2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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睡眠薬を海外に持って行っちゃダメ?

アメリカの禁止薬物

商品名サイレース、ロヒプノール(一般名フルニトラゼパム)という睡眠薬はアメリカへの持ち込みが禁止されています。

フルニトラゼパムはアルコールとの併用で比較的高い確率で健忘を引き起こすことがあるため、アメリカ、イギリスなどで悪用されていました。
被害者が健忘によって、薬を飲まされた間やその前後に起こった出来事を覚えていないことが多く、加害者が特定されにくかったためです。

また、ヘロインやコカインとの併用で効果を高めたり変調することや、メタンフェタミン,アンフェタミンといった覚せい剤の使用によって起こる不眠などの副作用に対抗するために乱用されました。このため、乱用が深刻となったアメリカではフルニトラゼパムは禁止薬物に指定されています。

海外旅行と睡眠薬

日本で処方されている薬の中には、外国で持ち込みが禁止されている薬があります。

睡眠薬のサイレース(ロヒプノール)はその一つです。

サイレースを持って入国したとしても、逮捕はされませんが、入国審査で発見されると没収されることがあります。

海外旅行に持って行けない薬

風邪薬、頭痛薬や下痢止めなど、常備薬を個人用に持参することは,通常、問題はありません。

しかし、国によっては持ち込めない薬もあるので注意が必要です。(米国:フルニトラゼパム)

米国の規制

米国政府は、催眠作用が強く悪用される可能性があるとして、以前からフルニトラゼパム製剤の製造と販売を認めていなかったが同薬がメキシコなどの近隣諸国から密輸され、婦女暴行などの犯罪に使用されるようになり、大きな社会問題になった。

米国麻薬収締局は、1996年に同薬を合成麻薬のLSDやヘロインなどと同じ厳しい管理基準下に置き、同年5月以降は、米国内への持ち込みを一切禁止した。

海外旅行にインスリン注射を持っていっていい?

旅行先への自己注射薬の持込みが可能かどうかは、旅行先の大使館の税関部に問い合わせます。

また旅行先での届出は、入国審査の際に申告します。

飛行機に乗るとインスリンが凍る?

飛行機でインスリンが凍るという話。
飛行機ってそんなに寒かったっけ?
あまり乗ったことが無いからわからない。

と思ったら、貨物室の話らしい。
飛行機の貨物室は温度が0℃以下になるなど、温度変化が激しいです。
そのため、インスリン注射は手荷物として機内に持ち込むようにします。

向精神薬を海外旅行に持っていってはダメ?

アモバン(ゾピクロン)とデパス(エチゾラム)が2016年10月から向精神薬に指定されるようだ。
ソピクロンについてはラセミ体であるアモバンだけが対象となっており、S体のルネスタは対象外とのこと。
リスミーも対象外。処方量から判断されたのだろうか?

おそらく、デパスやアモバンも他の同程度の睡眠薬と同じように30日の処方制限が設けられると思われる。
そうなると今後ルネスタやリスミーに処方が集まるのだろうか?

「麻薬及び向精神薬取締法施行規則の一部を改正する省令」の案には、携帯して輸出入できる数量として、ゾピクロンは300mg、エチゾラムは90mgと提示されている。
アモバン7.5mgが40錠、デパス0.5mgが180錠。
正直、この海外旅行に持って行ってはいけない薬の量というのを知らなかった。
日本の規制もあるが、相手国の規制もあるので注意が必要。

