2025年6月1日更新.2,484記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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病名の別名・方言・昔の呼び名まとめ

さまざまな病名

医療用語として標準化された病名にも、地域や時代によってさまざまな別名・俗称・方言が存在します。特に高齢者との会話の中では、これらの表現が出てくることがあり、薬剤師や医療従事者として意味を理解しておくことが求められます。患者さんが訴える症状や病名が、必ずしも医学的な標準用語で語られるとは限らず、「昔からそう呼んでいた」「祖母がそう言っていた」など、地域文化や生活習慣が色濃く反映された呼称が用いられる場面も少なくありません。

こうした病名の方言や別名は、単なる言葉の違いにとどまらず、その土地ごとの医療の伝承や、病気に対する人々の理解の仕方を映し出す鏡とも言えます。病名に込められたイメージや感情、迷信や言い伝えなども含めて知っておくことは、患者さんとの信頼関係構築にも役立ちます。

以下に、代表的な病名の別名や方言を紹介します。

皮膚疾患の別名

病名別名・方言解説
白斑白なまず(しろなまず)色素が抜けて白くなる皮膚の様子が、白い魚のようだとして。
癜風(でんぷう)黒なまず(くろなまず)色素沈着を伴うため、白なまずとの対比で呼ばれる。
帯状疱疹つづらご古くは「葛籠(つづら)」に例えられる形状から。治らないと死ぬ、という迷信もあり。
蜂窩織炎ひきつけ(地域により)赤く腫れて熱を持つ様子が、筋肉のけいれんに似ているとして。
尋常性ざ瘡にきび、ふきでもの年代や地域で表現が変わる。顔に出る湿疹一般を含むことも。
疣贅(いぼ)いぼ、まめ、できもん方言として「まめ」なども。魚の目との混同もある。

東北地方では帯状疱疹のことを、つづらごと言います。

東北・北関東地方では「つづらご」「はくじゃ」
南関東では「ひっつらご」
中部地方では「つづらご」「おびくさ」
関西地方では「胴まき」「たすき」「おび」
中国四国地方では「胴まき」「けさ」「けさがけ」「けさよう」
九州地方では「胴巻き」「たづ」「へびたん」「たん」

感染症の別名

病名別名・方言解説
流行性耳下腺炎おたふくかぜおたふく(阿多福)のお面のように頬が腫れることから。
麻疹はしか古くから使われてきた和語。全国的に通じる。
風疹三日はしか発熱・発疹が比較的軽く、3日程度で治るとされる。
百日咳しわぶき古語で咳(せき)を意味する「しわぶき」から。
インフルエンザはやり風邪、猛かぜ地域により表現が異なる。重症感を表すものが多い。

精神神経疾患の別名

病名別名・方言解説
てんかんひきつけ、ひきわり発作の症状を表す古語や方言。
認知症ぼけ、もうろく、痴呆(旧名)現在は使用を控えるべき表現だが、日常会話には残ることが多い。2004年に旧名から名称変更された。
統合失調症精神分裂病(旧名)2002年に名称変更されたが、高齢者には旧名で通じることもある。

その他の疾患の別名

病名別名・方言解説
脳卒中たちまち病、倒れ病突然倒れることからこのように呼ばれる。
脳出血ぶちやぶれ病血管が破れて出血するイメージからの俗称。
心筋梗塞胸つぶれ、胸つきあげ胸痛を訴える様子から。
痛風風が吹いても痛い病非常に鋭い痛みを表す比喩。

病名の呼び方には、時代背景や文化、生活の知恵が反映されています。薬剤師や医療従事者がこれらの表現に触れた際には、適切に理解しつつ、現代の正しい医学用語に置き換えて説明する姿勢が大切です。特に高齢者との服薬指導や問診では、標準語だけでは通じないこともあり、方言や昔の言い回しを理解しているだけで、信頼感がぐっと高まることもあります。

医療用語を患者に噛み砕いて説明することは日常的に行われていますが、同時に患者が使う表現から病態を汲み取る力も、現場では必要です。言葉の背景にある歴史や文化への理解を持つことが、薬剤師としての幅を広げる第一歩になるでしょう。

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