2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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クレアチニン値から腎機能を読む

クレアチニン値と腎機能

みなさん、腎機能確認してますか?

検査結果を見せてもらっても、腎機能に関する項目は「クレアチニン」と「尿素窒素」しかなく、困ったことはありませんか?
クレアチニンクリアランスとかeGFRが載っていればいいのに。。。とか思ったり。
腎機能を正確に表すのは血中尿素窒素(BUN)や尿酸値よりも血清クレアチニン値です。

クレアチニンとかクレアチニンクリアランスとかeGFRとか、イマイチわかってないという方はいませんか?
添付文書にも、クレアチニンクリアランスで載っていたり、eGFRで載っていたり、統一してくれ、と思います。

患者から提示される検査結果のクレアチニン値だけから腎機能を推測するとすると、
血清クレアチニン濃度の正常値は男性で0.6~1.2mg/dL、女性で0.4~1.0mg/dLです。そのため血清クレアチニン値が1.5mg/dLであれば慢性腎不全と考えてよい。小柄な高齢女性で血清クレアチニンが2mg/dL以上であれば、いずれ透析が必要となる重度腎不全と考えられる。

血清クレアチニン値が男性1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の場合、メトホルミンを投与しないとされている。1.1~1.2mg/dL程度でも侮れない。

一般に中程度の腎不全では1.5mg/dlを超え、重症では2.4mg/dl以上になります。そして、クレアチニンの値が5mg/dlを超えると回復は難しくなり、10mg/dlが人工透析を始める一つの目安となります。

ただ、血中クレアチニン値は腎機能が50%以下になるまでは上昇しないため、軽度の腎機能障害の判定には適当でありません。

クレアチニンクリアランスの求め方は、Cockcroft-Gault法を用いる。
男性:Ccr = {(140-年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}
女性:Ccr = 0.85×{(140-年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}

腎機能の指標Ccr:mL/min
正常80<Ccr
軽度低下50≦Ccr≦80
中等度低下30≦Ccr<50
高度低下Ccr<30

推定糸球体濾過量(eGFR)の求め方は以下の式を用いる。
男性:eGFR(mL/分/1.73mの2乗)=194×Cr値の-1.094乗×年齢の-2.87乗
女性:男性eGFR×0.739

式を見てもさっぱり、計算する気になれません。
しかも慌ただしい投薬時に。

そんなときは、アプリを使いましょう。大鵬薬品工業の腎機能関連計算機は使えます。
患者の前でスマホをいじるのは好ましくないですが、事情を説明すれば納得されます。患者さん本人にもアプリをダウンロードして使ってもらえばアドヒアランスの向上にもつながるかも知れません。

筋肉量が少ない患者には適さない?

クレアチニンの前駆物質であるクレアチンはその大部分が筋肉中に存在するため、クレアチニンの産生量は筋肉量の影響を受ける。

すなわち、筋肉量が少ない患者の場合は、腎機能が低下しても血清クレアチニン値(Scr)は低値となる。

したがって、長期臥床状態の患者や四肢欠損がある患者、筋ジストロフィーなどの筋疾患を有する患者の場合、Scrよる腎機能評価は不適である。特に、Scrが0.6㎎/dL以下の患者の場合は注意が必要である。このような患者では、筋肉量に依存しないとされるシスタチンCを用いた腎機能評価が有用であることが多い。

肥満患者にCockcroft-Gault式は適さない?

Cockcroft-Gault式は、
男性:Ccr = {(140-年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}
女性:Ccr = 0.85×{(140-年齢)×体重(kg)}/{72×血清クレアチニン値(mg/dL)}
と、式の分子に体重があり、体重が2倍になるとCcr式の計算結果は2倍になる。

実際には体重とCcrは比例しないため、CG式は肥満患者ほど腎機能を過大評価してしまうという欠点がある。

したがって、肥満患者においてCG式を使用する場合、理想体重や標準体重を代入するなどの注意が必要である。

腎機能の検査値は高齢者には使えない?

eGFRやクレアチニンクリアランスの結果が良くても、それで腎機能に問題がないとは言い切れない。

特に高齢者において、そのことが言える。
それはなぜか?

