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ブリィビアクトとイーケプラの違いは?ラセタム系抗てんかん薬
公開. 更新. 投稿者:てんかん.この記事は約2分59秒で読めます.
5,330 ビュー. カテゴリ:ラセタム系抗てんかん発作薬
抗てんかん薬の中には、「ラセタム系」と呼ばれる薬剤群があります。あまり一般的な分類名ではありませんが、「~ラセタム」という名前をもつ薬剤がいくつか存在します。
主なラセタム系薬剤は次の3つです。
商品名 | 一般名 | 剤形・規格 | 適応症 |
---|---|---|---|
イーケプラ | レベチラセタム | ドライシロップ(50%)、錠(250mg、500mg) | てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む) 他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法 |
ブリィビアクト | ブリバラセタム | 錠(25mg、50mg) | てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む) |
ミオカーム | ピラセタム | 内服液(33.3%) | 皮質性ミオクローヌスに対する抗てんかん剤などとの併用療法 |
これらは化学構造的に共通点があり、ピロリドン誘導体に分類されます。構造式は類似していますが、作用機序や臨床使用における特徴は異なります。
ピラセタムの構造式

レベチラセタムの構造式

ブリーバラセタムの構造式

作用機序の違い
レベチラセタム(イーケプラ)とブリーバラセタム(ブリィビアクト)は、いずれもシナプス小胞タンパク2A(SV2A)に結合することで、抗てんかん作用を発揮します。SV2Aは、神経終末に存在し、神経伝達物質の放出に関与しています。
ただし、ブリィビアクトのほうがSV2Aへの結合親和性が高く、より選択的であることが知られています。このため、ブリィビアクトはレベチラセタムに比べて作用の予測性が高く、副作用も抑えられる可能性があります。
一方、レベチラセタムはSV2A以外にもカルシウムイオンチャネルやAMPA受容体にも影響を与えるとされており、複合的な作用を持ちます。ただし、作用点が広い分、副作用も多様になる可能性があるという見方もあります。
ブリィビアクトのインタビューフォームには以下のようなイメージ図が書かれている。

レベチラセタムはカルシウムイオンチャネルやAMPA受容体にも作用している。
ピラセタム(ミオカーム)については、作用機序が明確には解明されておらず、現在ではあまり一般的には使われていません。適応も限られており、主に難治性の皮質性ミオクローヌスに対して他剤と併用されます。
適応と使い分けのポイント
イーケプラとブリィビアクトは、どちらも部分発作に対して単剤・併用療法のいずれも適応があります。
加えて、イーケプラは強直間代発作にも適応があり、ドライシロップ製剤もあるため、小児にも使いやすい薬剤です。
一方、ブリィビアクトは現時点で部分発作のみが適応ですが、SV2A選択性が高く、レベチラセタムで副作用が強かった患者に切り替えるケースもあります。臨床現場では「イーケプラでイライラ感や攻撃性が出た患者にブリィビアクトを試す」といった使い方がされています。
発売からの期間もあり、イーケプラはすでに多くの臨床データが蓄積されていますが、ブリィビアクトも今後徐々に処方機会が増えると予想されます。
どちらの薬剤も長期使用を前提とする抗てんかん薬であり、患者ごとの副作用や体感の違いを見ながら選択することが重要です。