2024年10月15日更新.2,467記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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SNRIが痛みに効く?

抗うつ薬が痛みに効く?

薬剤師

痛みにSNRIとか効くの?

痛みがあれば通常痛みどめが処方されます。
しかし、痛みどめだけでは痛みが治まらないということはよくある。
そんな時、精神系の薬が追加されることがあります。

抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、副腎皮質ステロイドなどの鎮痛補助薬が使用されることがある。

睡眠薬や抗不安薬は、痛みに伴う不安、焦燥、不眠に対して用いるだけではなく、筋緊張の緩和作用を期待して用いられます。

三環系抗うつ薬あるいはSSRIといった抗うつ薬は慢性疼痛に有効である。これは、慢性疼痛が中脳から脊髄後角へと投射して痛みを調節する経路である下行性痛覚抑制系においても重要な神経伝達物質として作用しているためである。

中枢神経には、末梢から脳に痛みを伝える上行性疼痛伝導系と、脳から末梢に痛みを抑制する信号を伝える下行性疼痛抑制系がある。

セロトニン系あるいはノルアドレナリン系単独に作用する薬物よりも双方に影響する薬物のほうが鎮痛効果は高く、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が推奨されている。

抗うつ薬の鎮痛効果は、発現が4~5日と早く、また抗うつ効果を期待する用量の1/3以下で達成されることがあり、抗うつ効果と鎮痛効果は別の機序によると考えられている。

痛みの恐怖回避モデル

腰痛が長引く要因の1つとして、痛みへの強い不安や腰痛再発に対する過剰な回避行動が、痛みの悪循環をもらたしているという。こうした痛みの悪循環は、「痛みの恐怖回避モデル(Fear-avoidance model)」と呼ばれる。

長引く腰痛の患者では、痛みへの意識が必要以上に強くなることで、過度に安静を保ったり、活動的でなくなったりする。その結果、筋力が低下し、血流が悪化するなどして、廃用症候群や日常生活動作(ADL)の低下、抑うつ傾向となり、腰痛がさらに増悪してしまう。

また、慢性腰痛の患者の中に痛みを感じやすくなっている人がいることも最近の研究で明らかになっている。
人には本来、痛みが起きても、それを抑えようとする機構(下行性疼痛抑制系)が働くようになっている。しかし、不安や恐怖、ストレスを強く感じている人は、この機構がうまく働かず、脳内のドパミンシステムやオピオイドシステムが機能不全に陥り、痛みを感じやすくなったり、痛みが長引いたりすると考えられている。

痛みへの不安や恐れを軽減し、活動性を維持するために、適切な薬物治療で痛みをコントロールすることが重要です。

トラマドールのSNRI作用

トラマール(トラマドール)の作用機序は、添付文書に以下のように書かれている。

ラット脳を用いたin vitro試験の結果から、トラマドールは中枢神経系で作用し、トラマドール及び活性代謝物M1のμ-オピオイド受容体への結合、並びにトラマドールによるノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込み阻害作用が、鎮痛作用に関与すると考えられる。

オピオイド作用だけでなく、SNRI作用もあるとのこと。
そのため、トラマドールの副作用として、セロトニン症候群が起こりうる。

SSRI、SNRIなどとは併用注意となっており、MAO阻害薬のエフピーとは併用禁忌になっている。

SNRIと痛み

抗うつ薬に分類されるSNRIのひとつ、サインバルタという薬がある。
効能効果は、以下のようになっている。

○ うつ病・うつ状態
○ 下記疾患に伴う疼痛
糖尿病性神経障害
線維筋痛症
慢性腰痛症

うつ病のみならず、痛みにも効果がある。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が、セロトニンやノルアドレナリンの働きを高めることによって、痛みを抑制する神経の働きを高めることができる。
この「痛みを抑制する神経」のことを「下行性疼痛抑制系」という。
リリカやノイロトロピンも同様の作用機序だ。

SNRIには、神経のシナプス間隙で一度放出されたセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害して、シナプス部のセロトニンやノルアドレナリンを高濃度に保つ作用がある。
セロトニンやノルアドレナリンには痛みを抑制する下行性疼痛抑制系を活性化させる働きがあるため、鎮痛効果が現れると考えられている。

モルヒネなどのオピオイドμ受容体を作動する鎮痛薬は、上行性疼痛伝導系の抑制に加え、下行性疼痛抑制系を活性化することで神経障害の痛みを軽減するとの報告がある。

うつ病じゃないのに抗うつ薬?

複数の効能効果を持つ薬だったり、適応外使用で処方されている薬の説明で、とんちんかんな説明をしてしまった経験はあるだろうか。
私はもちろんある。

肩こりで葛根湯が出てる患者に、風邪と思い込んで説明したり、
尿漏れでスピロペントが出てる患者に、咳止めと思い込んで説明したり、
そこらへんはまだ、風邪っぽい症状に使われる薬なので、患者も聞き流すというか、そういう効果もあるんだな~程度ですが、ちょっと聞き流せない雰囲気になる薬がある。

精神系の薬が処方されている場合に、「ん?ちょっと待てよ」みたいな患者の反応になることがある。
「俺は精神病患者か?」みたいな。
「処方間違いじゃないのか?」みたいな。

デパスが肩こり、腰痛、頭痛などに使われることはよくあるが、あまり抗不安薬、精神安定剤、マイナートランキライザー的な言い回しを強めにすると、ノンコンプライアンスに陥る可能性がある。

精神系の薬で痛み関連の適応を持つ薬は多い。

サインバルタ:糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症
デパス:頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛
トリプタノール:末梢性神経障害性疼痛
コントミン/ウインタミン:催眠・鎮静・鎮痛剤の効力増強
セルシン:脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛

また、消化器系の疾患で、例えばストレス性の胃炎とかでも精神系の薬が処方されることがありますが、その場合もあまり精神安定剤的な言い回しは避けたい。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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