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パキロビッドとラゲブリオの違い
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約4分6秒で読めます.
13,109 ビュー. カテゴリ:パキロビッドパック
ラゲブリオとパキロビッドどっちがいい?
うちの薬局で使う機会は訪れるのだろうか、と懐疑的になってきたラゲブリオカプセルですが、また新しく新型コロナウイルス感染症治療薬が特例承認されました。
パキロビッドパック。
ニルマトレルビルとリトナビルの2種類の医薬品がセットになったパック製剤です。ピロリ菌除菌薬のボノピオンパックとかボノサップパックみたいなやつ。
新型コロナウイルスの増殖を阻害する3CLプロテアーゼ阻害剤「ニルマトレルビル」と、同剤の血中濃度を維持するための抗ウイルス剤「リトナビル」。
リトナビルは既存の抗HIV薬「ノービア錠」「カレトラ配合錠」にも含有されており、プロテアーゼ阻害剤との組み合わせは、ほぼ抗HIV薬という印象。
ラゲブリオとの大きな違いは、
・併用禁忌の多さ
・妊婦に投与できる
・パック製剤である
・腎機能症患者で減量が必要
・12歳から投与できる
といった点でしょうか。
パキロビッドの併用禁忌
パキロビッドの添付文書をみて、飛び込んでくるのが「併用禁忌」の多さ。使いづらそう。
ラゲブリオに併用禁忌はなく、妊婦に対する禁忌くらいだった。逆にパキロビッドは妊婦に禁忌とはなっておらず、妊婦にはパキロビッドという選択がなされるのかも。
まず、パキロビッドと併用禁忌の薬をみていこう1)。
次の薬剤を投与中の患者:アンピロキシカム、ピロキシカム、エレトリプタン臭化水素酸塩、アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アミオダロン塩酸塩、ベプリジル塩酸塩水和物、フレカイニド酢酸塩、プロパフェノン塩酸塩、キニジン硫酸塩水和物、リバーロキサバン、リファブチン、ブロナンセリン、ルラシドン塩酸塩、ピモジド、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、エルゴメトリンマレイン酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ)、バルデナフィル塩酸塩水和物、ロミタピドメシル酸塩、ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉、ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、エスタゾラム、フルラゼパム塩酸塩、トリアゾラム、ミダゾラム、リオシグアト、ボリコナゾール、アパルタミド、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム水和物、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
リトナビルは既存の抗HIV薬にも含有されており、代謝酵素(CYP3A)の働きを阻害する作用があるため併用禁忌が多いです。
しかし、リトナビルが入っているノービア錠やカレトラ配合錠よりも併用禁忌種目が多いので、ニルマトレルビルと相性よくないものもありそう。
オルメテック、カルブロック、イグザレルト、ハルシオン、テグレトール、セルシン等、比較的処方量の多い薬も禁忌対象なのがやっかいなところです。
あと、もう一つ。
腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者
という禁忌項目もあります。コルヒチンの血中濃度が上昇するおそれがあるという。
コルヒチン連日投与している患者は少ないが、注意する。
パキロビッドと腎機能
パキロビッドは中等度の腎機能障害患者に減量投与が指示されている。
中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min以上60mL/min未満)には、ニルマトレルビルとして1回150mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨しない。
eGFR60未満てけっこういそうですね。
てゆーか、パック製剤でしょ。切り取っていいのかな。切り取るしかないけど。で、切り取ったニルマトレビルは廃棄するしかないでしょ。そこらへんの報告とか、さらにめんどくさそう。
パキロビッドと小児
パキロビッドの用法は、
通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。
となっており、ラゲブリオの用法が、
通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。
となっているので、12歳~18歳のティーンエイジャーにはパキロビッドが処方される可能性がある。
ラゲブリオは「18歳未満を対象とした臨床試験は実施していない。」というだけなので、パキロビッドの方が小児に安心して使えるというわけではないですけどね。
HIV感染者とパキロビッド
すでに抗HIV薬を服用しているHIV感染患者が新型コロナウイルスに感染した場合、パキロビッドを飲む必要があるのかないのか。
リトナビル又はコビシスタットを含む抗HIV療法と本剤を併用する場合、リトナビルの用量調節は不要である。
ノービアとかカレトラ飲んでる患者さんでも、パキロビッド上乗せで飲んでいいってことらしい。
適正使用を推進するため、2月27日まではコロナ患者受け入れ病床がある医療機関約2000カ所の院内処方に限定して使用を認め、併用できない薬剤のスクリーニング体制などを確認したうえで、月末からは院外薬局でも処方可能にする予定とのこと。
また、会社から「在庫しとけ」みたいな指示がくるんとちゃうかと戦々恐々。
参考文献
1)パキロビッド 添付文書
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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