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コロナ治療薬は発症後5日経っても使える?
公開. 更新. 投稿者: 5,707 ビュー. カテゴリ:風邪/インフルエンザ.この記事は約7分34秒で読めます.
新型コロナ治療薬の発症後使用開始時期

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」があります。
代表的な薬として、
- ラゲブリオ(モルヌピラビル)
- パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)
- ゾコーバ(エンシトレルビル)
- ベクルリー(レムデシビル)
などがあります。
インフルエンザ治療薬では、「発症後48時間以内に開始する」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。
では、新型コロナの治療薬はどうなのでしょうか?
「コロナと診断されたけれど、発症してから5日経っている。今から薬を飲んでもいいの?」
というケースについて考えてみます。
コロナ治療薬にも「いつまでに開始するか」がある
新型コロナの抗ウイルス薬は、いつ開始しても同じように効果が期待できるわけではありません。
抗ウイルス薬は、基本的にウイルスが増殖している感染初期に使用する薬です。
代表的な経口治療薬について、厚生労働省は、
| 薬 | 一般名 | 投与開始時期の目安 |
|---|---|---|
| ゾコーバ | エンシトレルビル | 発症から3日以内 |
| ラゲブリオ | モルヌピラビル | 発症から5日以内 |
| パキロビッド | ニルマトレルビル/リトナビル | 発症から5日以内 |
としています。
つまり、「コロナの薬は発症後5日以内」という一律のルールではありません。
ゾコーバのほうが投与開始できる期間が短いことに注意が必要です。
「発症から5日以内」とは?
ここで迷いやすいのが、
「5日以内なら、発症から5日経った日にも使えるの?」
という問題です。
添付文書では「○日以内」と単純に書かれているだけではなく、臨床試験でどの時点までに投与された患者について有効性が確認されているのか、という考え方が重要になります。
ラゲブリオ
ラゲブリオの添付文書では、
SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。
とされ、さらに、
症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
とされています。
つまり、症状発現から5日以内に開始することが基本になります。
「5日を過ぎて6日目になってしまったけれど、1日くらいなら大丈夫だろう」という考え方はできません。
6日目以降については、単に「少し効果が弱くなる」と確認されているのではなく、有効性を裏付けるデータが得られていないためです。
パキロビッドも発症後5日以内
パキロビッドについても、基本的には症状発現から5日以内に開始します。
パキロビッドは、新型コロナによる重症化リスクの高い患者などで使用が検討される抗ウイルス薬です。
ただし、パキロビッドにはリトナビルが含まれているため、CYP3Aを介した薬物相互作用が非常に多いという特徴があります。
そのため、
「発症から5日以内だから使える」
というだけでは判断できません。
併用薬、腎機能、肝機能なども確認したうえで投与可能か判断する必要があります。
特に薬局では、発症日だけでなく併用薬の確認が非常に重要な薬です。
ゾコーバは「5日以内」ではなく「3日以内」
さらに注意したいのがゾコーバです。
ゾコーバについては、添付文書上、
「症状が発現してから速やかに72時間以内に投与を開始すること」
とされています。
有効性は症状発現から3日目までに投与を開始した患者で推定されており、72時間経過後に投与を開始した患者については、有効性を裏付けるデータが得られていません。
そのため、
発症後5日目だから、まだコロナ治療薬が使える
と考えてゾコーバを選択することはできません。
ラゲブリオ・パキロビッドとゾコーバでは、投与開始時期が異なります。
なぜ早く飲まないといけない?
これは抗ウイルス薬の作用を考えるとわかりやすくなります。
新型コロナウイルスに感染すると、
感染
↓
ウイルス増殖
↓
症状出現
↓
免疫反応・炎症
↓
回復または重症化
という経過をたどります。
抗ウイルス薬が主に狙っているのは、前半の**「ウイルス増殖」**です。
ウイルスが盛んに増えている時期に、その増殖を抑えることで、その後の症状や重症化を抑えることが期待されます。
ところが時間が経過すると、病態に占める「ウイルスそのものの増殖」の割合が低下し、宿主側の免疫反応や炎症などの影響が大きくなってきます。
そのため抗ウイルス薬は、
「症状がひどくなってから飲む薬」ではなく、「感染初期にウイルスの増殖を抑える薬」
と考えると理解しやすいでしょう。
インフルエンザの「48時間以内」と似ている?