そもそも、血清クレアチニン値が低いのは、腎機能が良いからではなく、栄養状態が悪いから、という可能性があるからです。

高齢者・女性など筋肉量が少ない患者では、腎機能が低下しているにもかかわらず血清クレアチニン値が基準範囲内にとどまる場合があります。
また、ADLが低く長期臥床である高齢者や筋肉量が低下している患者でも、血清クレアチニン値が基準範囲内かどうかだけで判断すると腎機能低下を見過ごすことになります。
さらに、クレアチニンの尿細管分泌が亢進している低アルブミン血症患者でも、血清クレアチン値では腎機能を正確に評価できずに腎機能を過大評価する可能性もあります。こうした患者では、腎機能が良くて血清クレアチニン値が低いのか、高齢で栄養状態が悪くて血清クレアチニン値が低いのかの判断が必要です。

クレアチニンクリアランスとeGFRの違い

eGFRは日本腎臓学会が作った計算式で、日本独自の計算式です。
Cockcroft-Gaultの式は、随分昔に海外で作られた計算式です。(詳細は不明)

かつてGFRは1年に1mL/minほど低下すると考えられていましたが、多くの日本人を対象に実測GFR(イヌリンクリアランス)を測定すると腎機能は1年に0.5mL/min程度しか低下しないことがわかりました。
だから篩式であるCockcroft-Gault式に比べるとeGFRのほうが高めに出ます。
この場合、eGFRが腎機能を高く推算しすぎるのではなく、Cockcroft-Gault式が加齢の影響をより受けやすい、つまり高齢者ではCockcroft-Gault式では腎機能を低く推算してしまうと考えられます。

GFR

GFRは基準物質が一定時間に糸球体を濾過される量である。
GFRはmL/minで表されるが、これは単位時間当たりに排泄される物質量を血漿量に換算したものとなり、これは薬剤の腎クリアランスで考えると、1分間にその量の血漿に含まれる薬剤が完全に除去されることを表す。
腎排泄型の薬剤はそのクリアランスが腎機能に依存するため、腎機能に応じた適切なGFRの把握が必要となる。
なお、mL/min/1.73㎡であらわされるGFRは標準体表面積1.73㎡で補正したものとなる。

標準体型(170cm、63kg)などであれば使用しても良いが、高齢者の多くが小柄で痩せているため、体表面積未補正値であるeGFR(mL/min)を使用する。

eGFR(mL/min/1.73㎡)を小柄な人で計算しなおす場合、eGFR×(体表面積/1.73)で計算しなおす必要がある。計算し直すとeGFRが10くらい下がることもある。

CCr≒eGFR?

添付文書のCCr(mL/min)≒eGFR(mL/min)と考えてよい。
腎機能に応じて調整が必要である薬剤の添付文書にはCCr別の投与基準が収載されているが、そのほとんどが海外の治験データであり、血清Cr値はJaffe法によって測定されている。
Jaffe法では血清でアセトン体、ピルビン酸、ビタミンCなどとも反応するため、真のCr濃度より1.2倍程度高く測定されるが、尿中には反応陽性物質がないため、真のCr濃度が測定される。
日本の測定法は酵素法であり血清Cr濃度も尿中Cr濃度も真の濃度が測定される。
そのためJaffe法ではCCr(mL/min)=(尿中Cr値×尿量)/(血清Cr値×1440)で表される実測CCrは酵素法の実測CCrよりも20~30%低い値となる。
またCrは尿細管で分泌されるためGFRは実測したCCrよりも約30%低値を示し〔GFR(mL/min)=0.715×実測CCr(mL/min)〕、結果としてJaffe法による実測CCrはGFRに近似し、添付文書においてCCr(mL/min)≒eGFR(mL/min)と考えて投与量決定の指標としてよい。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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