薬剤の2つに大きく分けられる。
トロンボキサンやプロスタグランジンに関係する薬剤が、バイアスピリン、エパデール、ロコルナール、ドルナー/プロサイリン、オパルモン/プロレナール。
cAMPやカルシウムイオン濃度に関係する薬が、パナルジン、プラビックス、プレタール、ペルサンチン、アンプラーグとなる。
商品名 | 一般名 | 作用機序 | 特徴 |
---|---|---|---|
バイアスピリン/バファリン | アスピリン | 血小板にあるトロンボキサンA2という物質ができないようにする。トロンボキサンA2は血栓をつくりやすくする物質 | ・もっとも古くから使用されている抗血小板薬で、他の抗血小板薬に比較して安価である。 ・気管支喘息患者にはとくに注意して観察し、発作が生じるときは他の薬に変更する |
ペルサンチン | ジピリダモール | 血小板のcAMPという物質を蓄積させて血栓をできにくくさせる | アスピリンと併用されることが多い |
パナルジン | チクロピジン塩酸塩 | cAMPという物質を増加させて血栓をできにくくさせる | 投与開始後3か月間は血球減少や肝障害の副作用を十分チェックする |
プレタール | シロスタゾール | 血小板のcAMPという物質を蓄積させて血栓をできにくくさせる | 血管拡張作用ももっているために頭痛を訴える(5.7%) |
プラビックス | クロピドグレル硫酸塩 | 血小板のcAMPという物質を蓄積させて血栓をできにくくさせる | ・CYP2C19で代謝されて活性体となるプロドラッグであり、薬効に個人差が生じうる。 ・投与開始して2か月間は2週間に1度の血液検査を行うことが望ましい |
エフィエント | プロスグレル塩酸塩 | 血小板のcAMPという物質を蓄積させて血栓をできにくくさせる | PCI(経皮的冠動脈インターベンション)を用いるケースでは数か月から数年用いる |
アンプラーグ | サルポグレラート塩酸塩 | 血小板などのセロトニン受容体(5-HT2)においてセロトニンと拮抗することで抗血小板作用や血管拡張作用を示す | 手術する際は2日前から服用を中止する |
ブリリンタ | チカグレロル | 血小板の機能を抑制して血栓症の再発を防ぐ | アスピリンとの併用が必要。アテローム血栓症発現リスクが高いケースは60㎎を1日2回服用 |
エパデール | イコサペント酸エチル | 血清脂質低下作用、血小板の凝集能・粘着能を抑制する作用がある | 出血傾向にある患者や手術予定の患者には身長投与。また、定期的な血液検査が望まれる |
ドルナー/プロサイリン | ベラプロストナトリウム | 血小板凝集能・粘着能の抑制、血管拡張・血流増加の作用がある | 出血傾向にある患者には慎重投与 |
オパルモン/プロレナール | リマプロストアルファデクス | 血管拡張・血流増加作用、血小板凝集能抑制作用がある | 出血傾向にある患者には慎重投与 |
バイアスピリン
バイアスピリンはCOX1を阻害して、血小板凝集促進作用のあるTXA2(トロンボキサンA2)の働きを抑えて、抗血小板作用を示します。
パナルジン
血小板表面にあるADP受容体にはATP受容体のP2Y1受容体、P2Y12受容体が機能的に存在しており、P2Y1受容体は血小板の形態変化に関与し、P2Y12受容体は血小板の凝集を促進する作用がある。チエノピリジン誘導体はP2Y12受容体の特異的な阻害薬であることが知られており、P2Y12-Giのシグナルを介したアデニル酸シクラーゼ活性化の抑制を抑制することにより血小板凝集を妨げる。GP IIb-IIIa 複合体の活性化も抑制する。
プラビックス
パナルジンと同じチエノピリジン誘導体で、作用機序も同じ。
プレタール
PDE3阻害。ホスホジエステラーゼを阻害すると細胞内の環状アデノシン一リン酸濃度が上昇し、血小板が凝集しない。
ペルサンチン
PDE阻害
ドルナー/プロサイリン
Adenyl cyclase 活性化による血小板 cyclicAMP 増加
オパルモン/プロレナール
Adenyl cyclase 活性化による血小板 cyclicAMP 増加
エパデール
トロンボキサンA2 のかわりにトロンボキサンA3 を生成 (アラキドン酸から TBX A2,エパデールから TBX A3 を生成,エパデールはアラキドン酸と競合)
アンプラーグ
5−セロトニン受容体2拮抗剤。血小板に存在し、血栓ができるときに凝集を促進する、5-HT2受容体の拮抗剤。
ロコルナール
トロンボキサンA2合成阻害、プロスタサイクリン(PGI2)産生促進により血小板凝集抑制作用を示す。
抗血小板薬の適応
商品名 | 一般名 | 適応症 |
---|---|---|
バイアスピリン/バファリン | アスピリン | 下記疾患における血栓・塞栓形成の抑制 狭心症(慢性安定狭心症,不安定狭心症) 心筋梗塞 虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞) 冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制 |
ペルサンチン | ジピリダモール | ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制 |
