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やせる薬と太る薬―薬による体重増加・体重減少の原因
公開. 更新. 投稿者: 13,031 ビュー. カテゴリ:副作用/薬害.この記事は約13分1秒で読めます.
目次
やせる薬と太る薬

薬を飲み始めてから、
「最近、太ってきた気がする」
「食欲がなくなってやせた」
「数日で2kgも増えた」
ということがあります。
薬による体重変化には、単純に「脂肪が増えた・減った」だけではなく、食欲、代謝、血糖、脂肪の蓄積、水分貯留(むくみ)など、さまざまな仕組みが関係しています。
そのため、薬を「太る薬」「やせる薬」と単純に分類するだけでは十分ではありません。
特に重要なのは、短期間で急激に体重が増えた場合です。
数日で2~3kg増えたような場合には、脂肪ではなく体内に水分がたまっている可能性があります。心不全や腎機能低下などが関係することもあるため、息切れ、むくみ、動悸などを伴う場合には注意が必要です。
薬で体重が変わる4つの理由
薬による体重変化は、大きく分けると次のような仕組みで起こります。
1.食欲が変わる
抗精神病薬や一部の抗うつ薬などでは食欲が増し、GLP-1受容体作動薬などでは食欲が抑えられることがあります。
摂取カロリーが変われば、長期的には体重にも影響します。
2.代謝や脂肪の蓄積が変わる
インスリンやピオグリタゾンなどは、ブドウ糖を細胞内へ取り込んだり、脂肪組織にエネルギーを蓄えたりする方向に働きます。
一方、甲状腺ホルモンのように基礎代謝そのものに大きく影響するものもあります。
3.水分量が変わる
体重増加=脂肪増加とは限りません。
ピオグリタゾンやNSAIDsなどでは体液貯留によって体重が増えることがあります。
反対に、利尿薬やSGLT2阻害薬では体内の水分が減ることで、比較的短期間に体重が減ることがあります。
4.病気が改善した結果、体重が戻る
これは「薬の副作用」とは少し違います。
たとえば甲状腺機能亢進症では代謝が異常に高まり、たくさん食べても体重が減ることがあります。
抗甲状腺薬によって甲状腺機能が正常化すると、異常に高かった代謝も正常に戻るため体重が増えます。
この場合、単純に「メルカゾールを飲むと太る」と考えるのは正確ではありません。
抗精神病薬で太る?
薬による体重増加で特に問題になりやすいのが抗精神病薬です。
すべての抗精神病薬が同じ程度に太りやすいわけではありませんが、オランザピン(ジプレキサ)やクロザピン(クロザリル)などは体重増加や代謝異常に特に注意が必要な薬として知られています。
抗精神病薬による体重増加には、
- ヒスタミンH1受容体
- セロトニン5-HT2C受容体
- ドパミン系
- インスリン感受性や糖・脂質代謝
など複数の作用が関係すると考えられています。
単純に「食欲が増えるから太る」だけではなく、代謝そのものへの影響も考える必要があります。
ジプレキサで太る?
オランザピンでは体重増加だけでなく、血糖値上昇や脂質代謝異常にも注意が必要です。
体重増加には二つの大きな問題があります。
一つは、肥満や糖尿病、脂質異常症などを介して将来の心血管リスクにつながる可能性があること。
もう一つは、患者が「太りたくない」という理由で薬を自己中断してしまうことです。
したがって、体重増加は単なる美容上の副作用として片付けられるものではありません。
ただし、精神疾患の症状が改善して食欲が戻った結果として体重が増える場合もあります。
「薬の副作用」「病気からの回復」「生活習慣の変化」を分けて考える必要があります。
抗うつ薬で太る?
抗うつ薬でも体重変化がみられることがあります。
薬剤によって違いがありますが、長期服用では体重増加が問題になることがあります。
一方、うつ状態では食欲が低下して体重が減っている患者もいます。
治療によって意欲や食欲が回復し、元の体重に戻っているのであれば、それをすべて「薬で太った」と考えることはできません。
体重増加だけを理由に自己判断で抗うつ薬を中止することは避ける必要があります。
リリカで太る?
リリカ(プレガバリン)では体重増加が報告されています。
プレガバリンは神経の電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに結合し、興奮性神経伝達物質の放出を抑制することで鎮痛作用などを示します。
一方、体重増加が起こる詳しい仕組みについては、完全には解明されていません。
また、プレガバリンでは末梢性浮腫もみられるため、体重増加がすべて脂肪の増加というわけでもありません。
腰痛や膝痛などで服用している患者では、体重増加によって関節への負担が増えることも考えられるため、長期服用時には体重の変化にも注意します。
デパケンで太る?
