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やせる薬と太る薬
公開. 更新. 投稿者:副作用/薬害.この記事は約16分26秒で読めます.
9,849 ビュー. カテゴリ:薬による体重変動
太ったのは薬のせい?
薬の影響で体重が減る薬と、体重が増える薬がある。
「薬を飲んででもやせたい」と思う人も多いが、基本的には薬による体重減少は望ましくはない。
体重の増減が気になる薬として利尿剤がある。
±2kgの体重増減は薬の調節が必要になる場合があるので、医師に相談するように促す。
太る薬
やせる薬を求める人は多いだろう。
しかし、わざわざ太る薬を求める人はいない。
とくに女性にとっては「やせる薬」は欲しがるが、「太る薬」というのはノーウェルカムだろう。
薬の副作用で「太る」というのは、特に女性にとっては無視できない副作用である。
それゆえに、伝え方を間違うとノンコンプライアンスに陥りやすく、初回投薬時にはあまり触れたくない副作用の一つでもある。
向精神薬で太るというのはよく聞く。
力士が太るためにインスリンを打っていたというニュースもある。
副作用として浮腫(むくみ)を生じるような薬では体重増加がみられる。
「体重増加」の副作用をもつ薬を挙げると、
アクトス、ソニアス、メタクト、リオベル(インスリン抵抗性改善薬)、インチュニブ(注意欠陥/多動性障害治療薬)、ガバペン(抗てんかん薬)レグナイト(レストレスレッグス症候群治療薬)、クロザリル、ジプレキサ、セロクエル、ビプレッソ(抗精神病薬)、セキソビット(排卵誘発剤)、チャンピックス(禁煙補助薬)、リリカ(疼痛治療薬)
抗うつ薬、タモキシフェン、副腎皮質ステロイド、インスリン、性ステロイド、スルホニル尿素薬、経口避妊薬
などなど。
精神病患者で食欲が無いという患者が、食欲増加による体重増加がみられるのは好ましいことかも知れないが、糖尿病患者が太るのは好ましくない。
太る副作用というのは、特に女性にとってデリケートな問題なので、伝え方に注意する必要がある。
拒食症(摂食障害)患者にジプレキサが処方されていた場合に、「太る可能性があります」というのはNGだろう。
リリカで太る?
リリカ(プレガバリン)の作用メカニズムとしては、中枢神経系において電位依存性カルシウムチャネル(N型)の機能に対し補助的な役割をなすα2σサブユニットとの結合を介して、カルシウムチャネルの細胞表面での発現量およびカルシウム流入を抑制し、グルタミン酸などの神経伝達物質遊離を抑制することが示唆されている。
さらにリリカの鎮痛作用には下行性疼痛調節系のノルアドレナリン経路およびセロトニン経路に対する作用も関与していることが示唆されている。
リリカの体重増加のメカニズムについては、リリカが視床下部ドパミンに影響を及ぼし、摂食促進作用をもたらすとの見解もあるが、現在のところ明らかでない。
リリカやNSAIDsで、腰痛、膝痛に悩まされている人が体重増加すれば、関節の負担が増え、病状が悪化する可能性もある。
リリカの添付文書には、以下のように書かれている。
本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
NSAIDsで太る?
NSAIDsによる体重増加の原因としては「浮腫」が挙げられます。
副作用として「浮腫」のある薬としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、抗生剤、抗癌剤などがあります。
NSAIDsではプロスタグランジン産生抑制によって、腎血流低下や尿細管の水再吸収亢進が起こるため体液貯留傾向となります。
カルシウム拮抗薬では動脈優位の血管拡張が起こり、毛細血管静水圧が上昇し浮腫の原因となります。
ACE阻害薬ではクインケ浮腫と呼ばれる限局性浮腫をきたすことが知られており、ときに喉頭浮腫から気道閉塞となり致死的な結果となります。
ペニシリン系抗生剤や炭酸水素ナトリウム注射液などでは、Na含有量過剰による体液貯留がみられます。
抗癌剤などでは、直接的に腎毒性•腎不全からの浮腫がみられます。
抗精神病薬で太る?
