2025年11月13日更新.2,666記事.

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ロゼレムは夕食後に飲んだほうが良い?

ロゼレムは夕食後に飲んだほうが良い?

不眠症治療に用いられる薬のなかでも、ロゼレム(一般名:ラメルテオン)は特徴的な位置づけを持つ薬剤です。ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と異なり、メラトニン受容体作動薬として概日リズム(サーカディアンリズム)の調整に作用するため、「依存性が少ない睡眠薬」として広く使われています。

一方で患者さんからは「夕食後に飲んだほうが効きやすいのでは?」「就寝前と書いてあるけど、早めに飲んでもいいの?」といった質問を受けることがあります。これは、メラトニン分泌のタイミングや体内時計との関係を踏まえると一理ある考え方にも見えます。

しかし、実際には添付文書上の用法・用量や食事による影響、さらには保険請求上の制約を考慮すると、夕食後の服用は推奨されません。ロゼレムの薬理作用と添付文書の記載、そして臨床現場での実際について勉強し、薬剤師としてどのように患者に説明すべきかを整理します。

ロゼレムの薬理作用と特徴

メラトニン受容体作動薬
ロゼレムは選択的メラトニン受容体作動薬であり、視交叉上核に存在するMT1受容体・MT2受容体に作用します。

・MT1受容体刺激 → 睡眠の開始を促す
・MT2受容体刺激 → 概日リズムを調整する

このため、ロゼレムは「眠気を強制的に引き起こす薬」ではなく、「自然な睡眠リズムを整える薬」と位置づけられます。依存性や耐性が少なく、高齢者でも比較的安心して使用できるのが特徴です。

添付文書での用法・用量

ロゼレムの添付文書には次のように記載されています。

・通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。
・「本剤は、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときには服用させないこと。」

つまり、明確に「就寝前」の服用が指定されており、夕食後や就寝の数時間前といった使い方は添付文書上は認められていません。

食事による影響

ロゼレムは食事の影響を強く受ける薬剤です。添付文書には以下の記載があります。

「食後投与では、空腹時投与に比べ本剤の血中濃度が低下することがあるため、本剤は食事と同時又は食直後の服用は避けること。」

特に高脂肪食後では血中濃度が大きく低下し、効果が不十分となることが報告されています。
そのため、夕食後に服用するのは理論的に不利であり、推奨されません。

メラトニン分泌と服薬タイミング

メラトニンの生理的分泌
メラトニンは夕方から夜間にかけて分泌が増加し、深夜にピークを迎えます。

このため、「夕方に飲むと良いのでは?」という意見も一部であります。

実際の臨床での位置づけ
しかし、薬物療法では「睡眠直前に服用」することで、眠気を安全に得ることが重視されます。
ふらつき・傾眠などの副作用を考慮すると、日中に効いてしまうような服薬タイミングは避ける必要があります。

保険請求上の問題

医療現場では、処方箋の用法欄に「就寝前」と記載するのが基本です。
もし「夕食後」と記載してしまうと、保険請求上は適応外投与とみなされる可能性があります。

・「就寝前」以外の用法で処方する → レセプト返戻のリスク
・医師が口頭で服用時間を調整する場合はあるが、処方箋記載は「就寝前」が必須

この点も、薬剤師として理解しておく必要があります。

ロゼレムと他のメラトニン製剤の比較

同じメラトニン受容体作動薬としてメラトベル顆粒小児用0.2%(メラトニン製剤)があります。
こちらも添付文書上の用法は「就寝前」となっており、夕食後投与は認められていません。

つまり、メラトニン関連製剤は共通して「就寝前」に服用することが前提となっています。

臨床現場での実際

医師による口頭指示
一部の医師は、効果が不十分な患者に対して「食事からある程度時間を空けて、就寝前より少し早めに飲んでみましょう」とアドバイスすることがあります。
これは添付文書の「就寝前」から逸脱する可能性があるため、処方箋には書けないが、臨床的に調整しているケースといえます。

薬剤師としての対応
薬剤師は処方箋記載に従って「就寝前」と説明するのが原則です。
しかし、患者から「医師に夕食後に飲んでと言われた」と聞いた場合には、
・食後すぐの服用は避けること
・眠気やふらつきが出たら注意すること
を補足する必要があります。

患者指導のポイント

服用タイミングは「就寝直前」
→ 保険適用上も添付文書上も必須。

食後すぐは避ける
→ 血中濃度が低下し効果減弱。少なくとも食後2時間は空けたい。

眠気・ふらつきに注意
→ 就寝後に起きて作業をする予定がある場合は服用しない。

医師の指示がある場合
→ 記載は「就寝前」だが、臨床的に早めるケースもある。必ず医師の指示を優先。

まとめ

・ロゼレムはメラトニン受容体作動薬であり、自然な睡眠リズムを整える薬。
・添付文書上は「就寝前」の服用が必須であり、夕食後投与は認められていない。
・食後すぐの服用は血中濃度が低下し、効果減弱につながる。
・保険請求上も「就寝前」以外の用法は不適切とされる。
・臨床的に一部の医師が服薬タイミングを早める指示をすることはあるが、薬剤師は添付文書に基づき説明しつつ、補足情報を提供することが重要。

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