2026年3月15日更新.2,763記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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勝手に捨てちゃいけない薬

勝手に捨てちゃいけない薬―麻薬、覚醒剤原料、注射薬…家庭での廃棄ルール

余った薬、どうしていますか?
「この薬、もう使わないし、捨てちゃっていいかな…」
患者さんやその家族が、自宅に余った薬を前にして悩む場面はよくあります。

しかし、中には家庭で安易に廃棄してはいけない薬もあります。
とくに次のようなケースでは、法的または安全面で注意が必要です。

・がん治療で使ったモルヒネなどの麻薬系鎮痛薬
・市販薬にも含まれる覚醒剤原料医薬品
・注射針付きの自己注射薬(インスリン、抗リウマチ薬など)

勝手に捨ててはいけない薬の代表例:麻薬

● 麻薬(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなど)
麻薬に分類される薬は、「麻薬及び向精神薬取締法」(麻向法)により、以下のように厳密に規定されています。

【重要】法的ポイント
・麻薬の所持・譲渡・廃棄は、免許を持つ医師・薬剤師・麻薬施用者に限られる
・一般人(患者や家族)が勝手に廃棄することは原則認められていない

● 例:がん治療後に自宅に残った麻薬を家族が捨てたら?
患者本人が死亡した場合、麻薬は「所有者の死亡により効力を失った処方薬」となりますが、依然として麻薬であることに変わりはありません。

麻向法施行規則 第33条では、
「施用後の麻薬が余った場合は、廃棄や返納について、免許者が責任を持って行うこと」と規定されています。

つまり、家族による「自己判断での廃棄」は法律的には認められていないというのが原則です。

● 対応方法
・調剤を行った薬局、または処方元の医療機関に連絡して返却・回収の相談をする
・医師・薬剤師の指導のもとで、適正な記録・手順を踏んで廃棄してもらう

廃棄原因事前提出書類廃棄立会者受払簿の記載事後提出書類
期限切れ麻薬廃棄届を準備し、保健所へ連絡保健所職員立会いの下、麻薬を廃棄廃棄日・立会者等は保健所職員が記載なし
調剤中のロス回収可能麻薬廃棄届を準備し、保健所へ連絡保健所職員立会いの下、麻薬を廃棄廃棄日・立会者等は保健所職員が記載なし
回収不可能麻薬事故届を保健所へ提出なし薬局職員が記載なし
残置(患者が取りに来ない)再利用できる在庫に戻す
再利用できないなし薬局職員立会いの下、麻薬を廃棄薬局職員が記載廃棄後30日以内に調剤済麻薬廃棄届を保健所に届出
返納なし薬局職員立会いの下、麻薬を廃棄薬局職員が記載廃棄後30日以内に調剤済麻薬廃棄届を保健所に届出
その他(紛失、盗難、所在不明等)麻薬事故届を保健所へ提出なし薬局職員が記載盗取された場合は警察署に届出
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覚醒剤原料医薬品も廃棄注意

● 覚醒剤原料ってなに?
たとえば市販薬の咳止めに含まれるメチルエフェドリン、ブロムワレリル尿素などは、「覚醒剤取締法に基づく原料」とされる場合があります。

● 勝手に捨てていいの?
法的に一般家庭での所持自体は可能ですが、大量に保有・譲渡した場合は違法行為とみなされる可能性があります。

対応例
・中身を紙に吸わせる、苦味のある液に溶かすなどして無害化し、分別ごみに出す
・不安な場合は、薬剤師に相談を

廃棄原因事前提出書類廃棄立会者受払簿の記載事後提出書類
期限切れ覚醒剤原料廃棄届を準備し、保健所へ連絡覚醒剤監視員立会いの下、覚醒剤原料を廃棄薬局職員が記載なし
調剤中のロス回収可能
回収不可能覚醒剤原料事故届を保健所へ提出なし薬局職員が記載なし
残置(患者が受取りに来ない)再利用できる在庫に戻す
再利用できない覚醒剤原料廃棄届を準備し、保健所へ連絡覚醒剤監視員立会いの下、覚醒剤原料を廃棄薬局職員が記載なし
返納交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書を保健所へ提出薬局職員立会いの下、覚醒剤原料を廃棄薬局職員が記載廃棄後30日以内に交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書を保健所へ提出
その他(減失、盗難、所在不明等)覚醒剤原料事故届を保健所へ提出なし薬局職員が記載盗取された場合は警察署に届出

向精神薬(睡眠薬・抗不安薬)は?

向精神薬(例:デパス、リボトリール、ハルシオン)は依存性や乱用リスクがあるため、処方薬の中でも扱いに注意が必要です。

● 勝手に捨てても違法なの?
明確に禁止されているわけではありませんが、他人への譲渡は完全に違法です。
また、不適切に捨てた薬が誰かに拾われて悪用された場合、刑事責任を問われる可能性も否定できません。

処分方法
・錠剤をつぶして無害化(お茶・酢などの液体と混ぜる)後に家庭ごみに出す
・不安であれば医療機関に相談

剤形
末、散剤、顆粒剤100グラム (包)
錠剤、カプセル剤、坐剤120個
注射剤10アンプル (バイアル)
内容液剤10容器
経皮吸収型製剤10枚

自己注射薬・注射針も危険

インスリン製剤や、抗リウマチ薬(エンブレル、オレンシアなど)の自己注射では、「使用済み注射針の処分」が問題になります。

● 勝手に可燃ごみに出してよい?
→ 絶対NG。針刺し事故や感染リスクあり。

● 適切な対応
・医療機関・薬局で回収してもらえるか確認(地域差あり)
・地方自治体の「注射針回収プログラム」に参加
・医療廃棄物として扱う必要がある

廃棄で起こりうるリスク

リスク内容
法律違反麻薬・覚醒剤原料の不適切処分は、麻向法・覚醒剤取締法違反に問われる可能性
健康被害誤飲・誤注による中毒、アナフィラキシー等の事故リスク
環境汚染河川や土壌に薬物成分が流出し、環境被害を引き起こす
社会的リスク不法投棄が報道されることで、薬剤師や医療機関への信用問題に発展

薬剤師としてできること
・「この薬は捨てていいのか迷ったら、まず相談してください」と患者に伝える
・医療廃棄物や麻薬・向精神薬の法的取扱いについて、事実ベースで説明できる体制を整える
・地域の薬剤師会や自治体と連携し、不要薬の適切な回収ルートを共有する

薬の廃棄にも「責任」がある

「命に関わる薬」は、同時に「間違えば命を脅かす薬」でもあります。

・麻薬などは法律で厳密に管理されており、患者や家族が勝手に捨てることは原則NG
・薬局・医療機関に相談し、正しい方法で処分するのが安全かつ合法的
・注射針、覚醒剤原料、向精神薬も含め、「自己判断で捨てる前に確認」を習慣に

「薬は使うときも、捨てるときも慎重に」がこれからの時代の常識です。

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