肥満は統合失調症の患者さんを悩ます大きな副作用の一つです。
太るから薬を飲みたくない、薬を自己調整する、実際に飲まないという若い患者さんが多くいます。
抗精神病薬の種類によって体重増加を起こす頻度が違います。
これは薬物によって各種受容体に対する親和性が異なることが原因です。
体重増加はヒスタミンH1受容体への親和性が関連しています。
抗精神病作用を発揮するには、ドパミンD2受容体だけを適度に遮断することが望ましいのですが、残念ながら同時に他の受容体も塞いでしまうことによって副作用が起こってしまいます。
定型薬では、コントミンやレボトミンなどのいわゆる低力価薬が体重増加を起こしやすいです。
非定型薬では、オラザピン(ジプレキサ)やクロザピンなど、名前に「ピン」のつく薬効群はヒスタミンH1受容体への親和性が強く、体重増加を起こしやすいです。
抗精神病薬で太るメカニズム
ドパミン受容体とセロトニン受容体が刺激されると食欲が抑制される。
従来型やSDAは、ドパミン受容体とセロトニン受容体を遮断することで食欲を亢進させ、体重を増加させると考えられている。
また、オランザピンやクエチアピンによる体重増加には、食欲抑制作用と関連があると考えられている。ヒスタミンH1受容体、5-HT2c受容体の遮断作用が関与していると考えられている。
ブロナンセリンはヒスタミンH1受容体拮抗作用に起因する体重増加や耐糖能異常などの副作用は弱いと考えられている。
ジプレキサで太る?
抗精神病薬による体重増加はフェノチアジン系薬剤などでも知られていましたが、ジプレキサによる体重増加ははるかに深刻で、3ヶ月程度で4~5kg、1年間で10kg以上という例もまれではありません。
体重増加という副作用には、血糖値上昇から、糖尿病性ケトアシドーシスのような重篤な急性期症状に至ったり、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性の増大、糖尿病などから脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まったりするという生命予後への影響と、美容上の問題から患者のアドヒアランスが低下し、服薬が中断されるという2つの問題があります。
体重増加の発現機序については、中枢ヒスタミンH1受容体、セロトニン5HT2C受容体遮断作用などによる影響が指摘されているものの、特別な対策があるわけではありません。食事や運動など生活習慣に対する注意が中心となります。
しかし、患者は統合失調症で、陰性症状ともなると運動量は少なく、食事に対して本人が積極的に注意できるような状況ではありません。
ジプレキサとH2ブロッカーの併用で体重増加予防
非定型抗精神病薬は、従来の定型抗精神病薬に比べて、錐体外路系副作用の発現率が低いという特徴を有しているが、一方で体重増加、耐糖能異常、脂質代謝異常などの副作用の発現率が高いといわれている。
中でも、オランザピンとクエチアビンは糖尿病の既往歴がある患者に対して「投与禁忌」となっており、糖尿病の既往歴がない患者に対しても添付文書の「警告」欄で、血糖値の変化に十分注意して投与するよう注意が喚起されている。
体重増加は他の副作用に比べて緊急性が低いため、あまり注目されていなかったが、最近、特に若者にとって外見上好ましくない副作用であり、コンブライアンスを低下させる要因となることから問題視されてきている。
統合失調症の患者は一般に、症状の悪化に伴い食欲が減少し、治療により症状が良くなると、食欲が回復し体重が増加することが多い。
これに加え、オランザピンなどの非定型抗精神病薬は、視床下部の満腹・摂食中枢に直接作用して食欲を亢進するといわれている。
その詳細な機序は不明だが、セロトニン5-HT2c受容体の欠損マウスで肥満を発症したとの報告があることから、セロトニン5-HT2c受容体遮断作用を有する非定型抗精神病薬が、同受容体に作用して食欲亢進を誘発すると考えられている。
また、オランザピンの投与による体重増加と、食欲抑制ホルモンのレプチンの血中濃度が関連するとの報告や、レプチンの作用がヒスタミンH1受容体欠損マウスで減弱したとの報告もある。
これらの研究結果から、ヒスタミンH1受容体に強い親和性のあるオランザピンが、視床下部で同受容体に作用してレプチンの働きを妨げ、食欲を亢進させるとみられている。
