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ゴーストピル一覧
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約3分13秒で読めます.
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ゴーストピル

薬の中には薬が溶け出した後の抜け殻が排泄されるものがある。この抜け殻のことをゴーストピル(ゴーストタブレット)という。薬の殻が出てくると言っても、卵の殻のようなものが便中に混ざっているくらいだろうと思っていたが、ほとんど錠剤の形をしたまま排泄されるものもある。
便中に錠剤を見つけたら、これは効いてないのではないか?と疑う患者もいるだろう。特にジェネリック医薬品の場合は不信感を抱く患者もいるので注意が必要である。
ゴーストピルは徐放化製剤にみられることが多く、残渣は主薬が消化管内で放出された後に出現する抜け殻にすぎない。したがって、残渣が認められた場合でも、薬効には影響がないと考えられている。決して不良品であるということではないので、事前に患者に説明しておくことが必要である。
▶糞便中に製剤の残渣が見られる可能性のある主な薬一覧
一般名 | 商品名 | 添付文書の記載 |
---|---|---|
バルプロ酸ナトリウム | セレニカR錠、デパケンR錠、バルデケンR錠、バルプロ酸ナトリウムSR錠、エピレナート徐放顆粒、セレニカR顆粒、バルプラム徐放顆粒 | 本剤の白色の残渣が糞便中に排泄される。 |
塩酸メチルフェニデート | コンサータ錠 | 本剤の外皮は内部の不溶性の成分と一緒に糞便中に排泄されるが、正常なことであり心配する必要はないことを説明すること。 |
ニフェジピン | ニフェジピンCR錠「サワイ」「NP」「日医工」 | 内核のフィルムコーティング剤のエチルセルロースは水に不溶のため、糞便中にまれに錠剤の形状を残したまま排出されることがある。 |
テオフィリン | スロービッドカプセル・顆粒、セキロイド錠、テオスローL錠、テオフルマートL錠、テオロング錠・顆粒、テルダンL錠、ユニコン錠、ユニフィルLA錠 | 本剤由来のエチルセルロースの透過性膜は、テオフィリン溶出後、未消化のまま排泄されるため、白色粒子が糞便中に見られることがある。 |
メサラジン | ペンタサ錠、アサコール錠 | 本剤のコーティング剤のエチルセルロースは水に不溶のため、糞便中に白いものがみられることがある。 |
硫酸鉄 | フェロ・グラデュメット | 鉄放出後のプラスチック格子は,そのまま糞便中に排泄される. |
塩化カリウム | スローケー、エフズレンK錠、ケーサプライ錠 | 本剤のゴーストタブレット(有効成分放出後の殻錠)が糞中に排泄されることがある。 |
塩酸オキシコドン水和物 | オキシコンチン錠 | 本剤のマトリックス基剤(抜け殻)が人工肛門あるいは糞便中に排泄される場合があること,その場合本剤の成分は既に吸収されているため,臨床的に問題はないことを患者に説明すること。 |
パリペリドン | インヴェガ錠 | 本剤の外皮は内部の不溶性の成分と一緒に糞便中に排泄されるが、正常なことであり心配する必要はないことを説明すること。 |
フェキソフェナジン塩酸塩/塩酸プソイドエフェドリン | ディレグラ配合錠 | 糞便中に、有効成分放出後の殻錠が排泄されることがある。 |
メサラジンのゴーストピル
ゴーストピルは不良品ではないとはいえ、ゴーストピルがみられた場合、溶け切っていない可能性はある。
例えばアサコールは、pH依存性徐放剤であり、pH7以上になる大腸に到達してからメサラジンを放出する。胃内のpHは、食前の空腹時にはpH1~1.5、食事をとってもpHは4~5なので、アサコールは胃では溶け出さない。小腸のpHは弱酸性のpH5~6.5くらいなので、ここでもまだアサコールは溶け出さない。大腸のpHは、一般的にアルカリ性でpH7以上となっているので、ここでアサコールが溶け出すしくみになっている。しかし、人によっては大腸のpHが7未満の人もいるらしく、そのような人ではアサコールが十分溶け出さない可能性もある。
また、薬の残留物がみられた場合に、効果が十分発揮されない可能性のあるものもある。
レキップCRのゴーストピル
レキップCR錠の添付文書には、「本剤は24時間かけて有効成分を放出し、溶解するよう設計されているので、腸切除の既往、人工肛門造設術、下痢等の影響で、本剤の消化管内滞留時間が短くなったと考えられる場合、または糞便中に本剤の残留物が確認された場合には、本剤の効果が十分に得られないおそれがある。」と記載されている。
レキップCR錠服用の際にゴーストピルのようなものがみられた場合、効果が十分発揮されていない可能性もあるので、便中に殻を見つけた場合には、医師に伝えるように指導する。
デパケンRのゴーストピル
デパケンR錠は、吸湿を防ぐために表面がシュガーコーティングされているが、その内側は、マトリックス構造を核とし、その外側を徐放性被膜で覆った二重構造になっている。マトリックス構造部分は、水に不溶性で多孔質のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとバルプロ酸ナトリウムを混合打錠して成形されている。いわば、スポンジの中に主剤であるバルプロ酸ナトリウムを吸収させた構造である。
徐放性皮膜は不溶性のエチルセルロースが主体であり、マトリックス構造中に含まれたバルプロ酸ナトリウムが、皮膜の微細な隙間から徐々に放出されることで、主剤の溶出が制御されている。このマトリックス構造部分と皮膜は不溶性である。そのため、主薬が放出されてしまった後も、これらは消化管内で崩壊せず、糞便中にそのまま排泄される。これが、糞便中に認められる白色残渣の正体である。
実際、糞便中に錠剤の形状を保持したまま残渣が排泄された症例(13症例)について、回収した残渣の主薬残存率を測定した研究では、約10%残存していた1例を除き、残存率はすべて1~5%だったと報告されている。
ただし、重篤な下痢症状を伴っている患者では、主薬が十分吸収されないうちに排泄され、血中バルプロ酸濃度が十分に上昇していない可能性がある。
デパケンR錠は、主薬が100%溶出するのに9~10時間程度かかるように設計されているため、服用後10時間程度は消化管内に滞留させなければならない。
重篤な下痢がある場合には、一時的に普通錠を使用するか、徐放錠をかみ砕いて服用するなどの対策を講じる必要がある。
オキシコンチン錠のゴーストピル
オキシコンチン錠は、親水性のヒドロキシアルキルセルロースと主薬を練合して顆粒状にし、高級脂肪アルコールでコーティングして打錠したものである。
消化管内で錠剤に水分が浸透すると、ヒドロキシアルキルセルロースが水和化して主薬が溶解し、高級脂肪アルコールのマトリックスの空隙から徐々に主薬が放出され、マトリックスが残る。
2 件のコメント
子供のころから胃腸が弱くほぼ毎日軟便もしくは水様便の体質です。
加えてアレルギーもありディレグラ錠を昨年末から服用しています。
数か月前たまたまトイレの中にほぼそのままの形状の薬が浮いているのを
発見。
その後気になって確認していたところほぼ毎日見つかりました。
前日の夕食の食材(もやしやニラなど)が朝の排便でそのまま
出てくることも良くあるので、薬も吸収されていないのではと
不安でしたが安心しました。
薬とは縁が切れない生活ですが他の薬を見たことは無いのでたぶん
ゴーストタブレットなのだと思います。
なかなか他の人に聞きにくい事なので大変参考になりました。
ありがとうございました。
ディレグラ長期服用??
アレグラに代えられては?