2025年7月6日更新.2,509記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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PTP包装とSP包装の違いは?

PTP包装とSP包装の違いとは?

薬局や病院で薬をもらったとき、錠剤やカプセルがプラスチックのシートに入っているのを見たことがあると思います。このシート状の包装にはいくつか種類がありますが、特に「PTP包装」と「SP包装」という用語は現場でも頻繁に登場します。

「名前は聞いたことがあるけど、どう違うの?」
「どっちが湿気に強いの?」
「一包化するとき、ヒートとかシートとか呼び方が混乱する…」

そんな疑問について勉強していきます。

そもそも薬の包装にはどんな役割がある?

薬の包装は、単に見た目を整えるだけではありません。
主に以下のような目的を持っています。

・湿気・光・酸素から薬を守る
・輸送や保管時に物理的な衝撃から保護する
・誤飲・誤用を防ぐ
・服薬管理をしやすくする

特に湿気や光に敏感な成分は包装の影響を強く受けるため、どの包装形態を採用するかは医薬品の安定性に直結します。

PTP包装とは?

PTP(Press Through Package)包装の基本
PTP包装は、錠剤やカプセルをプラスチックとアルミ箔で挟んで密封し、上から押し出して取り出すタイプの包装です。日本で最も普及しており、薬局で「シート」といえばほぼPTP包装を指します。

特徴:
・取り出しやすい(押し出すだけ)
・湿気から一定程度保護できる
・光を遮断できる(アルミ箔部分)

構造:
・表面:透明なプラスチック(PVC、PP、PVDCなど)
・裏面:アルミ箔
・押すとアルミ箔が破れ、中の薬が出ます。

PTP包装の利点と注意点
メリット:
・取り扱いやすい
・湿気・汚染から保護
・錠剤1つずつを個別包装できる
デメリット:
・高齢者が取り出しにくい(「誤飲防止工夫型PTP」も増えています)
・強い湿気や熱には完全ではない
・破れたときの再密封はできない

SP包装とは?

SP(Strip Package)包装の基本
一方でSP包装は、「ストリップ包装」とも呼ばれ、アルミ箔やセロファン、ポリエチレンなどのラミネートフィルムで作られた袋状の包装です。

特徴:
・中の薬を完全に密閉
・湿気・光に非常に強い
・押し出すのではなく「切って開ける」「破いて開ける」

具体的には:
・錠剤・カプセル・散剤・顆粒剤など幅広く対応
・湿気に極めて弱い薬や光分解しやすい薬に用いられる

SP包装の例
代表的な製品では、
・バファリン(湿気や光から守るためSP包装が使われる)
・クラリチンレディタブ
・ゾーミッグRM
・クレストール

などがあります。
これらはヒートシール型と呼ばれる密封方式で、ラミネートを加熱圧着して完全密封します。

PTP包装とSP包装の違いを比較

項目PTP包装SP包装
取り出し方押し出す破る・切る
密封性高いが完璧ではない非常に高い
湿気への耐性中程度極めて高い
光への耐性高い非常に高い
用途一般的な錠剤・カプセル湿気や光に弱い薬、散剤、顆粒剤

「ヒート」「シート」どっちが正しい?

調剤現場では「ヒート」「シート」という表現が混同されやすいです。

・シート(sheet):単にシート状の包装(PTP、SP問わず)
・ヒート:「ヒートシール(heat seal)」の略で、加熱圧着で密封する工程を指す

一包化の説明や薬歴記載で「ヒートのまま調剤」「シートのまま調剤」と言いますが、厳密にはどちらも「シート」。
「ヒート」という言い方は、日本独自の略語です。
外国の薬剤師や製薬関係者に説明すると通じないことが多いので注意しましょう。

「ブリスター包装」とは?

「ブリスター包装」という用語も耳にします。
実はこれはPTP包装の別称で、プラスチックがブリスター(膨らんだ空洞)状に成型されている形から来ています。

つまり、

・PTP包装 = ブリスター包装
・SP包装はブリスターとは呼ばない

と覚えると整理しやすいです。

湿気に弱い薬はどっち?

薬の包装は、成分の安定性に応じて決められています。

湿気に弱い薬→基本的にSP包装(または高遮断性PTP)

・例:OD錠(口腔内崩壊錠)、分散錠、レディタブ

湿気にそこまで弱くない薬→通常のPTP包装

よくある質問Q&A

Q1. 薬のシートを切って保管してもいい?
A. 基本的に切り離しても問題ないですが、湿気が侵入するリスクがあります。必要最小限にし、早めに服用しましょう。

Q2. 薬のシートが破れたらどうする?
A. 密封性が失われるため、そのまま放置は避けます。薬局に相談するか、乾燥した清潔な容器に移すなど対処が必要です。

Q3. 高齢者やお子さんが取り出しにくい場合は?
A. 最近は「誤飲防止工夫型PTP」や「取り出しやすいシート」が普及しています。薬局で相談すると対応してもらえます。

まとめ

・PTP包装は押し出して取り出す一般的な包装
・SP包装はラミネートフィルムで密封し、湿気・光に強い
・呼び方は「シート」でOK、ヒートはヒートシールの略
・湿気に弱い薬や特殊な剤形にはSP包装が多い

薬の包装は見た目以上に大事な役割を担っています。
一包化や薬歴記載の際も、用語や包装形態を正しく理解しておくとスムーズです。

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