2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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熱中症に解熱剤は無意味?

熱中症に解熱剤?

熱中症では、発汗や循環機能に異常をきたし、体温の調節がうまくできなくなり、体温が上昇します。
この熱中症による体温上昇に解熱剤を使用しても無意味です。

風邪など感染症による発熱は、発熱という名の通り人間が熱を発しているのです。
体温調節中枢のセットポイントを上げることにより体温を上げて、感染症の原因となっているウイルスをやっつけようとしているのです。
そのため、体温調節中枢のセットポイントを下げる働きのあるNSAIDsなどの解熱剤によって体温が下がります。

しかし、熱中症による体温上昇は、発熱ではなく欝熱、発汗機能の低下により体温が欝積している状態です。
体温調節機能のセットポイントが上昇しているわけではないので、解熱剤によって体温は下がりません。
氷やアイスノンなどで、太い血管のある脇の下、首、足の付けね股の間を冷やすしかありません。

脱水状態にNSAIDsは危険

例えば、CKD患者が、利尿薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬、といった腎血流を低下させやすい薬剤を脱水状態で服用すると、急性腎障害を引き起こす恐れがある。

特に高齢患者の場合、容易に脱水を来しやすく、急性腎障害の発症リスクが高い。

健常者の腎臓では、腎血流の自己調節能が働いており、脱水により腎血流量が低下すると、プロスタグランジン(PG)による糸球体の輸入細動脈拡張と、RAS亢進による輸出細動脈の収縮が起こり、糸球体圧が保たれ、GFRが維持される。
ところが、高齢者では動脈硬化などで輸入細動脈が狭小化しており、自己調節能が機能していないケースがあるほか、高度な脱水に陥ると、この調節能が破綻し、虚血性腎障害を来し得る。

薬剤が与える影響も大きい。
例えば、NSAIDsはPGの産生を抑制し、輸入細動脈の拡張を阻害するため、GFR低下、ひいては腎虚血、腎前性腎不全を来すリスクがある。
また、RAS阻害薬は、腎糸球体の輸出細動脈の収縮を阻害しGFRを低下させる。
軽度の脱水であっても、これらの薬剤を服用していて糸球体虚血が増悪すれば、急性腎障害を来し得る。

近年では、高齢のCKD患者への降圧薬の選択として、RAS阻害薬の脱水や虚血に対する脆弱性を考慮し、CKDステージG4~5の患者ではカルシウム拮抗薬を推奨する流れもある。

赤ちゃんは熱中症になりやすい?

体に占める水分の割合ですが、新生児は約80%、乳児は70%、幼児~成人は60%です。
そのため、小児は下痢や嘔吐で簡単に脱水しやすい。

脱水しやすい理由にはもう一つ、腎機能が未熟という理由もあります。
濃縮力が未熟なので、脱水になりかけたとき、腎臓が尿を濃縮しにくいのです。

乳幼児の熱中症

汗が皮膚から蒸発する時に熱が奪われて体温を下げるので、発汗は体温調節に重要です。

小児、特に新生児や乳幼児では、成人と同じ数の汗腺が存在しますが体表面積が小さいために汗腺密度は高くなります。
しかし、汗腺のサイズおよび機能が未発達であるために発汗量は少ないです。
この未発達な発汗機能を代償するために、頭や躯幹部の皮膚血流量を増大して熱放散を促進させます。

気温が体温より高い場合は熱放散が停止するので、体表面積当たりの運動代謝による熱産生が高い乳幼児では、高体温になりやすいです。
湿度が75%を超えると汗をかいても蒸発しにくいため、熱の放散が不十分になりがちです。
また、体重当たりの水分量が少ないことから、わずかな発汗によって容易に脱水状態になりやすいなど、熱中症が起こりやすくなっています。

【車内】
エアコンを切り、窓を閉め切った車内は高温になりやすい。
外気温が30~40℃の場合では窓を閉め切った車内の温度は15分で60℃以上にも達する。

【ベビーカー】
炎天下のベビーカーの体感温度は高い。
成人の顔よりも地表に近いため成人の体感温度よりも1℃以上温度が高い。
また、太陽と地表コンクリートの両方から輻射熱を受ける。

小児の脱水

小児は成人と比べると体重に占める体液、特に細胞外液の割合が多いうえに、腎臓での尿濃縮能が未熟なため、水分代謝が早く、脱水に陥りやすいです。

乳児の排泄量は700mLで、細胞外液1400mLの50%に当たりますが、成人の排泄量は2000mLで、細胞外液14000mLの14%です。
つまり、小児は成人の3.5倍の速さで水分を摂取しないと生存できないのです。
小児が7時間水分を摂取しないのは、成人が1日水分を摂取しないのと同じことなのです。

熱中症と日射病と熱射病

最近は「熱中症」という言葉を多く聞きますが、昔は「日射病」とか「熱射病」という言葉のほうがよく聞いた気がする。

熱中症とは、暑熱環境下においての身体適応の障害によっておこる状態の総称です。
熱中症は以下の4つに分類される。
【熱失神】
皮膚血管の拡張によって血圧が低下、脳血流が減少して起こります。
脈は速くて弱くなります。
【熱けいれん】
大量に汗をかき、水だけを補給して血液の塩分(ナトリウム)濃度が低下した時に、足、腕、腹部の筋肉に痛みを伴ったけいれんが起こります。
【熱疲労】
大量に汗をかき、水分の補給が追いつかないと、身体が脱水状態になり熱疲労の症状がみられます。
【熱射病】
体温の上昇のため中枢機能に異常をきたした状態です。意識障害(応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)がみられたり、ショック状態になる場合もあります。

意識障害がみられる熱射病は、熱中症の中でも重い部類。
じゃあ、「日射病」は何かというと、ウィキペディア先生によると、

かつては高温多湿の作業環境で発症するものを「熱射病」、日光の直射で発症するものを「日射病」と言い分けていたが、その発症メカニズムは全く同じものであり、最近では熱射病の用語に統一されつつある。

室内で日射病にはならないので、使用範囲が限定される。
熱中症という呼び方が一番、広範囲に使える。

参考書籍:日経DI2018.8

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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