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インフルエンザに禁忌の薬
公開. 更新. 投稿者:風邪/インフルエンザ.この記事は約4分47秒で読めます.
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インフルエンザに禁忌の薬
アスピリンってインフルエンザに禁忌なの?
インフルエンザに使わないほうがいい薬がある。
①アスピリンなどのサリチル酸系
②ポンタールなどのメフェナム酸製剤
③ボルタレンなどのジクロフェナクナトリウム製剤
はっきりと「インフルエンザに禁忌」となっている薬は無いが、ボルタレンは「インフルエンザの臨床経過中の脳炎・脳症の患者」に対して禁忌となっている。
アスピリン(バファリン)とインフルエンザ
バファリンの添付文書の「重要な基本的注意」には以下のように書かれている。
サリチル酸系製剤の使用実態は我が国と異なるものの,米国においてサリチル酸系製剤とライ症候群との関連性を示す疫学調査報告があるので,本剤を15歳未満の水痘,インフルエンザの患者に投与しないことを原則とするが,やむを得ず投与する場合には,慎重に投与し,投与後の患者の状態を十分に観察すること.
ライ症候群が怖いから、という理由。
市販のバファリンAも同じ成分ですが、インフルエンザに関する記載はみられない。そもそも15歳未満には使ってはいけないからだ。
なので、大人のインフルエンザ患者にはバファリンを使うことも可能。
ジクロフェナク(ボルタレン)とインフルエンザ
ボルタレンの添付文書の「重要な基本的注意」には以下のように記載されている。
ジクロフェナクナトリウム製剤を投与後にライ症候群を発症したとの報告があり、また、同効類薬(サリチル酸系医薬品)とライ症候群との関連性を示す海外の疫学調査報告があるので、本剤を小児のウイルス性疾患の患者に投与しないことを原則とするが、投与する場合には慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察すること。
こちらもライ症候群。
ライ症候群
水痘、インフルエンザ等のウイルス性疾患の先行後、激しい嘔吐、意識障害、痙攣(急性脳浮腫)と肝臓ほか諸臓器の脂肪沈着、ミトコンドリア変形、AST(GOT)、ALT(GPT)、LDH、CK(CPK)の急激な上昇、高アンモニア血症、低プロトロンビン血症、低血糖等の症状が短期間に発現する高死亡率の病態である。
典型的な経過としては、まず風邪の症状があり、それがやや回復した時点で、嘔吐と痙攣とが起こり、それから急速な意識障害が起こって、治療をしなければ、最悪は死に至る、というもの。
アスピリンがライ症候群を引き起こす機序
アスピリンのミトコンドリアに対する毒性が原因とみられています。
ミトコンドリアは、人間の細胞の中にあって、細胞が酸素をエネルギーとして使用するのに、重要な役割を果たしている小器官です。
そのミトコンドリアが障害されることによって、様々な体の異変を生じるのがライ症候群と。
子供にウイルス感染が起こると、まだ未熟な免疫系が活性化され、本来異物であったミトコンドリアが、免疫の攻撃を受け易い状態になる。
そこにアスピリンのミトコンドリアに対する毒性が加わってライ症候群になる、という話。
メフェナム酸(ポンタール)とインフルエンザ
ポンタールの添付文書の「重要な基本的注意」には以下のように記載されている。
小児のインフルエンザに伴う発熱に対しては、原則として本剤を投与しないこと。
アスピリン、ジクロフェナクのようにライ症候群に関する記載もないし、水疱瘡については言及されていない。
ただ「投与する場合には…」という文言も無いので、他2つよりも「投与しちゃダメ」感は強く感じる。
アセトアミノフェンとインフルエンザ
インフルエンザで処方される解熱剤といえば、アセトアミノフェンが定番です。
日本小児科学会の見解としては、小児のインフルエンザに伴う発熱に対して解熱剤を使用するのであれば、アセトアミノフェンが適切であり、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の使用は慎重にすべきである、とのこと。
原則として、がまんできる人には解熱剤は投与しないこと、投与してもアセトアミノフェンの頓用だけにすべきであるとの見解もあります。
しかし、インフルエンザの患者にロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェン(ブルフェン、ユニプロン坐剤)などが処方されることもある。
インフルエンザ患者に対するNSAIDsの使用に関しては、薬剤師によっても意見の分かれるところ。
ロキソニンやブルフェンもダメ、という意見の人もいる。
小児に使う解熱鎮痛剤として、第一選択薬はアセトアミノフェン、第二選択薬がイブプロフェンというのがスタンダードです。
このほかの解熱鎮痛剤が小児に使われないのは、インフルエンザ脳症との関連が指摘されているためです。
イブプロフェンに関しても、COX阻害作用は強いため、脳症を悪化させる可能性は否定できないとして、使用に慎重な医師もいるようです。
正直、頭痛がメインの患者さんであれば、イブくらい使ってもいいかなというのが個人的な意見。
でも、ボルタレンに関しては、私自身が高熱時に使って寒気と痙攣に襲われたことがあるので、解熱作用が強すぎると感じた。
インフルエンザウイルスは熱でやっつけるので、あまり熱を下げすぎる薬はおすすめはしない。アセトアミノフェンがベストであるという意見に異論はない。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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2 件のコメント
ボルタレンの添付文書には
その他の注意
1.
インフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した患者(主として小児)のうち、ジクロフェナクナトリウムを投与された例で予後不良例が多いとする報告がある。
2.
インフルエンザ脳炎・脳症例の病理学的検討において脳血管の損傷が認められるとの報告があり、また、ジクロフェナクナトリウムは血管内皮修復に関与するシクロオキシゲナーゼ活性の抑制作用が強いとの報告がある。
との記載もありますね。
メフェナム酸については
インフルエンザの臨床経過中に発症した脳炎・脳症の重症化と解熱剤の使用について
平成11年度厚生科学研究「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:森島恒雄 名古屋大学医学部教授)より以下の報告を受けた。
1. 平成11年1月から3月までにインフルエンザの臨床経過中に脳炎・脳症を発症した事例に対してアンケート調査を実施し、解析が行えた181例(うち小児170例)について解熱剤の使用の関連性について検討を行った。
2. その結果、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸が使用された症例では使用していない症例に比較して死亡率が高かった(表1)。
しかしながら、インフルエンザ脳炎・脳症においては発熱が高くなるほど死亡率が高くなることが知られており、ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸はこうした重症例の解熱に使用される傾向にあることを踏まえ、さらに統計的な解析を行ったところ、これらの解熱剤とインフルエンザ脳炎・脳症による死亡について、わずかではあるが有意な結果を得た(表2)。
3. 本研究は、今後更なる研究が必要であり、これらの解熱剤とインフルエンザ脳炎・脳症による死亡との関連については、結論的なことは言えない状況と考える。
というものを受けのもののようです。その後は以下の見解が出ています。
インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について
インフルエンザに関連しておこる脳炎・脳症に対するジクロフェナクナトリウム及びメフェナム酸の使用について、本学会の見解は以下のとおりである。
1999、2000年のインフルエンザ脳炎・脳症研究班(森島恒雄班長)の報告では、解熱剤を使用していない症例でもインフルエンザ脳炎・脳症は発症しており、その死亡者が5分の1を占めているところから非ステロイド系消炎剤が脳炎・脳症を引き起こしていることは証明されていない。
しかし、1999年のデータに比して2000年のデータではインフルエンザ脳炎・脳症が発症した場合の致命率についてはジクロフェナクナトリウムは有意差を持って高くなっている。一方、メフェナム酸に関しては2000年の調査でははっきりした傾向は認められなかった。
また、他の非ステロイド系消炎剤の使用については、調査症例数が少なく、現段階でその関連性が明確になっていないので、さらに調査が必要である。
一般的に頻用されているアセトアミノフェンによる本症の致命率の上昇はなく、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考える。
以上より一部の非ステロイド系消炎剤はインフルエンザ脳炎・脳症の発症因子ではないが、その合併に何らかの関与をしている可能性があり、インフルエンザ治療に際しては非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきである。
今後も本症の原因を含めてさらに研究班の継続した調査を要望する。
平成12年11月12日
日本小児科学会理事会
コメントありがとうございます。
エビデンスと学会の見解をお示し頂きありがとうございます。
最近ではコロナとイブプロフェンの問題も出てきて、解熱剤の使用の是非に関する判断は難しいですね。