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フェノバールでくる病になる?
公開. 更新. 投稿者:骨粗鬆症.この記事は約4分21秒で読めます.
1,612 ビュー. カテゴリ:くる病を誘発する可能性がある薬剤
ビタミンD3は、腸管からのCa、Pの吸収や、骨から血中へのCa動員、腎臓でのCa、Pの再吸収促進などにより、血清Ca、Pの恒常性を維持している。
ビタミンD3作用が低Ca、P血症になると、骨の石灰化が障害される可能性がある。
VD3の作用を低下させる薬剤として最も注意すべきなのが、PXR活性化作用があるバルビツール酸系やヒダントイン系、イミノスチルベン系の抗てんかん薬である。
バルビツール酸系のフェノバールの添付文書の副作用欄には、頻度不明の副作用として「クル病」と記載されており、以下のような注意書きがある。
連用によりあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常(血清アルカリフォスファターゼ値の上昇、血清カルシウム・無機リンの低下等)があらわれた場合には、減量又はビタミンDの投与等適切な処置を行うこと。
フェノバール以外の抗てんかん薬としては、アクセノン末、アレビアチン、クランポール、ヒダントール、プリミドンなどに「クル病」の記載がある。
新規抗てんかん薬にはみられない。
食物から摂取されたり皮膚で作られたVD3は、肝臓のCYP2R1による25位の水酸化を受けて25(OH)D3となり、次いで腎臓のCYP27B1による1α位の水酸化を受けて最終的に活性型VD3[1α、25(OH)2D3]となり、体内で生理作用を発揮している。
肝臓では、ブタを用いた実験で、バルビツール酸系の抗てんかん薬のフェノバルビタールが直接的に、あるいはPXRや構成的アンドロスタン受容体(CAR)を介して、肝臓のCYP27A1、CYP2D25の発現を抑制し、活性型VD3の生成量を減少させる可能性が指摘されている。
また、PXR活性化作用がある薬剤が肝臓のCYP3A4を誘導して25(OH)D3の代謝を促進する結果、活性型VD3の生成量が減少することも報告されている。
さらに、PXR活性化剤やバルプロ酸ナトリウムが、肝臓や小腸、あるいは腎臓のCYPを誘導することで、活性型VD3の不活化を促進することも示唆されている。
このように、抗てんかん薬は活性型VD3の産生や不活性化に関与する様々なCYPの発現に影響し、活性型VD3量を低下させることで、くる病や骨軟化症を誘発する可能性がある。
くる病や骨軟化症は、低P血症を引き起こす薬剤によっても誘発される。
PXR活性化作用がある抗てんかん薬とこれらの薬剤を併用すると、発症の可能性がさらに高まるため、注意が必要である。
Al含有製剤は消化管でのP吸収を阻害するほか、長期投与によりAl骨症を起こすなど様々な機序により骨軟化症を誘発する。
また、ヘプセラなどファンコニ症候群を誘発する薬剤や、ダイアモックスなどは、尿細管障害を引き起こしてPの再吸収を阻害する。
薬剤性くる病
くる病や骨軟化症は、かつては原因不明の疾患であったが、ビタミンDの摂取不足や日光照射不足が原因であることが明らかになって以来、これらを原因とした発症はまれになっている。
一方、現在でも臨床上問題となるのが、薬剤誘発性のくる病や骨軟化症である。特にプレグナンX受容体(PXR)活性化作用がある一部の抗てんかん薬による発症に、注意が必要である。
骨形成は、骨芽細胞が網目状になったⅠ型コラーゲンを中心とする非石灰化骨基質(類骨)を形成し、そこに石灰化が起こることで完了する。石灰化は、類骨に骨塩のCaやPよりなるヒドロキシアパタイトの結晶が沈着して起こる。
この石灰化が障害されると、小児ではくる病、成人では骨軟化症を発症する。
小児のくる病は、成長期に骨の石灰化障害が起こるために、骨の形成障害や変形(低身長、O脚、X脚、鳩胸など)を伴う。
一方、大人の骨軟化症は、骨痛、筋力低下などを主症状とし、骨折を引き起こす。
増えるビタミンD欠乏症
乳幼児にくる病が増えているらしい。
食生活の豊かな現代社会で、乳幼児に潜在的なビタミンD欠乏症が増えているという。ビタミンD欠乏症といえば、貧しかった時代の病気で、骨の変形や成長不全を起こす「くる病」。
表面的には栄養がよいので分からないが、今の赤ちゃんはビタミンD欠乏症になる境目にいる子が多いという。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進する働きを持つが、乳児の場合、母乳だけではビタミンDが不足することが分かっている。
母乳は1リットル中にビタミンDを110国際単位含む。栄養学では乳児は1日650mlの母乳を飲むとされ、約70国際単位の摂取となる。
それを補っているのが、毎日の日光浴で、紫外線が皮膚に当たると、そこでコレステロールからビタミンDが合成される。
問題なのは最近、乳幼児に多いアトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどにより、日光に当たらなくなったり、離乳食が必要なときに食物制限をしたりして、ビタミンDが欠乏気味になっているケースが少なくないという点。
福島では放射能を気にして、外出を控えるお母さんも増えているらしい。
日本人で完全母乳で育てているのは半数を超える。
人工乳の場合、ビタミンDは十分だが、完全母乳で育てるには、皮膚でのビタミンD合成が不可欠です。
乳幼児のビタミンD欠乏症では、骨に異常が起き、まず歩き方がおかしくなるが、乳幼児はもともと0脚なので、親は本当のくる病になるまでは気が付かないという。
また、母乳のときにビタミンDが不足しても、離乳食で不足分が戻れば骨に異常は残らないため、気が付かないうちに治っている子が多い。しかし、離乳食でうまくいかないと簡単にビタミンD欠乏症になっていく。
ビタミンDは卵1個の摂取で十分な量が取れるが、卵のアレルギーが多く、卵の制限でビタミンD欠乏が起きることも多い。
骨粗鬆症と骨軟化症の違い
骨粗鬆症は骨の量が不足したために起こる病気です。
骨軟化症は骨の質の異常によって生じる病気です。
骨軟化症は、骨におけるカルシウムやリンなどのミネラルの沈着が減少した状態で、石灰化していない骨組織(類骨)が多量にみられます。
小児に生じたものを「くる病」といい、成人に起こったものを「骨軟化症」といいます。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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