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ADHDは子どもだけの病気?ストラテラ・コンサータの成人適応
公開. 更新. 投稿者:小児/先天性疾患.この記事は約3分38秒で読めます.
294 ビュー. カテゴリ:ADHDは子供の病気?

「発達障害は子どもの問題」――そう考えている人は少なくありません。
しかし実際には、大人になっても社会生活で生きづらさを抱え続けているADHD当事者は多く存在します。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の代表的な治療薬であるストラテラ(アトモキセチン)やコンサータ(メチルフェニデート)には、現在成人への適応も認められています。
薬剤師として、これらの背景や実際の対応、患者への説明のポイントを押さえておくことは重要です。
ADHDは、集中力が続かない、不注意、衝動性、多動といった症状を特徴とする発達障害の一つです。かつては小児期特有の問題とされていましたが、成人期にも持続するケースが多数あることが知られてきました。
実際、「怠けている」「自己管理ができない」といった社会的な誤解の中で苦しみ続ける成人のADHD患者は少なくなく、「診断を受けて初めて生きづらさの正体がわかった」という声も多いのが実情です。
成人ADHDに対する治療薬の適応
薬剤名 | 主成分 | 成人への適応取得年 | 特記事項 |
---|---|---|---|
ストラテラ | アトモキセチン塩酸塩 | 2012年 | 非中枢刺激薬、登録制なし |
コンサータ | メチルフェニデート塩酸塩 | 2013年(本格成人適応) | 中枢刺激薬、登録医・登録薬局制度あり |
コンサータは薬物依存のリスクを考慮して流通が厳しく管理されており、登録医師・登録薬局でのみ処方・調剤可能です。薬剤師も「コンサータ管理システム」への対応が必要です。
ストラテラは添付文書上「6歳未満の患者における有効性及び安全性は確立されていない」と明記されています。
一方、臨床現場では5歳未満での処方事例も少数ながら存在しており、医師の裁量によって使用されるケースもあります。
ただし、成長抑制(体重増加の抑制や身長の伸びの鈍化)といった小児特有の副作用が懸念されるため、薬剤師としても家族に適切な情報提供を行う必要があります。
「授業に集中できない」「いつも忘れ物をする」――こうした子どもはよく見かけますが、それがしつけの問題なのか、発達特性なのかの判断は難しいものです。
さらに大人になると、そうした特性が「怠惰」「社会不適応」とみなされがちです。
特に以下のようなケースでは、本人も周囲もADHDの可能性を疑わないことが多いため、医療につながらず、支援も遅れがちです。
・社会人として働きながらも仕事のミスが多く評価が低い
・約束を忘れる、遅刻が多い
・衝動的な言動が原因で人間関係がうまくいかない
のび太=不注意優勢型
ジャイアン=多動・衝動優勢型
といったたとえ話を用いた本も出版されているように、ADHDは「社会性」だけで評価するには不公平な側面を持ちます。
モーツァルト、アインシュタイン、坂本龍馬などもADHDの特徴を持っていたのでは?とする説もあるように、一見「問題」とされる行動の裏に、独自の創造性や実行力が潜んでいることもあるのです。
薬剤師としての視点:処方薬だけが支援ではない
ストラテラやコンサータといった薬物療法は、ADHD支援の一つの柱ですが、それだけで全てが解決するわけではありません。
・服薬のタイミングが守れない
・副作用で中断してしまう
・社会的偏見から処方を受けたがらない
こうしたケースでは、薬剤師として療育や心理的支援、生活指導との併用を提案することが大切です。
ADHDは、子どもだけの問題ではありません。
大人になってから気づくADHDも少なくなく、適切な診断と支援によって生活の質が大きく変わることがあります。
薬剤師としては、処方薬の適応や管理だけでなく、患者の「気づき」や「きっかけ」を支える立場として関与できることも多くあります。
「落ち着きがないのは性格だから…」で終わらせず、「それってもしかしたら?」と一歩踏み込むことが、患者さんの未来を変えることにつながるかもしれません。