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フェノールは毒?ポリフェノールは体にいい?似て非なる成分
公開. 更新. 投稿者:健康食品/OTC.この記事は約2分6秒で読めます.
367 ビュー. カテゴリ:フェノールとポリフェノール

ドラッグストアでよく見かける「ポリフェノール配合」「抗酸化作用」などのキャッチコピー。
一方、大学の化学の授業で出てきた「フェノール」は、なんだか刺激性が強くて有害なイメージ…。
この2つ、名前は似ていますが、薬剤師の視点で見るとまったく異なる性質を持っています。
フェノールとは何か?
フェノール(phenol)は、ベンゼン環に水酸基(OH)が1つついた構造を持つ芳香族化合物です。単純で小さい構造をしており、強い殺菌・防腐作用を持つ反面、粘膜や皮膚への刺激性や毒性が高く、医薬品原料として使うには慎重な管理が必要です。
かつては石炭酸(フェノール水溶液)が消毒薬として使われた歴史もありますが、現在では使用頻度はかなり減っており、医療現場では消毒薬の代替としてより安全性の高いものが主流です。
ポリフェノールとは何か?
一方でポリフェノール(polyphenols)とは、フェノール性水酸基(=フェノール構造)を複数持つ化合物の総称です。自然界、特に植物に多く含まれ、抗酸化作用を持つことで知られています。
代表的なポリフェノールには以下のようなものがあります。
・カテキン(緑茶)
・アントシアニン(ブルーベリー、ナス)
・イソフラボン(大豆)
・レスベラトロール(赤ワイン)
これらは活性酸素を除去する作用(抗酸化作用)を持ち、生活習慣病の予防や老化抑制の面から注目されています。
医薬品との関連性は?
ポリフェノールそのものは医薬品ではなく、基本的には食品成分またはサプリメントの領域ですが、医薬品成分の中にもポリフェノール構造を持つものがあります。
たとえば、
エパデール(イコサペント酸エチル)や抗酸化サプリにおいて、ポリフェノールが“補助的機能成分”として配合されることがあります。
植物由来の医薬品(漢方含む)では、抗炎症・抗酸化作用を期待してポリフェノール系の化合物が含まれることもあります。
ただし、ポリフェノール=安全・万能というわけではありません。
一部にはエストロゲン様作用(例:イソフラボン)を持つものもあり、ホルモン感受性腫瘍の既往歴がある患者では注意が必要です。
フェノールとポリフェノール、何が違う?
項目 | フェノール | ポリフェノール |
---|---|---|
構造 | 単一のフェノール基 | 複数のフェノール基をもつ |
例 | フェノール(石炭酸) | カテキン、アントシアニン、イソフラボン |
毒性 | 強い(刺激性・腐食性) | 比較的低いが個別注意必要 |
主な用途 | 殺菌・防腐(現在は少ない) | 抗酸化・健康食品・機能性素材 |
医薬品との関係 | 消毒薬の旧成分 | 一部医薬品に含有/補助成分扱い |
・名前は似ていても性質は真逆に近い:フェノールは毒性強め、ポリフェノールはむしろ体に良い成分とされる。
・患者が「ポリフェノール配合の健康食品」を服用している場合、作用や相互作用のリスクを確認。
・特にホルモン感受性疾患(乳がん・子宮筋腫など)の既往歴がある方に、ポリフェノール含有サプリは注意喚起が必要。
フェノールは刺激性のある有害成分、ポリフェノールは抗酸化作用を持つ植物由来の有用成分。
語感は似ていますが、薬剤師としてはそれぞれの構造と作用の違いを正確に把握し、患者対応に役立てたい知識です。