このような体重増加に対して、H2受容体拮抗薬が有用であるとすそ報告が相次いでいる(保険適応外)。
例えば、オランザピンを投与している患者に、ラニチジンを300mg/日を朝夕食後に投与した結果、有意に体重増加を抑制したという報告がある。
その抑制効果は肥満群に対して投与した場合に有効とされている。
他のH2受容体拮抗薬でも報告があるが、ニザチジンは投与初期には抑制効果が見られるものの8週間後では有意差がなくなったとの報告もされた。
体重増加抑制の作用機序はよく分かっていないが、H2受容体拮抗薬が視床下部でのヒスタミン系神経経路に作用することで、食欲が抑制されるとの説がある。
プロトンポンプ阻害薬には体重増加の抑制効果が認められないことから、少なくとも胃酸分泌抑制作用によるものでないことは確かなようである。
パキシルで太る?
抗うつ薬で太るという人はよくいるが、意欲が増す=食欲が増すということでもあり、太ったということがうつ病の治療においては、必ずしもマイナスの側面だけではないことは知っておく必要がある。太りやすい薬=効果的な薬とも言えるわけで、太ったから別な薬に変えるという安易な処方変更が是とは言えない。
中枢の5-HT2c受容体への刺激は食欲抑制作用を示すことが動物実験で認められており、SSRIによる食欲不振には、中枢の受容体に対する作用が関与している可能性も予想されます。
5-HT2c受容体は、継続投与によりダウンレギュレーションが起こるため、長期服用時には食欲が亢進する可能性もあります。
また、5-HT2c受容体の遮断は食欲の亢進だけでなく、肥満傾向となることも指摘されており、体内の代謝系に影響を及ぼす可能性も推測されています。
パロキセチンの服用が継続されると、体重増加がみられることが問題となりますが、これには5-HT2c受容体のダウンレギュレーションが関与していることも考えられ、食欲の亢進や体重増加に対しても初期の段階から確認を続け、食事や運動に注意を払うように勧めることが必要となります。
デパケンで太る?
バルプロ酸の長期服用の場合に、体重増加がみられることがある。
バルプロ酸による体重増加の発症機序は、不明であるが、脂肪酸β酸化の阻害による脂肪代謝の抑制、エネルギー産性減少が影響している可能性も考えられる。
また、体重増加がみられた例では、高インスリン血症が合併しているとする報告も多く、インスリン抵抗性から肥満、耐糖能異常に至る危険性も指摘されている。
適応の拡大に伴い、オランザピンなどの非定型抗精神病薬と併用されるケースも増加することが予想されるが、これらの薬剤では食欲亢進、体重増加、高血糖の発現が深刻な問題となっている。
併用時には、体重増加や高血糖の発現に対してより厳重な注意をはらうことが必要と考える。
メルカゾールで太る?
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の患者さんは、基礎代謝が増えて、エネルギーも使うので、多く食べても太らない。
そのため、大食いの習慣のある女性が、メルカゾールなどの抗甲状腺薬を服用し、バセドウ病の治療を開始した後も、食習慣を見直さなければ、体重が増えていくことは目に見えています。
甲状腺機能亢進による体重減少
甲状腺ホルモンが増加すると新陳代謝も亢進してしまいます。
新陳代謝が亢進すると、基礎代謝が亢進し(カロリー消費)摂取したエネルギーが過剰に消費されます。
そのため、空腹感が生じ、食欲は亢進します。
甲状腺機能亢進では、食事量が増えているにもかかわらず体重が減少してしまうのです。
過剰な甲状腺ホルモンを正常にすれば、体重も増加してきます。
甲状腺機能低下による体重増加
甲状腺の機能が低下すると体に必要な甲状腺ホルモンが十分に生産されなくなります。
甲状腺ホルモンは体の新陳代謝に大きく影響しており、甲状腺ホルモンが低下すると新陳代謝も低下してしまいます。
新陳代謝が低下すると、基礎代謝が低下し(カロリー消費)摂取したエネルギーが以前のようには消費されません。
また、余分な水分を貯留しやすくなり、むくみも大きな原因となります。
これらのために以前と同じ食事量であるにもかかわらず体重が増加してしまうのです。
不足している甲状腺ホルモンを正常にすれば、体重も減少してきます。
糖尿病の薬で太る?