バルプロ酸(デパケンなど)の長期服用でも体重増加がみられることがあります。
その機序は完全には明らかではありませんが、
- 食欲への影響
- 脂肪酸代謝への影響
- インスリン抵抗性
- 高インスリン血症
など複数の要因が関与すると考えられています。
特に体重増加を起こしやすい他の向精神薬と併用している場合には、体重だけでなく血糖や脂質にも注意が必要です。
NSAIDsで太る?
NSAIDsを飲んだから脂肪が増える、という意味ではありません。
NSAIDsでは腎臓でのプロスタグランジン産生が抑制され、腎血流やナトリウム・水分排泄に影響することで、体液貯留や浮腫を起こすことがあります。
その結果として体重が増えることがあります。
特に心不全、腎機能低下、高齢者などでは注意が必要です。
カルシウム拮抗薬によるむくみ
アムロジピンなどのカルシウム拮抗薬でも浮腫がみられます。
こちらは単純な「水分の摂りすぎ」とは少し違います。
細動脈側の血管が拡張することで毛細血管内圧が上昇し、血管内の水分が組織側へ移動しやすくなることが一因と考えられています。
そのため、足首などのむくみとして現れることがあります。
ステロイドで太る?
副腎皮質ステロイドの長期使用では、
- 食欲亢進
- 脂肪分布の変化
- 糖代謝への影響
- 水分・ナトリウム貯留
などによって体重が増えることがあります。
長期・高用量では中心性肥満や満月様顔貌など、クッシング様の体型変化がみられることもあります。
糖尿病の薬で太る?
糖尿病治療薬には、体重を増やしやすい薬、体重にあまり影響しない薬、体重を減らしやすい薬があります。
大まかに分類すると、
- 体重増加: インスリン、SU薬、グリニド薬、チアゾリジン薬
- 体重中立: DPP-4阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬
- 体重減少: SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬
- 中立~やや減少: メトホルミン
という傾向があります。
同じ「血糖値を下げる薬」なのに、なぜ体重への影響が正反対になるのでしょうか。
ポイントは、血糖値をどうやって下げているのかです。
インスリンで太る?
インスリン治療を開始すると体重が増えることがあります。
インスリンはブドウ糖を細胞内へ取り込み、エネルギーとして利用・蓄積できるようにするホルモンです。また、脂肪分解を抑えて脂肪を蓄積する方向にも働きます。
さらに、インスリン不足で高血糖になっている患者では、血液中のブドウ糖が尿糖として体外へ捨てられています。
インスリン治療によって血糖値が改善すると、
尿に捨てていた糖が減る → エネルギーを体内に保持できるようになる
ため、体重が増えることがあります。
これは必ずしも「インスリンの副作用で異常に太った」ということではなく、それまで利用できずに失われていたエネルギーを利用できるようになった結果でもあります。
一方、インスリン量が多すぎて低血糖を繰り返すと、低血糖を防ぐための間食が増え、それが体重増加につながることもあります。
SU薬でも太る?
SU薬(スルホニル尿素薬)も体重を増加させる傾向があります。
SU薬は膵β細胞を刺激してインスリン分泌を促進する薬です。
つまり、
インスリンを注射する → インスリンそのものを体外から増やす
のに対して、
SU薬を飲む → 自分の膵臓からインスリンを出させる
という違いはありますが、どちらもインスリン作用を強める方向に働きます。
そのためSU薬でも、インスリン治療と同じように体重増加が起こり得ます。
また、SU薬は低血糖を起こすことがあります。低血糖によって空腹感が生じ、補食や間食が増えることも体重増加の一因になります。
グリニド薬もインスリン分泌促進薬なので、同様に体重増加側の薬として考えられます。
アクトスで太る?
アクトス(ピオグリタゾン)も体重が増えやすい糖尿病治療薬です。
ピオグリタゾンはPPARγを活性化し、インスリン抵抗性を改善します。
ただし、ピオグリタゾンによる体重増加はインスリンやSU薬とは少し性格が違います。
脂肪組織への影響に加えて、体液貯留による体重増加が重要だからです。
そのため、
「数日で急に体重が増えた」
「足がむくんできた」
「息切れする」
「横になると苦しい」
といった症状があれば、単なる肥満ではなく心不全なども考える必要があります。
「太った」と「むくんで体重が増えた」を区別することが重要な薬です。
α-グルコシダーゼ阻害薬では太らない?
