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レキサルティとエビリファイの違いは?
公開. 更新. 投稿者:統合失調症.この記事は約5分37秒で読めます.
8,175 ビュー. カテゴリ:レキサルティ
レキサルティ(ブレクスピプラゾール)という抗精神病薬が、統合失調症の適応で国内製造販売承認を取得した。
大塚製薬の薬で、エビリファイ(アリピプラゾール水和物)の構造変換の過程で発見された化合物とのこと。
構造式をみるとそっくりさんです。
新しい作用機序で、Serotonin-Dopamine Activity Modulator(SDAM)と呼ばれる。日本語で言うとセロトニン・ドパミン活性修飾薬?
ドパミンD2受容体およびセロトニン5HT1A受容体に強く結合してパーシャルアゴニストとして働き、セロトニン5HT2A受容体にはアンタゴニストとして働くらしい。
エビリファイはDSS=ドパミン・システムスタビライザー(Dopamine System Stabilizer)で、ドパミンが大量に放出されているときには抑制的に働き、ドパミンが少量しか放出されていないときには刺激する方向で作用するドパミンパーシャルアゴニスト。ドパミンに対する作用のほかに、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用やセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用をも併せ持つ。
陽性症状と陰性症状
統合失調症の症状からおさらいすると、陽性症状と陰性症状があって、陽性症状にドパミン、陰性症状にセロトニンが強くかかわる。
陽性症状を抑えるため、ドパミンの作用を弱める薬が使われる。
しかし、ドパミンを強く抑えすぎてしまうと、元気がなくなったり(陰性症状)、パーキンソン病と同じような状態(錐体外路障害)になってしまう。そのため、受容体の働きをほどよい感じに阻害・活性化させるパーシャルアゴニストがベストとされる。
レキサルティもエビリファイも、ドパミン受容体に対してはパーシャルアゴニストとして、緩やかに働くので同じような機序。
セロトニン受容体はたくさんあるので、また難しいですが、ドパミン神経系と深い関係があるのはセロトニン5-HT2A受容体。
セロトニン5-HT2A受容体はドパミン神経のシナプス前部と細胞体に豊富に存在し、シナプス近傍ではドパミンの生合成とシナプス間隙への放出を抑制し,細胞体ではドパミン神経の神経発火を抑制するという調節を行っている。そのため5-HT2A受容体に蓋をするアンタゴニストが存在すると、ドパミン神経の神経発火とドパミンのシナプスからの放出が増大することになる。
SDA(セロトニンドパミンアンタゴニスト)と呼ばれるリスパダールなどは、ドパミンアンタゴニストとして作用を発揮し、セロトニン受容体にも拮抗することで、必要な場所にはドパミン放出をして陰性症状を改善するという理屈である。
セロトニンは、ストレスを感じると分泌されるホルモン。過剰になれば、不安を感じ、過少になれば、抑うつ・意欲減退。
セロトニンの放出に関わる5-HT受容体として、5-HT1A受容体が知られています。
セロトニン5HT1A受容体に対するパーシャルアゴニストといえば、セディールです。
レキサルティとエビリファイの違い
なんか、レキサルティもエビリファイもほとんど違いは無い。SDAMとか新しい薬効分類を作って治療薬マニュアルを騒がしくするほどのものでもないと感じる。
大塚製薬がエビリファイのジェネリック対策として発売するあざとい新商品です、としか思えなくなってきましたが、患者さんにそうは言ってられないので、エビリファイよりも効果が高く副作用の少ない薬であると説明する。
商品説明では、エビリファイとレキサルティの差異として、以下のように説明されている。
・レキサルティはエビリファイよりもドパミンD₂受容体への低い固有活性を有している
・レキサルティは前治療薬のCP換算値で800㎎程度まで治療対象となり得る
・切り替え時の一時的な悪化リスクや、落ち着きのなさ、不眠、焦燥感はドパミンD₂受容体の固有活性に関連すると考えられる
エビリファイとの違いで特徴的なのが、プロラクチンに対する副作用の部分です。
レキサルティによる高プロラクチン血症の頻度が1~5%未満で、血中プロラクチン減少が1%未満。
エビリファイの場合、プロラクチン低下が1~5%未満で、プロラクチン上昇が1%未満。
通常、ドパミンがプロラクチンの分泌を抑えているので、ドパミンの働きを抑える抗精神病薬の使用により高プロラクチン血症になる(月経不順や勃起不全、乳汁分泌などの副作用が出る)ことが多い。
しかしエビリファイは低プロラクチン血症になるほうが多いので、それだけ緩やかなパーシャルアゴニストといえる。
エビリファイ弱し、レキサルティ強し。
DSS
ドパミン、セトロニン受容体に対して親和性が高い。
ドパミン作動性神経伝達が過剰のときはドパミンD2受容体のアンタゴニストとして、低下しているときはアゴニストとして、ドパミン神経伝達を安定化させる。
陽性症状への効果を示すとともに陰性症状をも改善する。
主にD2受容体に結合し、過剰なドパミン刺激を抑制する。
一方で弱いD2受容体刺激作用を示すことから錐体外路症状が少ないとされる。
DPA:dopamine partial agonist
DPA(ドパミン受容体部分作動薬)
エビリファイ
・統合失調症以外の双極性障害の躁状態、うつ病、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性にも適応をもつ
・D2受容体に高い親和性を示すが、固有活性は内在性のドパミンよりも低く、シナプス間隙のドパミン濃度により、作動薬あるいは拮抗薬として作用が変化するため、錐体外路症状や高プロラクチン血症などの副作用が生じにくい
・体重増加、QT延長、過鎮静が生じにくい
レキサルティ
・アリピプラゾールよりセロトニン5-HT2A受容体遮断を持つため、アカシジアやパーキンソン症状が出にくい。
・用量の幅は狭い
・ヒスタミンH1受容体に対する親和性は低く、過鎮静や体重増加は比較的少ないとされている。また、ムスカリン受容体に対する結合親和性も低い1)。
参考文献
1)Citrome, Leslie et al. “The preclinical profile of brexpiprazole: what is its clinical relevance for the treatment of psychiatric disorders?.” Expert review of neurotherapeutics vol. 15,10 (2015): 1219-29. doi:10.1586/14737175.2015.1086269
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