糖尿病の人というと太った人を想像しますが、必ずしも太っているわけではありません。
高血糖が持続すると体重は減少します。インスリンが分泌されないと血液中のブドウ糖をエネルギーに変えられないため、脂肪を分解してエネルギーに変えようとするためです。
糖尿病の種類には1型と2型があり、1型はインスリン依存性(IDDM)で、2型はインスリン非依存性(NIDDM)とも言われます。1型は昔、若年型と呼ばれたように6~13歳の間で発症することが多いようです。2型糖尿病の原因に肥満があるので、糖尿病の人が太っているイメージがあるのでしょう。
糖尿病だから太ったのではなく、太ったから糖尿病になったのです。糖尿病になればやせます。
最近では子どもでも肥満で、2型糖尿病になるケースがあるようです。
糖尿病治療薬には体重を増やす系の薬と体重を減らす系の薬がある。
チアゾリジン薬のアクトスには、浮腫(むくみ)の副作用があり、水分貯留による体重増加がみられるため、気をつける必要がある。
浮腫は比較的女性に多く報告されており、男性と女性を比べると女性のほうが日々の体重を気にしている患者が多く、「体重が増えたんだけど」という問い合わせは女性からのほうが多い。
アクトスの添付文書には、
循環血漿量の増加によると考えられる浮腫が短期間に発現し、また心不全が増悪あるいは発症することがあるので、服用中の浮腫、急激な体重増加、症状の変化に注意し、異常がみられた場合には直ちに本剤の服用を中止し、受診するよう患者を指導すること。
という記載もみられ、薬剤情報提供文書に急激な体重増加時に相談するよう指示されていることが多いので、医療機関を受診すべきかという相談も多い。
夏場は熱中症予防のため、多く水分を摂取していることもあったり、メトホルミンを飲んでいる人は乳酸アシドーシス予防のため水分摂取、SGLT2阻害薬を飲んでいる人は利尿のための水分摂取を行っているため、水分摂りすぎ状態の人もいる。
また、SGLT2阻害薬は体重減少効果があるが、それらの薬の投与中止によっても体重増加してしまう。
ピオグリタゾンを飲んでいて、体重が増えて、むくみが見られた場合、「受診してください」と医師に判断を任せるのは簡単である。
しかし、すぐに受診すべきなのか、次回の予定日まで待ってもいいのかという判断は慎重にすべきである。
アクトスでは緊急安全性情報も出ているので、「急激な水分貯留による心不全」には注意を要するが、症例をみると、もともと心不全や狭心症などの心臓病を患っている患者である。
体重増加、むくみだけでなく、息切れ、動悸、だるさなど総合的に判断して受診勧奨すべきである。
数日で体重2~3kgの増加があると気になるが、1日の体重変動でも0.5~2kgくらいの変動は健常者でもある。
「以前より体重が増えた」という患者の言葉だけでは、感覚的な印象も否めないので、測定時間帯や体重を記録してもらって医師に見せるよう指導したい。
日本人は糖尿病になりやすい
日本人は2型糖尿病が多いらしいです。
農耕民族はゆっくり食事ができた、狩猟民族は急いで食事をする必要があった、という文化から欧米人と日本人ではインスリン分泌能力に違いがあるようです。
インスリンで太る?
