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インヴェガはリスパダールの強力版?
公開. 更新. 投稿者:統合失調症.この記事は約3分59秒で読めます.
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インヴェガはリスパダールの強化版?—両者の違いと使い分け

抗精神病薬の中でも、統合失調症の第一選択薬として用いられるリスペリドン(リスパダール®)と、その活性代謝物であるパリペリドン(インヴェガ®)。両者は非常に近い関係にある薬剤ですが、剤形、薬物動態、副作用プロファイルなどにおいて異なる特徴を持ちます。
基本情報と開発経緯
●リスペリドン(リスパダール®)
・分類:セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)
・発売年:1996年(日本)
・作用機序:ドパミンD₂受容体、セロトニン5-HT₂A受容体に拮抗
・適応:統合失調症、自閉スペクトラム症に伴う易刺激性など
●パリペリドン(インヴェガ®)
・分類:SDA、リスペリドンの主活性代謝物
・発売年:2011年(日本)
・特徴:OROS®技術による徐放性経口製剤(1日1回投与)
両薬剤の薬理学的類似と違い
共通点
・D₂遮断+5-HT₂A遮断の作用を持ち、陽性症状(幻覚・妄想)だけでなく、陰性症状(感情鈍麻・引きこもり)にも一定の効果
・錐体外路症状(EPS)は定型抗精神病薬に比べて少なめ
相違点
特徴 | リスパダール | インヴェガ |
---|---|---|
有効成分 | リスペリドン | パリペリドン(リスペリドンの代謝物) |
投与回数 | 通常1日2回 | 1日1回(OROSにより24時間持続) |
代謝 | 肝代謝(CYP2D6) | 腎排泄(肝代謝を経ずに作用) |
血中濃度の安定性 | 個人差が出やすい | 比較的安定(CYP依存しない) |
プロラクチン上昇傾向 | 強い | 強い(代謝物であるため回避できない) |
用法 | 朝夕食後など | 朝食後(吸収に食事が影響) |
インヴェガのOROS製剤とは?
インヴェガには、OROS®(浸透圧制御放出システム)が採用されています。
・半透膜で覆われた多層構造のコアに浸透圧差で水が浸入し、内部から薬剤がゆっくり押し出される仕組み。
・食後投与で吸収率が向上(空腹時は約30%低下)
・製剤残渣が便中に排泄される(ゴーストピル)
※インヴェガ錠は3mg、6mg、9mgの3規格すべてが同一サイズ(11mm × 5mm)。薬効成分の量に関係なく、放出システムの構造により均一な大きさを保っている点が特徴的です。
リスパダールからインヴェガへの切り替えは?
パリペリドンはリスペリドンの代謝物であるため、1:1.5の換算(例:リスペリドン2mg→パリペリドン3mg)が目安とされます。
切り替えに際しては、一般的に「漸減・漸増」ではなく、スパッと切り替える方式が推奨されます。
ただし、リスパダールとインヴェガの併用は原則避けることが望ましいとされていますが、他の抗精神病薬との併用例があるように、臨床的判断に委ねられることもあります。
実際の用法と服薬コンプライアンス
インヴェガの添付文書上の用法は「朝食後」。その理由としては:
・食事が吸収率に影響(空腹時:吸収率低下)
・OROS製剤の特性により、胃腸の内容物の動きが影響を与える可能性
・服用時間を固定することで、血中濃度の日内変動を抑える効果がある
しかし、実際には昼夜逆転の患者も多く、「朝食後」が現実的でないケースも多々あります。食事の影響はあるとはいえ、臨床的には「服薬コンプライアンス」を優先して、夕食後などの服用時間に調整することも検討される場面があります。
副作用と使い分け
項目 | リスパダール | インヴェガ |
---|---|---|
EPS | 中等度 | やや少ない |
プロラクチン上昇 | 多い(脳内移行性の低さ) | 同等〜やや少ないが注意要 |
鎮静作用 | 弱め | 弱め |
起立性低血圧 | あり(α₁受容体親和性) | 比較的少ない |
投与利便性 | 1日2回(分割が必要) | 1日1回で簡便 |
特にCYP2D6の遺伝的多型の影響が強く出る患者や、ポリファーマシーの影響で代謝酵素阻害が懸念される場合には、腎排泄型のインヴェガの方が効果が安定しやすいという利点があります。
まとめ:インヴェガはリスパダールの「強力版」なのか?
結論から言えば、「薬効が強力になった」というより、薬物動態が安定化された進化版と考えるのが妥当です。
インヴェガが優れる点:
・1日1回投与で血中濃度が安定
・肝代謝を受けずに作用(個体差が出にくい)
・OROS技術で長時間作用
リスパダールが有利な点:
・錠剤・細粒・口腔内崩壊錠・液剤など剤形が豊富
・小児にも使用可能(自閉症の易刺激性など)
・急性期などで分割投与が必要な場合に柔軟
終わりに:どちらを選ぶべきか?
統合失調症の治療は長期にわたるため、薬の効果だけでなく、服薬のしやすさ、血中濃度の安定性、生活リズムとの相性など、さまざまな要素を加味して選択することが重要です。
「インヴェガはリスパダールの強力版」というよりは、「リスパダールをより安定かつ簡便にした持続型製剤」と捉えると、患者ごとの適応が見えてくるのではないでしょうか。
2 件のコメント
リスパダール3mmでぐったり副作用強く、ルーランに変えて3ヶ月一日夕方8mm服用、効果弱く次の日の昼には切れているのか空笑いあり、今回インブェガ6mm服用毎夕、これて妥当?外来通院です。生理数年とまっています。10年くらい前よりリスパだール服用で、インブェガはどうか?生理もきますか?
私の場合、インヴェガを服用して、朝方、眠気が来る為、夕方、服用することになり、眠剤、一日に服用する薬の量が減りました。インヴェガを服用する様になってら、2年、入院せずに済んでいます。インヴェガの㎜数を減らして調子が悪くなった事がありましたが、通院で何とかなりました。後は、体調は、いいのですが、どうも意欲が湧きません。それは、今後の課題です。
インヴェガ6㎎2錠、クエチアピン25㎎、バレリン200㎎1日6錠、チラージンS上50㎎2錠、25㎎1錠、メバロチン錠5 5mg、ディオバン80㎎1錠、アムロジピン5㎎ 1錠、マグミット330㎎ 1錠