2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

相互作用の犯人はP-糖蛋白質?

P-糖蛋白質

薬物相互作用の主な原因といえば、CYP=チトクロムP450ですが、その次によく聞くP糖タンパク質なるものがある。

糖タンパク質とはなんぞや。
糖質なのかタンパク質なのか。

頭文字の”P”はその薬剤透過性を変化させる働きから”Permeability(透過性)”に基づいてつけられた。

P糖タンパク質 – Wikipedia

糖タンパク質とは、タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したものである。動物においては、細胞表面や細胞外に分泌されているタンパク質のほとんどが糖タンパク質であるといわれている。

糖タンパク質 – Wikipedia

P糖タンパク質の役割は、

P糖タンパク質は、分子量約18万のリン酸化タンパク質であり、細胞膜上に存在して細胞毒性を有する化合物などの細胞外排出を行う

薬物排出トランスポーターとも言われる。

ジゴキシンなど細胞毒性を有する薬物を体外に排出しようとする、体を守ってくれるタンパク質なのですね。

クラリスとジゴキシンを併用しちゃダメ?

クラリスはよく処方される薬である。安全性の面では比較的問題の無い薬ですが、相互作用が多いので、併用薬に注意すべき薬です。
クラリスとジゴキシンは併用注意となっている。
ジゴキシンの添付文書の併用注意には、

抗生物質製剤
 エリスロマイシン、クラリスロマイシン、ガチフロキサシン水和物、テトラサイクリン
臨床症状・措置方法臨床症状:本剤の作用を増強することがある。
ジギタリス中毒の症状(嘔気、嘔吐、不整脈等)があらわれることがある。消化器・神経系自覚症状、心電図、血中濃度測定等必要に応じ観察するとともに腎機能、血清電解質(カリウム、マグネシウム、カルシウム)、甲状腺機能等の誘因に注意すること。
措置方法:「過量投与」の項参照機序・危険因子腸内細菌叢への影響による本剤の代謝の抑制、あるいは、P糖蛋白質を介した本剤の排泄の抑制により血中濃度が上昇するとの報告がある。

と書かれている。

クラリスロマイシンとジゴキシンは、併用すると、非併用時に比べてジゴキシンの血中濃度が上昇し、ジギタリス中毒症状が出現しやすくなる。
この併用で起きた有害事象の報告例は、必ずしも多くないが、ほとんどが高齢者で占められている。
ジギタリス中毒の初期症状は、めまい、頭痛、目のかすみ、吐き気・嘔吐、徐脈などである。

相互作用のメカニズムは完全には明らかでないが、⑴クラリスロマイシンが、ジゴキシンを不活化する腸内細菌を減少させ、その結果、ジゴキシンの腸管からの吸収量が増加する、⑵クラリスロマイシンが、ジゴキシンの尿細管分泌に関与するP糖蛋白を阻害し、その結果、ジゴキシンの尿中排泄が減少して血中濃度が上昇する、という機序が考えられている。

クラリスとP糖蛋白

クラリスロマイシンは、薬物トランスポーターのP糖蛋白を阻害する作用も持つ。P糖蛋白は小腸粘膜上皮細胞や腎尿細管上皮細胞、肝細胞の管腔側膜に発現し、P糖蛋白の基質となる薬剤の消化管排泄や腎分泌、胆汁中排泄を担っている。

P糖蛋白の基質薬の多数あるが、クラリスロマイシンとの併用で特に注意すべきなのはジゴキシンです。ジゴキシンはP糖蛋白に対する親和性が低いため、より親和性が高いクラリスロマイシンを併用すると、尿中へのくみ出しが阻害され、血中濃度が上昇する。

実際、ジゴキシンとクラリスロマイシンの併用によって、ジギタリス中毒による入院リスクが14.8倍に上昇したことが報告されている。また別の研究では、クラリスロマイシンの用量が多くなるほど、ジギタリス中毒による入院リスクが上昇したことが報告されており、クラリスロマイシンのP糖蛋白阻害作用は用量依存的に強くなる可能性が示唆されている。

P-糖蛋白質阻害薬

キニジン、ベラパミル(カルシウム拮抗薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)などのP-糖蛋白質阻害薬との併用によりP-糖蛋白質によるジゴキシンの輸送が阻害されると、血中ジゴキシン濃度が上昇してジゴキシン中毒を起こすことがあります。

P-糖蛋白質輸送系における相互作用 みてわかる薬物相互作用 リチェッタ:ノバルティスファーマ株式会社

CYPだけでも面倒くさく感じるのに、P-糖蛋白とか絡んでくるとさらにややこしく感じる相互作用。

P糖蛋白質の基質となる薬剤
(末梢)
アレグラ(フェキソフェナジン)
ジゴシン(ジゴキシン)
ラニラピッド(メチルジゴキシン)
コルヒチン
リポバス(シンバスタチン)
リピトール(アトルバスタチン)

ジャヌビア/グラクティブ(シタグリプチン)
エクア(ビルダグリプチン)
ラジレス(アリスキレンフマル酸塩)

(中枢)
エバステル(エバスチン)
ジルテック(セチリジン塩酸塩)
アレロック(オロパタジン塩酸塩)
タリオン(ベポタスチンベシル酸塩)
アゼプチン(アゼラスチン塩酸塩)
クラリチン(ロラタジン)
アレグラ(フェキソフェナジン)
プリンペラン(メトクロプラミド)
ナウゼリン(ドンペリドン)
ジゴシン(ジゴキシン)
ロペミン(ロペラミド塩酸塩)
リスパダール(リスペリドン)
アーチスト(カルベジロール)
アセタノール(アセブトロール)
セレクトール(セリプロロール塩酸塩)
インデラル(プロプラノロール塩酸塩) 他

P糖蛋白質を阻害する薬剤
マクロライド系(クラリス他)
リピトール(アトルバスタチン)
サンディミュン/ネオーラル(シクロスポリン)
プログラフ(タクロリムス)
ジプレキサ(オランザピン)
ルーラン(ペロスピロン塩酸塩)
リスパダール(リスペリドン)
ワソラン(ベラパミル塩酸塩)
ヘルベッサー(ジルチアゼム塩酸塩)
キニジン硫酸塩水和物
アンカロン(アミオダロン塩酸塩)
 ノービア(リトナビル)
 ビラセプト(ネルフィナビル)
 インイラーゼ(サキナビル)
SSRI(ジェイゾロフト(セルトラリン)=パキシル(パロキセチン)>デプロメール・ルボックス(フルボキサミンマレイン酸塩))  など

P糖蛋白質を誘導する薬剤
 リファンピシン
 カルバマゼピン
 セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等

P糖蛋白質(p-gp;P-glycoprotein;p糖タンパク質) 薬局薬剤師 薬の説明

いろいろありますね。

有名なのはジゴキシン。

とりあえず、併用禁忌レベルは覚えておこう。

ラジレス⇔イトリゾール
ラジレス⇔サンディミュン、ネオーラル
プラザキサ⇔イトリゾール

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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