2025年11月11日更新.2,665記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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トルリシティやマンジャロを室温保管して良いか?

トルリシティやマンジャロを室温保管して良いか?

糖尿病治療はここ10年で大きく進歩しました。その中でも注目されているのが GLP-1受容体作動薬 です。血糖コントロールの改善に加え、体重減少作用や心血管イベント抑制効果も期待されることから、世界的に広く使われています。

日本でも「トルリシティ(デュラグルチド)」「マンジャロ(チルゼパチド)」といった 週1回の自己注射製剤 が登場し、毎日打つインスリンとは異なる利便性を提供しています。

ところが患者さんからよく聞かれる質問に、

「冷蔵庫に入れないとダメですか?」
「旅行のときに常温で持ち歩いていいですか?」
というものがあります。

トルリシティ(デュラグルチド)の保管条件

添付文書の記載
貯法:冷所保存(2~8℃)
取扱い上の注意:
・凍結を避け、2~8℃で遮光保存すること。凍結した場合は、使用しないこと。
・室温で保存する場合は、14日以内に使用すること。その際には、遮光にて保存し、また30℃を超える場所で保存しないこと。

つまりトルリシティは、2週間は室温(30℃以下)で保管可能 です。

なぜ14日間なのか?
これは製剤の安定性試験のデータに基づき、品質を保証できる期間として設定されています。15日目以降は品質劣化のリスクが高まるため、安全性の観点から使用は推奨されていません。

マンジャロ(チルゼパチド)の保管条件

添付文書の記載
貯法:冷所保存(2~8℃)
取扱い上の注意:
・凍結を避け、2~8℃で遮光保存すること。凍結した場合は、使用しないこと。
・室温で保存する場合は、30℃を超えない場所で外箱から出さずに保存し、21日以内に使用すること。

マンジャロはトルリシティよりも長く、3週間(21日間)室温で保管可能 です。

なぜトルリシティより長いのか?
製剤ごとに添加剤や安定化技術が異なるため、室温での安定性に差が出ます。マンジャロは新しい製剤で、室温安定性が強化されていると考えられます。

インスリンとの違い

多くのインスリン製剤は「開封後は室温で4週間使用可能」とされています。これは毎日使用することを前提に、使用中の利便性を確保するためのルールです。

一方でトルリシティやマンジャロは「週1回の1本使い切り」。

・未開封の状態で冷所保存が原則
・ただし例外的に「未開封のまま室温で14日/21日間まで保管可」

という違いがあります。

室温保管の注意点

上限温度は「30℃」
・添付文書で規定されている通り、30℃を超える環境では保管できません。
・真夏の車内や直射日光の当たる窓際は簡単に40℃以上になるため危険です。

冷凍は絶対NG
・凍結すると薬剤が変性し、使用できなくなります。
・冷凍庫だけでなく、冷蔵庫内でも冷気の吹き出し口付近に置かないよう注意が必要です。

ケースやポーチの利用
・携帯用の保冷ポーチや専用ケースを使うと安心です。
・特に夏場の旅行や通院時には工夫が必要です。

旅行や外出時の実際的な工夫

・1泊2日の旅行 → 保冷バッグを使わずに室温で持ち歩いても問題ない(30℃以下なら)。
・海外旅行や長期出張 → 事前に必要本数を冷蔵保管、飛行機に持ち込む際は保冷バッグを利用。
・災害時や停電時 → 2週間(トルリシティ)~3週間(マンジャロ)までは室温で大丈夫と患者に伝えると安心感につながる。

患者指導での具体的な説明例

「普段は冷蔵庫で保存してください。ただし冷蔵庫が使えないときは、トルリシティなら2週間、マンジャロなら3週間までは常温で大丈夫です。」

「30℃を超える暑い場所には置かないようにしましょう。夏の車内や直射日光の下は危険です。」

「旅行や停電のときにも、2~3週間は安心して使えるので慌てなくても大丈夫ですよ。」

まとめ

・トルリシティ・マンジャロはいずれも 冷所(2~8℃)保存が原則。
・トルリシティは 室温(30℃以下)で14日間、マンジャロは 21日間 まで保管可能。
・これは未開封の状態での話であり、冷蔵庫が使えないときのための例外ルール。
・インスリンと異なり「開封後の使用期限」ではなく、「未開封時に室温で耐えられる期間」が明示されている点が特徴。
・旅行・災害時など実際の生活場面で役立つ情報であり、薬剤師は患者に安心感を与える説明を行うことが大切。

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