2025年8月2日更新.2,557記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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抗酸化物質で長生きできる?酸素は体に悪い?

抗酸化物質で長生きできる?─活性酸素と戦う栄養素

「抗酸化物質で若返る」「ジョギングで心臓病予防」「筋トレで代謝を上げる」──健康情報は巷にあふれています。しかし、その一方で「激しい運動は活性酸素を増やす」「抗酸化物質だけでは寿命は伸びない」など、真逆の指摘も多いのが現実です。

本当に健康で長生きするには、どんな生活習慣が大切なのか。活性酸素と抗酸化物質の関係から運動のメリット・デメリットを勉強します。

抗酸化物質とは?─活性酸素と戦う味方

私たちは呼吸によって酸素を体に取り入れていますが、その一部は「活性酸素」と呼ばれる反応性の高い物質に変化します。

活性酸素(スーパーオキシド、ヒドロキシラジカルなど)は、強い酸化作用でDNAや脂質、タンパク質を傷つけ、老化やがんの引き金になると考えられています。

こうした酸化ストレスを抑える役割を担うのが抗酸化物質です。

代表的な抗酸化物質は次の通りです。

・ビタミンC
 水溶性で、細胞外液に存在し活性酸素を除去。

・ビタミンE
 脂溶性で、細胞膜内の脂質過酸化を抑える。

・ポリフェノール類(アントシアニン、カテキンなど)
 植物に多く含まれ、酸化ダメージを減らす。

さらに、ビタミンCとEは連携して働くのが特徴です。ビタミンEは酸化されて「ビタミンEラジカル」になりますが、これをビタミンCが還元して再生させることで、抗酸化サイクルを繰り返し維持できます。

動脈硬化・がん・認知症─抗酸化物質が注目される理由

抗酸化物質は「健康長寿」に直結する病気の発症を抑える可能性があるとされています。

動脈硬化と酸化LDL
血管の老化の大きな原因がLDLコレステロールの酸化です。
・LDLが血管内膜に入り込む
・活性酸素によって酸化LDLに変化
・マクロファージに取り込まれ泡沫細胞化
・動脈壁にプラークが形成される

こうして血管が狭くなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。抗酸化物質はこの過程を抑制すると期待されています。

認知症との関連
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβの蓄積や酸化ストレスが進行に関与します。

・フェルラ酸(玄米に多い)は、アミロイドβの蓄積を抑える作用がマウス研究で報告されています。
・ブルーベリーなどのベリー類に含まれるポリフェノールも、神経保護作用が示唆されています。

ただし、これらの効果は「食品から少し摂れば十分」というわけではなく、ヒトに有効なレベルの摂取は相当量が必要であるとも言われています。

がん予防と抗酸化物質
ビタミンCには、胃の中で発がん物質ニトロソアミンが生成されるのを抑える作用があります。
実際、ハムやソーセージなど加工肉には、亜硝酸塩と一緒にビタミンCが酸化防止剤として添加されている場合が多いのは、このためです。

酸素は善か悪か?高圧酸素療法の落とし穴

「酸素を多く吸えば健康になる」というイメージがありますが、実は酸素の取り込み過多が活性酸素の増加を招くことも事実です。

高圧酸素カプセルは外傷回復などの医療用途では有用ですが、健康目的で常用する場合は注意が必要です。
日常生活では過剰な酸素摂取=体に良いとは限らず、むしろ酸化ストレスが高まるリスクもあるのです。

運動は体に悪い?─活性酸素の視点から考える

運動も同様に「善玉」と「悪玉」の両面があります。

激しい運動をすると呼吸量が増え、酸素が大量に消費される結果、活性酸素が一時的に増加します。
これが「運動は体に悪い」と言われる一因です。

しかし一方で、定期的な運動を続けることで、活性酸素を処理する酵素(SOD、カタラーゼなど)が増え、体の防御力が高まることも分かっています。

適度な有酸素運動は、むしろ抗酸化システムの活性化に貢献するのです。

有酸素運動と脂肪燃焼

運動のエネルギー源は、糖質と脂質が混在して利用されます。

「運動開始20分までは糖質だけが使われる」という説が有名ですが、これは誤解で、運動直後から脂肪もエネルギーとして消費されています。

・短時間の運動でも脂肪は燃える
・長時間の運動ほど脂肪の割合が増える

つまり「20分以上やらないと意味がない」と考える必要はなく、10分でも積み重ねる価値があります。

ジョギング・筋トレは危険なのか?

ジョギングや筋トレは、過度に行うと健康を損ねる可能性も指摘されています。

ジョギングのリスク
・呼吸が浅く早くなり、交感神経が優位に
・心拍数・血圧の上昇で心臓に負担
・膝やアキレス腱への衝撃

特に高血圧や動脈硬化が進んでいる中高年では、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がるため、注意が必要です。

しかし、ゆっくりと会話ができるペースのジョギング(週3回15分程度)なら、心肺機能やメンタルヘルスに効果的であると、多くの専門家が推奨しています。

筋トレのリスク

筋トレは短時間でも血圧が急上昇します。
特に重いウェイトを持ち上げるときに息を止める「バルサルバ法」によって、心臓や脳の血管に負担がかかるのです。

高血圧や動脈硬化が進行している場合、筋トレが引き金で脳出血・心筋梗塞を起こすリスクもあります。

「筋トレが絶対にダメ」というわけではなく、負荷や方法を慎重に選ぶことが大切です。

運動するなら─体に優しい方法

「運動は危険だから何もしない」というのは極端です。
現実的には、下記のような運動が体への負担を減らしつつ健康効果を得られます。

・ウォーキング
 ゆっくり歩き、深呼吸を意識する。

・ヨガ・気功・太極拳
 腹式呼吸を取り入れ、自律神経を整える。

・軽いストレッチ
 筋肉の柔軟性を保ち、怪我を防ぐ。

特に副交感神経を活発化させる「吐く呼吸」を意識すると、自律神経のバランスが改善され、免疫力の維持にもつながります。

結論:「バランス」が鍵

・抗酸化物質は活性酸素のダメージを抑える重要な防御因子。
・運動は適切に行えば、抗酸化システムを高める。
・過剰な運動・極端な酸素摂取は逆効果。

「何事もほどほどに」「無理のない範囲で継続する」ことが、健康と長寿の最大の秘訣です。

まずは、毎日の食事で野菜や果物から抗酸化物質を取り入れ、ウォーキングやストレッチを生活に取り入れることから始めてみましょう。

そうした小さな積み重ねが、活性酸素に負けない体を作り、長生きへとつながっていくはずです。

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