アカルボース(グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)、ミグリトール(セイブル)などのα-グルコシダーゼ阻害薬は、基本的に体重への影響が少ない薬です。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸で二糖類などを単糖に分解する酵素を阻害します。
その結果、
糖質の消化が遅くなる → ブドウ糖の吸収が遅くなる → 食後血糖値の急上昇を抑える
という作用を示します。
ここで重要なのは、糖質を尿や便に大量に捨てる薬ではないということです。
糖質の消化・吸収を「遅らせる」のが中心なので、SGLT2阻害薬のように糖そのものを体外へ排泄して大きなエネルギー損失を起こすわけではありません。
そのため、α-グルコシダーゼ阻害薬は一般に体重中立的な薬と考えられています。
ただし、研究によっては軽度の体重減少が報告されており、「絶対に体重が変わらない」という意味ではありません。
DPP-4阻害薬では太らない?
シタグリプチン(ジャヌビア)、リナグリプチン(トラゼンタ)などのDPP-4阻害薬も、一般に体重中立的な薬です。
DPP-4阻害薬は、体内で分泌されたGLP-1やGIPなどのインクレチンの分解を抑えます。
インスリン分泌を促進しますが、血糖値が高いときに作用しやすいため、SU薬のように単独で低血糖を起こして補食が増えるということも比較的少なくなります。
同じインクレチン関連薬でも、GLP-1受容体作動薬ほど強い食欲抑制・体重減少作用はありません。
そのため、
DPP-4阻害薬=体重中立
GLP-1受容体作動薬=体重減少
と覚えると分かりやすいでしょう。
SGLT2阻害薬でやせる?
SGLT2阻害薬は、体重を減少させる方向に働く糖尿病治療薬です。
通常、腎臓の糸球体でろ過されたブドウ糖は、尿細管にあるSGLT2によって再吸収され、血液中へ戻されます。
SGLT2阻害薬はこの再吸収を阻害します。
つまり、
血液中の糖 → 腎臓でろ過 → 再吸収せず尿糖として捨てる
という薬です。
α-グルコシダーゼ阻害薬との違いが面白いところです。
α-GI:糖質の消化・吸収を遅らせる
SGLT2阻害薬:いったん血液中に入った糖を尿へ捨てる
SGLT2阻害薬では、糖を尿中へ排泄することでカロリーそのものが体外へ失われるため、体脂肪の減少につながります。
さらに服用開始初期には、浸透圧利尿によって水分も排泄されるため、体液量の減少による体重低下も加わります。
したがってSGLT2阻害薬による体重減少は、
初期:水分減少+カロリー損失
長期:主としてカロリー損失による脂肪量減少
という二つの側面から考えることができます。
ただし、SGLT2阻害薬は「尿に糖を捨てれば捨てるほどどんどんやせる」という薬ではありません。実際の体重減少はある程度で頭打ちになります。
GLP-1受容体作動薬でやせる?
GLP-1受容体作動薬も体重減少をもたらす薬です。
ただし、SGLT2阻害薬とは仕組みがまったく違います。
GLP-1受容体作動薬では、
- 満腹感を高める
- 食欲を抑える
- 胃内容排出に影響する
- 食事摂取量を減らす
といった作用によって、摂取エネルギーそのものが減少します。
つまり、
SGLT2阻害薬=入ってきたエネルギーを尿へ捨てる
GLP-1受容体作動薬=そもそも入ってくるエネルギーを減らす
という違いで考えると分かりやすいでしょう。
GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドも、強い体重減少作用を示します。
糖尿病薬を「エネルギーの流れ」で考える
糖尿病治療薬と体重の関係は、「血糖値が下がるかどうか」ではなく、エネルギーをどこへ動かす薬なのかと考えると理解しやすくなります。
インスリン・SU薬
→ 糖を体内で利用・蓄積する方向
→ 体重増加
ピオグリタゾン
→ インスリン抵抗性を改善+脂肪組織や体液量への影響
→ 体重増加
α-グルコシダーゼ阻害薬
→ 糖質の消化・吸収を遅らせる
→ おおむね体重中立
DPP-4阻害薬
→ 生理的なインクレチン作用を増強
→ おおむね体重中立
SGLT2阻害薬
→ 糖を尿へ捨てる
→ 体重減少
GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬
→ 食欲・満腹感などに作用して摂取エネルギーを減らす
→ 体重減少
同じ糖尿病治療薬でも、「糖を体内に取り込む」「糖の吸収を遅らせる」「糖を尿へ捨てる」「食べる量を減らす」という作用の違いが、そのまま体重への影響の違いとして現れているわけです。
メルカゾールで太る?