2011年11月、大相撲の力士が食欲を増進させ、体重を増加するためにインスリン注射を使用していたことが明らかになりました。
しかし、日本相撲協会の薬物使用禁止規定では、禁止表国際基準に掲載されているインスリンは使用が禁止されていないため、口頭注意のみで処分は下されませんでした。
インスリンが必要以上に存在すると脂肪の合成が促進され、太る。
インスリン注射でも必要以上に投与されている患者さんの場合、往々にして太ってくることがあります。
SU薬の場合はインスリンの分泌を促進させるので、必要以上に出る可能性があります。
必要以上に出て血糖値が下がると、多くの方はお腹がすいて、そこで食べてしまうのです。
そうすると血糖値が上がり、その状態で病院に行くと、またSU薬を増やしましょうという悪循環になる可能性もあるわけです。
インスリンの場合も同様で、インスリンが必要以上に投与されると、やはり血糖値が下がり、お腹がすいて低血糖気味になる。
そこでつい食べ過ぎてしまう。
そうすると血糖値が上がってくる。
それを繰り返すと血糖は徐々に上がってしまい、やはり病院に行くと、これはインスリンがちょっと足りないのでしょうということになり、またインスリンの投与量を増やされてしまうわけです。
悪循環。
インスリンと中性脂肪
インスリンは、肝臓での中性脂肪の合成も促進する。
インスリンがたくさん分泌されると、合成される中性脂肪の量も増えます。
そのためリポたんぱくリパーゼの働きが追いつかず、血液中の中性脂肪の値が上がりやすくなるのです。
アクトスで太る?
糖尿病の薬であるアクトスを飲むと太ります。
糖尿病の薬を飲んで太ってしまうというのは、何か矛盾しているような気もしますが、アクトスを飲んで太る、というのは薬が効いている証拠です。
アクトスはインスリンの効きが悪くなっている「インスリン抵抗性」という状態を改善する薬です。
インスリンの働きが悪いために、血中の糖(グルコース)を細胞に取り込めないため、血糖値が高くなっているのです。
アクトスを飲めば、血中の糖を細胞に取り込むことができるようになり、細胞に取り込んだ糖は脂肪として蓄積されます。そのために太るのです。
ピオグリタゾン塩酸塩は脂肪細胞核内PPAR-γに作用することが知られています。
脂肪細胞を増加させるため、食事に注意が払われないと肥満になる傾向があることから、食事療法の重要性を理解してもらうことが大切です。
やせる薬
トピナでやせる?
トピナの副作用として体重減少が高頻度で起こることが知られている。
添付文書をみると、10%以上の頻度とのことで、かなり高い割合。
0.1~5%未満で体重増加という副作用もありますが。
体重減少を来すことがあるので、本剤投与中、特に長期投与時には、定期的に体重計測を実施するなど患者の状態を慎重に観察し、徴候が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
という注意書きもある。
なぜ、トピラマートで体重が減るのか。
そのメカニズムはよくわかっていません。
トピラマートを服用すると食欲が低下することがあるのですが、これだけでは体重減少を説明することができません。
食欲低下がない患者さんでも体重が減ることがあるからです。
トピラマートの用量が少なくても、多くても、どちらでも体重減少は生じます。
薬用量が多すぎて体重が減るというわけでもない。
この副作用を利用して、抗精神病薬による食欲亢進や体重増加を抑える目的で、ジプレキサなどと併用されることがある。
海外ではその有効性を支持する報告が相次いでいる。
ただ現時点では、日本では適応外であることを患者が理解し、服薬を望んだ場合に限って用いるべきである。
GLP-1受容体作動薬でやせる?