考え方としては似ています。
インフルエンザ治療薬も、発症後できるだけ早期に開始することが重要です。
ただし、時間の目安は同じではありません。
大まかに比較すると、
| 感染症・薬 | 投与開始時期 |
|---|---|
| インフルエンザ治療薬 | 一般に発症後48時間以内の開始が効果的 |
| ゾコーバ | 発症後72時間以内 |
| ラゲブリオ | 発症後5日以内 |
| パキロビッド | 発症後5日以内 |
となります。
「インフルエンザは2日、コロナは5日」と覚えてしまうと、ゾコーバを見落とすので注意が必要です。
「検査で陽性になってから5日」ではない
もう一つ重要なのが、いつを起点に数えるのかです。
基本となるのは、
陽性が判明した日ではなく、症状が発現した日
です。
例えば、
月曜日:喉が痛くなる
火曜日:発熱
水曜日:抗原検査
木曜日:新型コロナ陽性と診断
という患者がいた場合、木曜日を「発症日」として数え始めるわけではありません。
症状がいつから始まったのかを確認する必要があります。
そのため薬局でも、
「いつ検査しましたか?」
だけではなく、
「最初に症状が出たのはいつですか?」
という確認が重要になります。
発症後5日を過ぎたら治療できない?
ここも誤解しやすいところです。
「ラゲブリオやパキロビッドを開始できる時期を過ぎた」=「新型コロナの治療が何もできない」ではありません。
抗ウイルス薬を使用するかどうかは、患者の重症度、年齢、基礎疾患、免疫状態、呼吸状態などによって異なります。
また、経口薬だけがCOVID-19の治療薬ではありません。
例えば、点滴静注で使用するベクルリー(レムデシビル)もあります。
ベクルリーは、酸素投与を必要としない患者で重症化リスクを有する場合だけでなく、SARS-CoV-2による肺炎を有する患者などにも使用されます。
そのため、「発症から5日過ぎたから、もうコロナ治療薬は一切使えない」と単純化するのは適切ではありません。
患者の病態によって治療方針そのものが変わります。
5日を過ぎたら自己判断であきらめない
特に注意したいのは、
「発症してからもう6日だから病院に行っても意味がない」
と考えてしまうことです。
高齢者、基礎疾患のある人、免疫抑制状態にある人などでは、新型コロナが重症化する可能性があります。
また、
- 息苦しい
- 呼吸が速い
- 水分がとれない
- 意識状態がおかしい
- 強い倦怠感が続く
- 症状が急速に悪化している
といった場合には、「抗ウイルス薬を開始できる期限」を基準に受診の必要性を判断するものではありません。
抗ウイルス薬の投与期限と、医療機関を受診すべき時期は別の問題です。
薬剤師が確認したい「発症日」
コロナ治療薬の処方箋を受け付けた場合には、「陽性になった日」だけではなく、症状発現日を確認することが重要です。
特に、
ゾコーバ → 72時間以内
ラゲブリオ → 5日以内
パキロビッド → 5日以内
という違いは覚えておきたいところです。
また、投与可能な期間内であっても、妊娠、腎機能、肝機能、併用薬、重症化リスクなど、それぞれの薬剤に応じた確認が必要になります。
とくにゾコーバとパキロビッドでは併用禁忌薬の確認が重要です。
まとめ
「コロナ治療薬は発症後5日経っても使える?」
という質問に対しては、
薬によって違う
というのが答えです。
ラゲブリオとパキロビッドは、基本的に症状発現から5日以内に開始します。
一方、ゾコーバはさらに短く、症状発現から72時間以内に開始します。
重要なのは、「陽性になってから何日」ではなく「症状が出てから何日」なのかという点です。
また、5日を過ぎたからといって、新型コロナに対する治療そのものができなくなるわけではありません。
抗ウイルス薬はウイルス増殖の盛んな感染初期に使用することで効果を期待する薬です。
そのため、
「悪くなったら飲む」のではなく、「必要な患者には早期に使う」
という考え方が重要です。
参考資料
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A」
厚生労働省「急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」
PMDA ラゲブリオ錠・カプセル 添付文書
PMDA パキロビッドパック 添付文書
PMDA ゾコーバ錠 添付文書
PMDA ベクルリー点滴静注用 添付文書



