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悪性症候群とセロトニン症候群の違いは?
公開. 更新. 投稿者:統合失調症.この記事は約3分37秒で読めます.
6,190 ビュー. カテゴリ:悪性症候群とセロトニン症候群
悪性症候群とセロトニン症候群は、発熱、意識障害、自律神経症状、筋強剛など、比較的似た症状を引き起こすため、
以前は、混同されることもよくありましたが、セロトニン症候群では悪寒、ミオクローヌスがより強く見られ、悪性症候群では筋強剛、発熱、CPK上昇などが強く見られる点で違いがあります。
また、悪性症候群は高力価抗精神病薬の増量や抗パーキンソン薬の減量などの要因で起こりやすいのに対し、セロトニン症候群は抗うつ薬などのセロトニン作動薬の服用によって起こるため、患者の服用薬などから推測できる場合もあります。
一般にセロトニン症候群は症状の発現が数時間と早く症状が軽いのに対し、悪性症候群は症状の発現に時間が数日かかり症状が重いとされています。
セロトニン症候群の発熱は37~38℃程度で、悪性症候群では39℃を超える。
悪性症候群の死亡率は?
悪性症候群の発症率は、抗精神病薬で加療中の患者さんの0.1~0.2%といわれています。
現在では早期診断や治療が行われるようになり、さすがに悪性症候群による死亡率はおよそ4%と低くなりました。
悪性症候群の機序は?
悪性症候群は、抗精神病薬に限らず向精神薬における副作用で最も重篤な副作用です。
症状としては、40C以上の高熱、筋肉の強剛、血液検査でのCPKの上昇が特徴です。
前駆症状として、発汗、頻脈、無動・ 緘黙、筋硬直、振戦、言語障害、流涎(唾液の分泌過多)、嚥下障害などがみられることが多いので、こうした症状が発現した時期での早期発見が、重篤な状況に至らせないことにつながる重要なポイントです。
治療としては、すべての向精神薬を中止し、輸液などの身体管理を行いつつダントロレ ンナトリウム(ダントリウム)を投与します。
最初にこの症候群を報告したのは、フランスの精神科医Jean Delayです(ジャン・ドレー:1952 年、クロルプロマジンによる統合失調症の治療効果を初めて正しく評価し、精神科薬物療法の時代の幕を開けたといわれる人物)。
正確な機序はいまだに解明されていません。いくつかの説がありますが、どの仮説でも「脳内のドーパミンの動態が急激に変化すること」が機序の中心にあると考えられています。
よく引き合いに出される症候に、(語呂も似ていて間違いやすい)「悪性高熱症」があります。
症状が悪性症候群に似ていることや中枢神経に作用する麻酔薬(NLA:Neurolept anesthesia)を使用して起こることもあり、関連性が示唆されています。
この悪性高熱は骨格筋の筋小胞体からのカルシウム遊離が異常に促進されることが発症の原因という説があり、先に述べた関連性から悪性症候群も同じような機序で発症するのではないかという仮説です。
次にドーパミン・セロトニン系の不均衡を原因とする説があります。
これはドーパミンとセロトニンの代謝冗進によって、ドーパミンのもつ体温を下降させる生理作用と、セロトニンのもつ体温を上昇させる生理作用が不均衡を起こし、高熱症状が発現するとした仮説です。
パキシルで発熱?
Lドパ製剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、MAO阻害薬と三環系抗うつ薬の併用など、セロトニン作動性薬の投与で脳内のセロトニン濃度が上昇すると、セロトニン症候群が起こることがある。
高熱と精神症状(不安や焦燥など)、自律神経症状(血圧変動、頻脈、発汗、下痢など)、神経筋症状(振戦、筋硬直、アカシジアなど)の3つの症状が特徴的である。
投与や増量、併用の後24時間以内に起こることが多い。
参考書籍:日経DI2013.7
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