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筋肉が少ないと腎機能が良く見える?
公開. 更新. 投稿者:腎臓病/透析.この記事は約5分56秒で読めます.
7,337 ビュー. カテゴリ:クレアチニンと筋肉と腎機能
たまにeGFRが100を超えている患者がいるが、eGFRが高値であるからといって、腎機能が良好で健康体であるとは言い難い。
まず、そもそものクレアチニンの話から。
腎機能の評価にはクレアチニンクリアランスが使われますが、クレアチニンクリアランスの測定が困難な場合は血漿中のクレアチニン値を参考とします。
クレアチニンはクレアチンの代謝最終産物であり、筋肉細胞内でクレアチンから産生されるため筋肉量に比例します。
クレアチニンは体内で酸化分解されることなく、また、腎糸球体で全量が濾過され、尿細管・集合管で再吸収されることなく尿中に排泄されます。
したがって、そのクリアランスは、クレアチニンを含んだ血液または血漿の何mLが1分間に浄化されるかを意味し、GFR(糸球体ろ過量)の指標として用いられます。
GFRが減少すると血中クレアチニン濃度は逆相関して増加します。
高齢者では、筋肉量が減少しクレアチニンの生成が減少するため、患者によっては、GERが低下しているにもかかわらず腎機能の指標となる血清クレアチニン値が正常域であり上昇しないことがあります。
そのため高齢者では、血清クレアチニン値が正常であっても腎機能は加齢により自然低下しているため、年齢や体重からクレアチニンクリアランスを考慮して腎機能を評価します。
クレアチニンと腎機能の関係
「クレアチニン値が4.0だったんですけど」と言われてもよくわからず困る私です。
クレアチニンは筋肉から生成される老廃物で、腎機能を推定する指標となります。
クレアチニンの基準値は、
男性…0.5~1.1mg/dl
女性…0.4~0.8mg/dl
クレアチニン値は筋肉量に比例するので、一般に女性より男性のほうが10~20%高値になる。
年齢とともに筋肉量は減少するが、腎糸球体濾過率も低下していくので、年齢による変動はほとんどない。
日本人間ドック学会の判定基準では、男性が1.1~1.29mg/dl、女性が0.8~0.99mg/dlで、要経過観察・生活改善が必要とされています。これを超えると治療が必要となる。
一般に中程度の腎不全では1.5mg/dlを超え、重症では2.4mg/dl以上になります。そして、クレアチニンの値が5mg/dlを超えると回復は難しくなり、10mg/dlが人工透析を始める一つの目安となります。
血中クレアチニン値でも腎機能の指標となりますが、腎機能が50%以下になるまでは上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には適当でない。
なので、血液中のクレアチニンをどれだけクリア(きれいに)できたかというクレアチニン・クリアランスという検査値が腎機能を測るために用いられる。
採血だけで測れる検査値であれば、外来で簡単に求めることができる。
しかし、採尿が必要な検査となると、外来では尿意を催さない場合もあるし、しかもクレアチニン・クリアランスの測定にはある程度の蓄尿を必要とし、24時間の尿量が必要らしいので、入院しなければ求めることができない。
なので、クレアチニン・クリアランスを推測する計算式というのが、臨床では使われている。
クレアチニンクリアランスの推測
①年齢しかわからない場合
25歳を過ぎるとクレアチニンクリアランス(CLcr)は1%/年で低下するらしい。
健康成人のクレアチニンクリアランスは100mL/分とされるので、
CLcr=100mL/min-(年齢-25)×1.0%
50歳:75mL/分
60歳:65mL/分
70歳:55mL/分
80歳:45mL/分
90歳:35mL/分
100歳:25mL/分
と、推測される。
クレアチニンクリアランスは、年齢とともに減少していくのが普通です。40歳以上の人は年齢が10才上がると、6.5ml/min./1.73m2程度減少するとも言われる。
ガスターやファムビルなど腎機能に応じて投与量が設定されている医薬品は、60mL/分を切ると減量するように書かれているので、70歳過ぎたような高齢者ではほぼ投与量を減ずる用量設定が必要になる。
検査値の確認できない患者であっても、年齢から腎機能を推測し疑義照会をかけるくらいのことは必要なのだろう。
②血清クレアチニン(S-Cr)値がわかる場合
Cockcroft-Gault法
男性:Ccr = {(140-年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}
女性:Ccr = 0.85×{(140-年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}
③糸球体濾過速度 e-GFRがわかる場合
CLcr=e-GFR/0.719
ちなみにクレアチニンクリアランスの基準値は、
男性…90~120ml/分
女性…80~110ml/分
年齢と体重だけでおおよその腎機能がわかればいいのにな。
今後、血清クレアチニン値ぐらいは処方せんに記載されるようになってくればいいと思う。
80歳くらいだと、60〜70ml/minくらいには下がっていそうですが、個人差もありそう。
ステージ | GFRの値 | 慢性腎臓病の程度 |
---|---|---|
ステージ1 | 90以上 | 腎機能はほぼ正常だが、タンパク尿などがある。 |
ステージ2 | 60〜89 | まだ無自覚の人が多い。高血圧などで悪化の恐れ。 |
ステージ3 | 30〜59 | むくみなどの症状がでる。適切な治療が大切。 |
ステージ4 | 15〜29 | 厳しい食事療法なども必要に。 |
ステージ5 | 15未満 | 人工透析を開始する段階。 |
とある文献に年齢別のeGFR平均値が載っていた。
eGFR 平均値(単位:ml/dl/1.73 ㎡)
35~39 歳:86.4
40~44 歳:83.0
45~49 歳:79.8
50~54 歳:77.4
55~59 歳:75.5
60~ 64 歳:73.2
65~69 歳:70.9
70~74 歳:67.8
ということで、80歳くらいになると60くらいまで下がる。
腎機能の指標に用いられる数値と計算式
自分のクレアチニンクリアランスCCr値は、Cockcroft-Gaultの計算式によりSCr(血清クレアチニン値)を用いて推算できます。
男性:CCr(mL/min)={(140-年齢)X体重(kg)}/(72XSCr)(mg/dL)
女性:CCr(mL/min)={(140-年齢)X体重(kg)}/(72XSCr)(mg/dL) ×0.85
女性は男性の値に0.85をかける。
腎機能の指標に用いられる数値と計算式
Cockcroft-Gaultの式
男性:CCr(mL/分)= Cr{(140-年齢)×体重(kg)}/{72×Cr(mg/dL)}
女性:CCr=0.85×{(140-年齢)×体重(kg)}/{72×Cr(mg/dL)}
(Ccr:クレアチニンクリアランス、Cr:血清クレアチニン)
推定糸球体濾過量(eGFR)の式
男性:eGFR(mL/分/1.73mの2乗)=194×Cr値の-1.094乗×年齢の-2.87乗
女性:男性eGFR×0.739
体表面積を求める式
男性女性とも:体表面積=体重の0.425乗×身長の0.725乗×0.007184
上記の式を覚えて投薬時に計算する、なんて鬼畜の所業はしようとせず、今はスマホという便利な文明の利器があるので、大鵬薬品工業の神アプリ「投与量計算機」をダウンロードして使うべし。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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