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余った薬を返したい?
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約5分20秒で読めます.
4,986 ビュー. カテゴリ:余った薬を薬局で処分していい?
「余った薬がたくさんあるから、薬局で処分してもらいたい。」
こういう訴えに応じたことは無いだろうか?
「薬局で処分しておきます。」
と軽々しく応じた薬の中に、エフピー錠が。。。
覚せい剤原料の処分
覚せい剤原料の譲受、譲渡に関しては法律で厳しく規定されており、一般人である患者が薬局に譲渡することは違法となります。
Q433. 患者又は患者の遺族等が、病院、診療所、薬局に、不要となった医薬品で ある覚せい剤原料を持参したときは、どのように対応したらよいですか。
患者等が、不要となった医薬品である覚せい剤原料を持参した場合には、 持参者に自ら廃棄するよう指導してください。 病院等が、患者等から医薬品である覚せい剤原料を譲り受けることはできませんが、持参した者の依頼により廃棄を補助することは差し支えありません。
麻薬等関係質疑応答集
エフピー錠は患者自身で廃棄してもらうよう説得しましょう。
麻薬の処分
麻薬については、麻薬及び向精神薬取締法の第24条に以下のように書かれている。
第二十四条 麻薬営業者でなければ、麻薬を譲り渡してはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 麻薬診療施設の開設者が、施用のため交付される麻薬を譲り渡す場合
二 麻薬施用者から施用のため麻薬の交付を受け、又は麻薬小売業者から麻薬処方せんにより調剤された麻薬を譲り受けた者が、その麻薬を施用する必要がなくなつた場合において、その麻薬を麻薬診療施設の開設者又は麻薬小売業者に譲り渡すとき。
三 麻薬施用者から施用のため麻薬の交付を受け、又は麻薬小売業者から麻薬処方せんにより調剤された麻薬を譲り受けた者が死亡した場合において、その相続人又は相続人に代わつて相続財産を管理する者が、現に所有し、又は管理する麻薬を麻薬診療施設の開設者又は麻薬小売業者に譲り渡すとき。
二、三に書かれている通り、使わなくなった麻薬を薬局に譲渡することが可能である。
調剤済麻薬廃棄届を用いて、廃棄を行う。
麻薬の交付を受けた患者、又は患者の家族から不要になった麻薬を譲り受けた場合、譲り 受けた麻薬をその都度、若しくはある程度まとまった段階で、管理薬剤師が他の従事者の立ち会いの下で廃棄し、廃棄後 30 日以内に「調剤済麻薬廃棄届」を都道府県知事に提出してください。(法第 24 条第 1 項・第 35 条第2項)
薬局における麻薬管理マニュアル
向精神薬の処分
向精神薬の返却については、厚労省の手引きに以下のように書かれている。
第3 譲受け(法第50条の16・麻薬及び向精神薬取締法施行規則(以下「施行規則」という。) 第36条)
薬局における向精神薬取扱いの手引
(1) 向精神薬は、向精神薬輸入業者、向精神薬製造製剤業者、向精神薬卸売業者(注)から譲り受けることができます。
(注) 薬局開設者と同様に、医薬品の卸売販売業の許可を受けた者も向精神薬卸売業者の免許を受けた者とみなされます(法第50条の26)。
(2) (1)の他、次の場合も向精神薬を譲り受けることができます。
① 患者に交付された向精神薬の返却を受ける場合
② 病院・診療所・飼育動物診療施設の開設者、向精神薬試験研究施設の設置者、向精神薬小売業者、向精神薬使用業者に譲り渡した向精神薬の返品を受ける場合(向精神薬卸売業者として行う場合に限る。)
③ 災害時に使用するために備蓄する目的で地方公共団体の長に譲り渡した向精神薬の返品を受ける場合(向精神薬卸売業者として行う場合に限る。)
④ 向精神薬取扱者が向精神薬取扱者でなくなった場合に、当該向精神薬取扱者からその所有する向精神薬を50日以内に譲り受ける場合
医薬品の処分
ここまで、色々と規制されている「覚せい剤原料」「麻薬」「向精神薬」についてみてきたが、一般的な医薬品は他者への譲渡は禁止されていないのだろうか?
家族にモーラステープを譲り渡すことは法律違反にならないのか?
薬事法、じゃなくて、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第24条に以下のように書かれている。
第二四条 薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ。)してはならない。ただし、医薬品の製造販売業者がその製造等をし、又は輸入した医薬品を薬局開設者又は医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者に、医薬品の製造業者がその製造した医薬品を医薬品の製造販売業者又は製造業者に、それぞれ販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列するときは、この限りでない。
「業として」というのは、事業として。
最近はネットオークションという販売手段もあり、事業かどうかの線引きは難しいかも知れませんが、
「業」とは、ある者の同種の行為の反覆的継続的遂行が、社会通念上事業の遂行とみることが できる程度のものである場合をいいます。
行為自体は一回限りとみられるものであっても、 相当多数が行われる場合には、個々の使用行為が反覆継続するものとして、業に相当します。
なお、営利の要素は必要でなく、無償の行為であっても該当すると解されます。
薬局に返却して廃棄してもらうことは問題ない。
家族間で医薬品のやり取りをすることは違法と解釈される恐れもある。
医薬品の返品に応じる必要はない
薬剤師法第23条に明記されているように、薬剤師による調剤と投薬は、処方箋に基づいて行わなければなりません。
また、健康保険法第63条では、被保険者の疾病または負傷に関する「療養の給付」について定めていますが、ここに「薬剤または治療剤料の支給」とあります。つまり、薬剤の給付(交付)は、治療を目的に、医師からの指示書である処方箋に基づいて行われるものです。
そもそも、医療機関を受診した時点で、患者は治療に同意し、患者と医療機関(医師)との間で契約が成立したことになります。
薬局薬剤師は、治療の一部である薬物治療の一端を担っているという位置付けです。
処方箋にのっとって調剤された薬剤の返品は、すなわち、患者が医療機関との契約を破棄することを意味します。
薬局が返品を受け入れることは、患者と医療機関との契約を侵害し、医師法に反する行為とみなすこともできます。
例えば衣服などの購入時と同様に、薬剤も「返品できる」と考える人がいるかも知れませんが、実はこうした衣服であっても事前に定めていない限り、基本的に引き取り義務はありません。
まして、健康保険制度下で行われる薬物治療は、治療に同意した患者に対し、最終的には医師の判断に基づいて行われるものです。
一度同意した治療を、患者の意志で自由に中止することはできないと理解してもらう必要があります。
なお、患者が薬を飲まない、飲めない理由は様々だと思いますが、例えば「カプセルは飲めないのでやめてほしい」「大きな錠剤は飲み込めない」といった事情があるならば、それらの情報は事前に処方医に伝える必要があります、
また、処方箋が発行された後でも、薬局で患者が薬剤師に伝えれば、その時点で薬剤師が医師に疑義照会して、薬の変更を提案することは可能であり、その行為は薬剤師法でも薬剤師の義務として定められています。
薬剤師が服薬状況や残薬などをしっかりと確認し、それでも患者が情報を提供しなかった場合、調剤し患者に引き渡した後の薬剤の返品に応じる義務は薬剤師・薬局にはありません。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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