携帯輸出入にあたり証明書類の携帯が必要な向精神薬の量について/近畿厚生局

一般名分量商品名・規格
第1種向精神薬ジペプロール9g
セコバルビタール6g
フェネチリン3g
フェンメトラジン2.25g
メクロカロン9g
メチルフェニデート2.16gコンサータ錠18mg/コンサータ錠27mg/コンサータ錠36mg/リタリン錠10mg/リタリン散1%
モダフィニル6gモディオダール錠100mg
第2種向精神薬アモバルビタール9gイソミタール原末
カチン1.5g
グルテチミド15g
シクロバルビタール6.75g
ブタルビタール4.5g
ブプレノルフィン80mgノルスパンテープ5mg/ノルスパンテープ10mg/ノルスパンテープ20mg/レペタン坐剤0.2mg/レペタン坐剤0.4mg
フルニトラゼパム60mgサイレース錠1mg/サイレース錠2mg/ロヒプノール錠1/ロヒプノール錠2
ペンタゾシン18gソセゴン錠25mg/ペンタジン錠25/ペルタゾン錠25
ペントバルビタール4.5gラボナ錠50mg
第3種向精神薬アミノレクス300mg
アルプラゾラム72mgコンスタン0.4mg錠/コンスタン0.8mg錠/ソラナックス0.4mg錠/ソラナックス0.8mg錠
アロバルビタール3g
アンフェプラモン2.25g
エスクロルビノール22.5g
エスタゾラム120mgユーロジン1mg錠/ユーロジン2mg錠/ユーロジン散1%
エチナメート30g
エチランフェタミン1.8g
オキサゼパム2.7g
オキサゾラム1.8gセレナール錠5/セレナール錠10/セレナール散10%
カマゼパム1.8g
クアゼパム900mgドラール錠15/ドラール錠20
クロキサゾラム360mgセパゾン錠1/セパゾン錠2/セパゾン散1%
クロチアゼパム900mgリーゼ錠5mg/リーゼ錠10mg/リーゼ顆粒10%
クロナゼパム180mgランドセン錠0.5mg/ランドセン錠1mg/ランドセン錠2mg/ランドセン細粒0.1%/ランドセン細粒0.5%/リボトリール錠0.5mg/ リボトリール錠1mg/ リボトリール錠2mg/ リボトリール細粒0.1%/ リボトリール細粒0.5%
クロバザム2.4gマイスタン錠5mg/マイスタン錠10mg/マイスタン細粒1%
クロラゼプ酸900mgメンドンカプセル7.5mg
クロルジアゼポキシド1.8g5mgコントール錠/10mgコントール錠/コントール散1%/コントール散10%/バランス散10%/バランス錠5mg/バランス錠10mg
ケタゾラム1.8g
ジアゼパム1.2g2mgセルシン錠/5mgセルシン錠/10mgセルシン錠/セルシン散1%/セルシンシロップ0.1%/ダイアップ坐剤4/ダイアップ坐剤6/ダイアップ坐剤10
セクブタバルビタール3.6g
ゾルピデム300mgマイスリー錠5mg/マイスリー錠10mg
テトラゼパム12g
テマゼパム900mg
デロラゼパム180mg
トリアゾラム15mgハルシオン0.125mg錠/ハルシオン0.25mg錠
ニトラゼパム450mgサイレース錠1mg/サイレース錠2mg
ニメタゼパム150mgエリミン錠3mg/エリミン錠5mg
ノルダゼパム450mg
ハラゼパム4.8g
バルビタール18g
ハロキサゾラム300mgソメリン細粒1%/ソメリン錠5mg/ソメリン錠10mg
ピナゼパム600mg
ビニルビタール4.5g
ピプラドロール180mg
ピロバレロン2.4g
フェノバルビタール6gフェノバール原末/ フェノバール散10%/ フェノバール錠30mg/ フェノバールエリキシル0.4%/ワコビタール坐剤15/ ワコビタール坐剤30/ ワコビタール坐剤50/ ワコビタール坐剤100
フェンカンファミン1.8g
フェンジメトラジン3.15g
フェンテルミン1.125g
フェンプロポレクス360mg
ブトバルビタール6g
プラゼパム600mgレスタス錠2mg
フルジアゼパム22.5mgエリスパン錠0.25mg/エリスパン細粒0.1%
フルラゼパム900mgダルメートカプセル15
ブロチゾラム15mgレンドルミンD錠0.25mg/レンドルミン錠0.25mg
プロピルヘキセドリン2.25g
ブロマゼパム450mgセニラン坐剤3mg/セニラン錠1mg/セニラン錠2mg/セニラン錠3mg/セニラン錠5mg/セニラン細粒1%/レキソタン錠1/ レキソタン錠2/ レキソタン錠5/ レキソタン細粒1%
ペモリン6gベタナミン錠10mg/ベタナミン錠25mg/ベタナミン錠50mg
ベンツフェタミン1.5g
マジンドール90mgサノレックス錠0.5mg
ミダゾラム450mg
メソカルブ900mg
メダゼパム900mgレスミット錠2/レスミット錠5
メチプリロン12g
メチルフェノバルビタール12g
メフェノレクス1.41g
メプロバメート18g
レフェタミン3g
ロフラゼプ酸エチル60mgメイラックス細粒1%/メイラックス錠1mg/メイラックス錠2mg
ロプラゾラム60mg
ロラゼパム90mgワイパックス錠0.5/ワイパックス錠1.0
ロルメタゼパム60mgエバミール錠1.0/ロラメット錠1.0

かなり緩めの分量設定になっているので、これ以上の分量の薬を旅行で持っていくことはほぼ無いだろう。

「携帯する向精神薬(注射剤を除く)の量が下表に示す量を超える場合には、処方せんの写し又は医師の証明書等の証明書類を出入国の際に携帯することが必要です。」
とのことなので、処方せんのコピーさえ持っていれば、長期の海外旅行などに持参することは可能。
とは言っても、トリアゾラムで15mg以上ということは、ハルシオン0.25mg60錠ということなので、それ以上海外旅行に持参しようとするということは、それ以上の処方日数が書かれた処方せんのコピーが必要ということになる。無理。

エフピーを海外旅行に持って行っちゃダメ?

エフピーのような覚醒剤原料は、覚醒剤取締法第13条の「何人も、覚醒剤を輸入し、又は輸出してはならない。」によって、海外旅行には持っていけないものだと思っていた。

しかし令和2年4月の覚醒剤取締法改正に伴い、自己の疾病の治療目的で携帯して出入国することが可能になった。

覚醒剤取締法第30条の6のただし書き「ただし、本邦に入国する者が、厚生労働大臣の許可を受けて、自己の疾病の治療の目的で携帯して医薬品である覚醒剤原料を輸入する場合は、この限りでない。」「ただし、本邦から出国する者が、厚生労働大臣の許可を受けて、自己の疾病の治療の目的で携帯して医薬品である覚醒剤原料を輸出する場合は、この限りでない。」の部分ですね。

「この薬海外旅行に持っていけますか?」という相談を受けたことがないが、国内法だけでなく渡航先の国の法律も絡んでくるので、航空会社に確認を取ってもらうのがベストだろう。アメリカなどは州によっても法律が異なる。

海外旅行に持っていく際には、必要な手続きがあるので注意する。

海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

知らずに麻薬を持ち込んで死刑になる国とか、あるかも知れない。

錠剤であれば何の薬か判断しやすいが、粉薬だと「怪しいもの?」と疑われ入国審査で時間を取られる可能性もあるので注意する。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

2 件のコメント

  • きくちえいき のコメント
         

    フランスにサイレースを持って行っても大丈夫ですか。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    自由の国フランスなら大丈夫そうですが、航空会社に確認するのが手っ取り早いでしょうか。無知でスミマセン。

コメント


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プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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