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内臓脂肪減少薬アライでやせるのか?
公開. 更新. 投稿者:栄養/口腔ケア.この記事は約3分54秒で読めます.
6,155 ビュー. カテゴリ:内臓脂肪減少薬アライ
市販のやせ薬って効くの?
2013年頃に武田薬品工業から「オブリーン(セチリスタット)」という肥満症治療薬が薬価収載されるという話が合った。結局、薬価収載は見送られ、日本初の脂質吸収を抑える肥満症治療薬が処方箋薬として使われることはなくなった。
しかし、2024年春に内臓脂肪減少薬アライ(オルリスタット)が大正製薬から発売されるという。薬価収載薬ではなく、ダイレクトOTCとして発売される。
肥満症治療薬としては、ウゴービ皮下注が2024年2月22日に発売されるので、ほぼ同時期に発売されることになる。
同時期に発売されるところに、厚労省や医師会の目論見が感じられる。肥満症治療薬に対して保険を使うことを快く思っていない人々の攻撃を分散させようとする意図があるのだろう。
しかし、発売されればドラッグストア的には大々的に宣伝して、やせ願望を持つ人々が群がることは目に見えているので、適正に販売できるように購入条件などを確認しておかなければならない。
アライはリパーゼ阻害薬
オルリスタットやセチリスタットの作用機序は、脂肪分解酵素であるリパーゼのセリン残基に結合し不活性化し、腸管からの脂肪吸収を阻害することで抗肥満効果を発揮する。
リパーゼが脂肪を分解するのを阻害する。
脂肪を分解したほうがダイエットに効果的のようなイメージになりますが、体内の脂肪は分解したほうがよくて、食物の脂肪は分解されないほうが吸収を抑えることができる。
体内にはほとんど吸収されないため、中枢に移行して作用する抗肥満薬よりも安全性が高いとされている。
しかし脂肪の吸収を阻害するため、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kなどの吸収も妨げる。これらのビタミンはサプリメントなどで摂取することが推奨される。
アライとBMI
アライの効能効果は、
腹部が太めな方※の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)
※腹囲(へその高さ):男性85cm以上、女性90cm以上
となっており、自分でも油断すればこのくらいになることがあるので、対象患者は多いだろう(生活習慣改善の取り組みが十分かどうかはわからないが)。
オルリスタットの効果としては、内臓脂肪断面積の10%ほどの減少、2.5~3kgの体重減少が期待できるという。個人的には、食事制限と運動さえすればこのくらいの体重減少はいけると思うが、妻は難しいと言っている。ちなみにセマグルチド(ウゴービ)は、約10%以上の体重減少効果が期待できるというので、体重60キロなら6キロくらいの減少効果となり、その差は歴然である。
アライの使用条件にBMI(Body Mass Index:ボディ・マス・インデックス)=体重(kg)÷身長(m)2については、特に記載はないが、肥満症の診断基準であるBMI 25kg/m2以上が目安になる。BMI 35kg/m2以上になると高度肥満になる。
ウゴービ皮下注の効能効果に記載されているBMIは、
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上
サノレックスは「BMIが35以上」、基本的にはウゴービもサノレックスも高度肥満がターゲットになる。
市販薬のアライを使って十分な効果がみられない患者を医療機関に紹介して、ウゴービにつなげるという流れが想像できる。
アライと便漏れ
オルリスタットの副作用としては、服用者の20%程度で起こるという便漏れが最大のネックだろう。
服用開始の2週間以内に起きやすく、徐々に発症率は落ちてくるとはいえ、「ウンコが漏れるかもしれません」と聞いたら心穏やかではいられない。
しかし、「食品中の油を体外に出しているので、効果が表れている証拠です」と聞けば、効果の実感として好意的に受け止められる可能性もある。
女性の心理はわからないが、生理中の女性にとっては、多少の油漏れであれば抵抗は無いのかもしれない。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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