パナルジン | チクロピジン塩酸塩 | ○血管手術および血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善 ○慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛および冷感などの阻血性諸症状の改善 ○虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療 ○クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善 |
プレタール | シロスタゾール | 慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善 脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制 |
プラビックス | クロピドグレル硫酸塩 | ○虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制○経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞) 安定狭心症、陳旧性心筋梗塞 ○末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制 |
エフィエント | プロスグレル塩酸塩 | 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患 急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞) 安定狭心症、陳旧性心筋梗塞 |
アンプラーグ | サルポグレラート塩酸塩 | 慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍,疼痛および冷感等の虚血性諸症状の改善 |
ブリリンタ | チカグレロル | 〈ブリリンタ錠90mg〉 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)(ただし、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る) 〈ブリリンタ錠60mg〉 以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合 65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害 |
エパデール | イコサペント酸エチル | 閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善 |
ドルナー/プロサイリン | ベラプロストナトリウム | 慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善 |
オパルモン/プロレナール | リマプロストアルファデクス | 閉塞性血栓血管炎に伴う潰瘍、疼痛および冷感などの虚血性諸症状の改善 |
適応からみると、脳卒中の再発予防に使えるのは、バイアスピリン、パナルジン、プラビックス、プレタール。
ドルナー/プロサイリン、オパルモン/プロレナール、エパデール、アンプラーグなどは、血流改善による虚血症状の改善程度の効果しかないわけで。
プレタールとペルサンチンのPDE3阻害薬の評価が難しいのだけれど。
プレタールは塞栓症に適応が無いし、ペルサンチンの適応も限定的。
適応上の問題もあるのかと思いますが、ペルサンチン(ジピリダモール)を抗血小板薬として処方されているケースをあまり見ない。
しかし、ESOのガイドラインではアスピリン・徐放性ジピリダモール併用とクロピドグレル単独が同等に評価されるなど、見直されてきているようです。
そのほかの抗血小板作用のある薬
ケタス:ホスホジエステラーゼ活性阻害、PGI2増強作用
コメリアン:血小板ホスホリパーゼ活性抑制、血小板放出反応抑制
バスタレルF:血小板のコラーゲン、ADP、アラキドン酸による凝集に対し、血小板膜安定化に基づく抑制作用
ドメナン/ベガ:TXA2の生成を抑制
セロクラール:血小板膜安定化作用、TXA2拮抗作用
コレキサミン:血小板のTXA2生合成を抑制し、血管内皮細胞のプロスタグランジンI2生合成を促進
ペリシット:TXA2の生成を抑制
サアミオン:ADP誘起血小板凝集抑制、コラーゲン、アラキドン酸及びPAF誘起血小板凝集抑制
プレタールとしびれ
プレタール(シロスタゾール)は、閉塞性動脈硬化症(ASO)に対する適応もある。
ASOは、下肢の血管に動脈硬化病変が生じ、血管内腔が狭窄して虚血状態を示す疾患だ。
高齢化に伴いASO患者は急増しており、国内の推定患者数は300万~400万人にも上る。
主な症状は下肢のしびれや冷感、間欠性跛行だ。
病状が進行すると、下肢に安静時の疼痛や潰瘍、壊死を生じる。
このASOに対してプレタールは大規模臨床試験で有効性が確認されており、国際ガイドラインで使用が推奨されている。
近年、ASOは全身の動脈硬化症病変の一部分と認識されるようになっている。
ASOがある患者に、狭心症や脳梗塞が見られるケースも珍しくない。
ASOに狭心症を合併している場合には、アスピリンとクロピドグレルに加えてシロスタゾールを併用するが、出血や頻脈などの副作用のため、シロスタゾールが投与できないケースもある。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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