2025年7月1日更新.2,507記事.

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グラシン紙とセロポリ紙の違いは?薬局での分包紙選択と吸湿性への配慮

グラシン紙とセロポリ紙の違いとは?

薬局での調剤業務では、一包化調剤が日常的に行われています。一包化とは、複数の錠剤やカプセル、散剤などを服薬ごとに1つの袋にまとめる調剤方法で、高齢者や服薬管理が難しい患者さんにとって大きな助けになります。この一包化に欠かせないのが分包紙です。

分包紙にはいくつか種類があり、なかでもよく知られているのがグラシン紙とセロポリ紙です。

グラシン紙とセロポリ紙の特徴、利点・欠点、使い分けのポイント、実務上の注意点を勉強します。

グラシン紙とは?

グラシン紙(Glassine paper)は、薬局の分包機で古くから使用されてきた半透明の紙です。
元々は、医薬品だけでなく食品包装や封筒の窓部分などでも使われる素材で、紙を高い圧力で平滑化し、さらに「スーパーカレンダー」と呼ばれる圧延工程を経て、きめ細かくツルツルした表面に仕上げています。

特徴
・半透明
・紙質がしっかりしている
・油や水を通しにくいが、吸湿性が比較的高い
・安価で大量に供給されてきた歴史がある

利点
・古くから薬局の分包機に適合する
・印字しやすい
・薬の粉が付着しにくい

欠点
・湿度の高い環境下では、吸湿性により薬剤の変質リスクがある
・湿気でしわがよりやすい
・透明度が低く中身の確認が難しい

セロポリ紙とは?

セロポリ紙(セロハンポリラミネート紙)は、グラシン紙の課題を補うために開発された比較的新しい素材です。

「セロハン」と「ポリエチレン」を貼り合わせることで、透明性・防湿性を高めています。現在ではほとんどの薬局でセロポリ紙が使われるほど普及しています。

特徴
・高い透明度で内容物が見える
・防湿性に優れる
・耐久性もある

利点
・中身を目視確認しやすい(監査の安全性向上)
・湿度に強く、錠剤や散剤が湿気により劣化しにくい
・包装の見た目が綺麗で破れにくい

欠点
・コストがやや高い
・静電気で粉がつきやすい場合がある
・グラシン紙に比べてやや印字適性に差が出ることも

なぜ現在はセロポリ紙が主流なのか?

一包化調剤のニーズが増える中で、患者さんやご家族が薬を目で確認できることの重要性が増してきました。
また、高温多湿の日本では、吸湿性による薬剤の変質が問題になるケースも少なくありません。

特に在宅患者さんや長期保管が必要な場合、グラシン紙では薬剤が水分を吸収し、
・錠剤の割れ
・粉化
・散剤の固化
などのトラブルが起こりやすいことが分かってきました。

このため、透明で防湿性の高いセロポリ紙の使用が標準化されつつあります。

添付文書における吸湿性への注意

添付文書の保管条件には、「高温多湿を避ける」「湿気を避ける」などの記載が多くみられます。
一包化した際の吸湿性に関する注意喚起がある代表的な薬剤には以下があります。


・乳酸菌製剤(ビオフェルミン散など)
 湿気を吸うと固まる、効果が低下するリスク。
・ヨクイニン散
 粉が固化しやすい。
・セレキノン散
 散剤の結塊。
・粉砕した錠剤(特に糖衣錠・腸溶錠を粉砕したもの)
 元々のコーティングが失われているため吸湿性が高まる。

添付文書には、「一包化する場合は湿気に注意し保管すること」「速やかに服用すること」といった注意が記載されていることがあります。

こうした薬剤では、セロポリ紙を用いるだけでなく、
・防湿袋に封入
・乾燥剤の同梱
・冷蔵保管
なども検討する必要があります。

実務上の使い分けのポイント

グラシン紙を使うケース
・コストを優先したい場合
・湿気リスクが低い短期間(数日程度)の服薬管理

セロポリ紙を使うケース
・長期間の一包化(1週間〜1ヶ月)
・湿気の多い環境での保管
・目視確認が必要(高齢者の服薬支援)
・在宅・施設への配薬
・吸湿性の高い薬剤

まとめ

一包化調剤では、「何をどの紙で包むか」という選択が、患者さんの服薬安全性や薬効に直結します。

●グラシン紙
・歴史ある分包紙
・コスト安い
・湿気に弱く視認性低い

●セロポリ紙
・透明性・防湿性高い
・やや高コスト
・現在のスタンダード

どちらを選ぶかは、調剤する薬の性質・服薬期間・患者の保管環境を考慮して判断することが重要です。

「とりあえずセロポリ紙」という薬局も多い一方、グラシン紙が適しているケースもあります。分包紙一つとっても薬局の安全管理レベルが問われる時代になりました。

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