「メルカゾールを飲んだら太った」という患者はいます。
しかし、これは必ずしもメルカゾールの副作用で太ったわけではありません。
バセドウ病などの甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが過剰になり、基礎代謝が異常に高くなっています。
そのため、
たくさん食べる → それ以上にエネルギーを消費する → やせる
という状態になることがあります。
メルカゾールなどで治療すると基礎代謝が正常に戻ります。
ところが、甲状腺機能亢進症だった頃の食事量をそのまま続ければ、以前ほどエネルギーを消費しないため体重が増えます。
したがって、
「メルカゾールが太らせる」というより、「異常に高かった代謝が正常化した結果、体重が戻る」
と考えたほうが適切です。
甲状腺機能低下症では太る?
反対に、甲状腺機能低下症では基礎代謝が低下します。
さらに水分が組織にたまりやすくなるため、体重が増えることがあります。
甲状腺ホルモンを補充して甲状腺機能が正常化すると、余分な水分が減り、体重もある程度減少することがあります。
トピナでやせる?
トピナ(トピラマート)では体重減少がみられることがあります。
食欲低下などが関係すると考えられていますが、体重減少の機序は単一ではなく、完全には解明されていません。
体重が減るからといって「ダイエット薬」として自己判断で使用してよい薬ではありません。
本来の適応、効果、副作用を考えたうえで使用する必要があります。
「2kg増えた」は薬のせい?
体重は1日の中でも変動します。
食事、水分摂取、排便、発汗、測定時間などによって1kg程度変わることは珍しくありません。
そのため、
「前より2kg太った」
という情報だけで薬の副作用とは判断できません。
重要なのはどのくらいの期間で増えたのかです。
数か月かけて5kg増えたのであれば、食欲増加や脂肪蓄積などを考えます。
一方、
「3日で3kg増えた」
という場合には、3kgの脂肪が急に増えたとは考えにくく、体液貯留を疑う必要があります。
特に心不全患者では体重が重要な指標になります。
毎日できるだけ同じ条件、たとえば「朝起きて排尿した後、朝食前」などに測定すると変化を把握しやすくなります。
「太る副作用」はどう伝える?
薬剤師にとって難しいのは、体重増加という副作用の伝え方です。
「この薬、太りますよ」
と言われれば、それだけで薬を飲みたくなくなる患者もいるでしょう。
特に抗精神病薬、抗うつ薬、摂食障害などでは、体重についての説明そのものが治療に影響する可能性があります。
一方で、体重増加を説明しないまま実際に太ってしまえば、
「こんな副作用があるなんて聞いていなかった」
と服薬を中断してしまうかもしれません。
そのため、
「体重が増えることがあります」
「食欲が変わることがあります」
「急に体重が増えたり、むくみが出たりしたら相談してください」
など、患者の状態や治療目的に合わせた説明が重要です。
体重増加は単なる美容上の問題ではありません。
糖尿病、脂質異常症、心血管疾患、関節への負担、そして服薬アドヒアランスにも影響する重要な副作用です。
まとめ
薬による体重変化を考えるときには、「太る薬」「やせる薬」と名前だけで覚えるよりも、
食欲が変わるのか、代謝が変わるのか、脂肪が増減するのか、水分が増減するのか、病気が改善した結果なのか
という視点で考えると理解しやすくなります。
特に、
数か月かけて体重が増えた → 食欲・代謝・脂肪の変化
数日で急激に体重が増えた → 水分貯留を疑う
という違いは、薬局でも重要なポイントです。
「薬を飲んでから太った」という患者の訴えに対しても、単に副作用一覧を確認するだけではなく、いつから、何kg増えたのか、むくみや息切れはないか、食欲は変わったかまで確認すると、より適切な判断につながります。




4 件のコメント
コンサータは体重が減少する薬ではありませんか?食欲減退作用などもありますし、体重増加の副作用はないと思います
コメントありがとうございます。
そうですね。「体重増加」で検索して中身を見てなかったのかもしれません。気を付けます。
ご指摘ありがとうございます。
はじめまして!子供がインチュニブを飲んでいるのですが、浮腫がひどく午後まで起きれない日があります。
食物アレルギーの疑いもありますが、インチュニブの可能性も疑ってます。
インチュニブは、降圧剤ですがACE阻害薬と同じ作用でしょうか?
コメントありがとうございます。
インチュニブ(グアンファシン)は選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬という分類の薬で、ACE阻害薬とは違います。降圧剤としては一般的なものではありません。
「AD/HDの治療効果における詳細な作用機序は不明」とのことです。
副作用の項目をみても「浮腫」という文言は見当たらないので、一般的な薬に比べて浮腫が多いというわけではなさそうですが、アレルギー反応はどのような物質でも起こりうるので可能性としてゼロではありません。
休薬して浮腫が治まれば、原因の可能性も高まると思いますので、医師と相談してみてください。