2025年8月29日更新.2,606記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ドーピング禁止物質一覧

うっかりドーピング

2021年に行われた東京オリンピックに向けて、2009年度からスポーツファーマシストの認定制度も始まり、ドーピングに反対する「アンチ・ドーピング」の機運が高まった。

ドーピングと聞くと、運動能力を上げるために薬物を使う、つまり、意図して薬を使っているものだという思い込みがあるが、日本においては、意図せずにドーピングしてしまう「うっかりドーピング」の方が多い。風邪をひいて葛根湯を使ってドーピングに引っかかったり、脱毛症の薬でドーピングに引っかかったというスポーツ選手のニュースをたまに聞く。これらの意図しない、うっかりドーピングを防ぐためにも、薬剤師の役割は大きい。

ドーピング禁止物質をすべて覚えておく必要は無いが、聞かれたときに調べられるよう、情報源は把握しておこう。

薬剤師がドーピングの相談を受けたときに参考にすべき資料

ドーピングに関する国際機関としては、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)がある。
その下に日本アンチ・ドーピング機構(JADA)がある。
スポーツファーマシストはJADAに属する。

JADAのホームページから、禁止薬物の検索ができる「Global DRO」というページを確認することができる。
Global DRO

ステロイドとドーピング

スポーツ選手がドーピングで使うステロイドと、医療用のステロイドを混同して、ステロイドは危ないものというイメージを持っている人がいる。

ドーピングで使うステロイドはアナボリックステロイド(男性ホルモン作用タンパク同化ステロイド)のことで、筋肉増強作用がある。しかし、医療用の副腎皮質ステロイド=糖質コルチコイドもドーピング禁止物質に挙げられている。

蛋白同化ステロイドがドーピングとして禁止される理由は「筋肉量、筋力増加」「赤血球新生の増加」などであるが、糖質コルチコイドが禁止される理由は、中枢作用(興奮を高める、高揚感・陶酔感)や、代謝作用(糖質・蛋白質・脂質代謝などエネルギー代謝を活性化させる)といった理由からである。

糖質コルチコイドのうち、注射剤や経口剤はもちろん禁止であるが、外用剤については判断に迷うことがある。皮膚に塗るステロイド外用薬は禁止ではない。点眼薬や点鼻薬、吸入ステロイドも禁止ではない。しかし、経直腸投与の坐薬や経腸液は禁止である。注意すべきは、口内炎に用いられるアフタゾロンやアフタッチといった口腔内局所用のステロイドについても禁止されている点である。

市販薬でもステロイドを含む口内炎治療薬があるので販売時には注意が必要である。

利尿薬とドーピング

利尿剤もドーピングの禁止物質に指定されている。筋肉増強剤などのように直接ドーピングできるわけではなく、ドーピングで使用した薬物を利尿して隠ぺいする目的で使われる。

最近は降圧剤の配合薬に含まれているヒドロクロロチアジドが検出されるケースが多いという。患者自身も利尿薬を飲んでいるという自覚はなかったりする。

また、逆に尿量を減少させる作用があるデスモプレシンも、血漿増量物質として禁止物質の検出を隠蔽するために使用される。

漢方薬とドーピング

漢方薬は西洋薬に比べ、副作用が少なく、マイルドに働くというイメージから、ドーピングにはなりにくいという印象をもつスポーツ選手もいるが間違っている。軽い気持ちで葛根湯などを飲んでしまうと、ドーピングに引っかかる。

エフェドリンを含む麻黄(マオウ)、半夏(ハンゲ)、ストリキニーネを含むホミカ、またホルモン物質を含む海狗腎(カイクジン)、麝香(ジャコウ)、鹿茸(ロクジョウ)などの動物生薬はドーピングで引っかかる可能性がある。

構成生薬にいずれの記載がない場合でも、漢方(生薬)は、すべての含有物質が明らかになっているわけではない。したがって、その製品が禁止物質を含まないという保証はできないので、市販の漢方薬やサプリメントを使用するのは避けた方がよいだろう。

のど飴とドーピング

「南天のど飴」がドーピングになるということが一時期話題になった。原因物質は「ヒゲナミン」という成分である。ヒゲナミンにはβ₂刺激作用があり、気管支拡張作用があるので、呼吸が楽になる。

ヒゲナミンは植物のイボツツラフジの成分で、ヒゲナミンが含まれるとされる成分および生薬には以下のようなものがある。

・Norcoclaurine(ノルコクラウリン)・Demethylcoclaurine(デメチルコクラウリン)・Tinospora crispa(イボツツラフジ)・附子・丁子・細辛・南天実・呉茱萸

「ヒゲナミン」は、ゴシュユ(呉茱萸)、ブシ(附子)、 サイシン(細辛)、チョウジ(丁子)、 ナンテン(南天)などの生薬に含まれている。

南天のど飴は南天を含み、そのなかにヒゲナミンが含まれている。
浅田飴には、キキョウ根エキス、トコンエキス、マオウエキス、ニンジンエキス、カッコンエキス、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クレゾールスルホン酸カリウム、セチルピリジニウム塩化物水和物を含む製品があり、これらは麻黄やメチルエフェドリンが含まれているので禁止薬物である。

しかし、龍角散ののどすっきり飴には、カミツレ、カリン等が含まれているが、禁止薬物は含まれていないので、使用可能である。

特定競技において禁止される物質

ドーピング禁止物質のなかには、すべての競技で禁止されているわけではなく、特定の競技において禁止されている物質がある。

不整脈などで用いられるβ遮断薬は、アーチェリー、自動車、ビリヤード、ダーツ、ゴルフ、ミニゴルフ、射撃、水中スポーツ(フリーダイビング、スピアフィッシング、ターゲットシューティング)といった競技で、禁止物質に指定されている。理由として、『静穏作用のため選手の不安解消や「あがり」の防止、また、心拍数と血圧の低下作用で心身の動揺を少なくするため禁止』と記載されている。

保険適応外でインデラルをあがり症に使用することもあり、β遮断薬は緊張状態の緩和に効果がある。特に集中力を要するスポーツでは有利に働くため、上記の競技では禁止物質に指定されている。

▶特定競技において禁止される物質

分類理由医薬品名
P1.β遮断薬静穏作用アセブトロール (アセタノール)
レボブノロール
アルプレノロール
アテノロール (テノーミン)
メチプラノロール
メトプロロール (セロケン)
ベタキソロール (ケルロング、ベトプティック点眼液)
ビソプロロール (メインテート、ビソノテープ)
ナドロール (ナディック)
ブノロール
ネビボロール
オクスプレノロール
カルテオロール (ミケラン)
カルベジロール (アーチスト)
ピンドロール (カルビスケン)
セリプロロール (セレクトール)
チモロール (チモプトール点眼液)
プロプラノロール (インデラル)
ソタロール (ソタコール)
エスモロール
ラベタロール(トランデート)

参考:
薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック2025年版
一般社団法人 和歌山県薬剤師会:禁止物質について

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