バイエッタやビクトーザなどのGLP-1受容体作動薬でやせるという話がある。
GLP-1と同様に、バイエッタなどのGLP-1受容体作動薬は、膵臓に働きかけ、インスリンを分泌することで、強力に血糖値の指標であるHbA1cを下げます。
食欲低下作用によって、食事量が減ることで、体重減少作用も知られています。
また、肝臓にある迷走神経に作用して、胃の排出速度を低下させる事が知られています。
胃の排出速度を低下させることで、食物が胃に入ってから小腸へと移動する速度が低下します。それによって、小腸から吸収される、ブドウ糖の濃度の上昇を抑えることができるようになります。つまり、この胃に対する作用によって、食後高血糖を抑制する事ができるのです。
胃に食物が入ったままだと食欲が出ない。
ビクトーザの副作用として以下のようなものがある。
3. 消化器
5%以上
便秘、悪心4. 消化器
1~5%未満
下痢、胃不快感、食欲減退、消化不良、腹部膨満、嘔吐5. 消化器
0.3~1%未満
上腹部痛、逆流性食道炎、胃炎、食欲不振、胃腸炎
バイエッタやビクトーザで、吐き気や胃もたれが出るのは効果が出ている証拠でもある。
薬を使って気持ち悪くなる→食欲がなくなる→やせる という簡単な機序。これでQOL的には良いのかどうか?
肥満とインクレチンの関係
インクレチンのうち、GIPは脂肪蓄積をもたらすことが示されていますが、同時にGLP-1は食物の胃からの排泄を遅延させ、満腹中枢を介した食欲低下などにより、体重減少に寄与することが示されています。
両者が拮抗して作用することや血中GLP-1濃度との関連から、DPP-4阻害薬は体重の増減に対しては中立的な薬剤であると考えられています。
GIP受容体やGLP-1受容体は膵β細胞以外にも発現しています。
GIP受容体は脂肪細胞に発現しており、GIPが脂肪細胞を刺激すると、脂肪細胞へ栄養素を蓄積します。
GLP-1を高濃度で投与すると食欲を抑制します。
そのため、GIPの刺激が強くなると体重増加につながり、GLP-1の刺激が強くなると体重減少を促すという、まったく異なる方向に向います。
インクレチンの膵外作用
インクレチンは、膵臓に対する作用(膵作用)だけでなく、膵臓以外の臓器や組織に対する作用(膵外作用)も有している。
インクレチンの膵作用および膵外作用を要約すると、膵作用として、GIPおよびGLP-1のいずれもインスリン分泌を促進させるとともに、膵β細胞数を増加させる。
膵外作用として、GLP-1は食欲抑制によって体重を減少させ、GIPは脂肪蓄積によって体重を増加させる。
DPP4阻害薬では痩せない?
DPP4阻害薬の働きでは血中GLP-1濃度は血糖低下作用までしか働かず、体重減少作用は持たない。
GLP-1受容体作動薬は、高濃度の作用で体重・食欲も抑える。
DPP-4阻害薬は生理的GLP-1濃度を2倍程度上昇させるが、このレベルでは体重・食欲低下作用はほとんどないと言われている。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
4 件のコメント
コンサータは体重が減少する薬ではありませんか?食欲減退作用などもありますし、体重増加の副作用はないと思います
コメントありがとうございます。
そうですね。「体重増加」で検索して中身を見てなかったのかもしれません。気を付けます。
ご指摘ありがとうございます。
はじめまして!子供がインチュニブを飲んでいるのですが、浮腫がひどく午後まで起きれない日があります。
食物アレルギーの疑いもありますが、インチュニブの可能性も疑ってます。
インチュニブは、降圧剤ですがACE阻害薬と同じ作用でしょうか?
コメントありがとうございます。
インチュニブ(グアンファシン)は選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬という分類の薬で、ACE阻害薬とは違います。降圧剤としては一般的なものではありません。
「AD/HDの治療効果における詳細な作用機序は不明」とのことです。
副作用の項目をみても「浮腫」という文言は見当たらないので、一般的な薬に比べて浮腫が多いというわけではなさそうですが、アレルギー反応はどのような物質でも起こりうるので可能性としてゼロではありません。
休薬して浮腫が治まれば、原因の可能性も高まると思いますので、医師と相談してみてください。