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男性用の薬、女性用の薬
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約2分2秒で読めます.
87 ビュー. カテゴリ:男性用の薬、女性用の薬

薬のなかには、男性にしか使えない薬、女性にしか使えない薬というのがある。
効能効果が前立腺肥大症なら男性用、子宮がんや乳がんなら女性用といえるが、効能効果に「男性」「女性」と明記されているものは少ない。
・添付文書の「効能または効果」に性別が明記されている薬剤
医薬品名 | 効能効果 |
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ザガーロカプセル0.1mg /0.5mg | 男性における男性型脱毛症 |
ツムラ加味逍遙散エキス顆粒(医療用) | 体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症: 冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症 |
プロペシア錠0.2mg/1mg | 男性における男性型脱毛症の進行遅延 |
ミニリンメルトOD錠25µg/50µg | 男性における夜間多尿による夜間頻尿 |
加味逍遙散は「婦人」と記載されているので、基本的には女性用の薬であるが、男性更年期障害などで男性に用いられることもある。
ミニリンメルトOD錠25μg/50μgの適応は、「男性における夜間多尿による夜間頻尿」であり、男性用の薬であるが、ミニリンメルトOD錠 60µg/120µg/240µgの適応は、「中枢性尿崩症」「尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症(120µg/240µgのみ)」であり、男性用というわけではない。
また、男女両方に使えるが、用量の異なる薬もある。
・性別による用量が異なる主な薬剤
医薬品名 | 添付文書の記載 |
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アクトス | 浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、1日1回15mgから投与を開始することが望ましい。 |
イリボー | 〈男性における下痢型過敏性腸症候群〉 通常、成人男性にはラモセトロン塩酸塩として5μgを1日1回経口投与する。 なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10μgまでとする。 〈女性における下痢型過敏性腸症候群〉 通常、成人女性にはラモセトロン塩酸塩として2.5μgを1日1回経口投与する。 なお、効果不十分の場合には増量することができるが、1日最高投与量は5μgまでとする。 |
ソニアス配合錠 | ピオグリタゾンの投与により浮腫が比較的女性に多く報告されているので、グリメピリド1日1mg単剤の治療により効果不十分な女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、ピオグリタゾン/グリメピリドとして1日1回15mg/1mgから投与を開始することが望ましい。 |
メタクト配合錠 | ピオグリタゾンの投与により浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、本剤に含まれるピオグリタゾンとしての投与量は1日1回15mgから投与を開始することが望ましい。 |
リオベル配合錠 | ピオグリタゾン塩酸塩の投与により浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、これまでのピオグリタゾンの投与量を考慮のうえ、アログリプチン/ピオグリタゾンとして1日1回25mg/15mgからの投与開始を検討すること。 |
履歴書から性別欄が消えるというジェンダーレスな社会ではあるが、処方箋の性別欄は必要なこともある。
男性にエビスタはダメ?
エビスタの適応は「閉経後骨粗鬆症」となっているので、保険請求上、男性にエビスタを処方することはできません。
もう一つの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、ビビアントも同様です。
エストロゲン受容体に働くので、男性での効果があまり期待できないという理由です。男性にもエストロゲン受容体はあるので、全く効かないわけではなさそうだが、海外でも女性にしか適応はない。
女性に禁忌の薬
また、添付文書の禁忌に「女性」と明記されている薬もある。
前立腺肥大症の薬「アボルブ」、前立腺癌の薬「カソデックス」、脱毛症の薬「ザガーロ」などが女性に禁忌となっている。そもそも女性に前立腺は無いので、前立腺関連の薬を女性に使うことは無いのだが、適応外で使われる可能性も考えると、より注意すべき薬として禁忌に挙げる必要があるのだろう。
ちなみに「男性」に禁忌と記載されている薬はない。
ルトラールは女性用、プロスタールは男性用
ルトラールとプロスタールはどちらもクロルマジノン酢酸エステルを成分とする薬です。
しかし、ルトラールは含量が2mgで、生理不順や生理の出血量異常、不妊症の治療など、女性特有の症状を改善するための薬です。
つまり、ルトラールは女性にしか処方されません。
一方、プロスタールは、含量が25mgまたは50mgと10倍以上になっており、前立腺肥大症、つまり男性特有の疾患に用いられます。
主成分が同じでも、含量を調節することにより、女性専用や男性専用の薬として利用できるホルモン剤は面白い物質です。