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コレバインでやせる?
公開. 更新. 投稿者:脂質異常症.この記事は約3分1秒で読めます.
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コレバインでやせる?便秘や脂質異常症との関係

「コレバインを飲み始めてから体重が減った気がする」「コレバインってダイエットに効くの?」—そんな声を患者さんから聞くことがあります。
本来、コレバイン(一般名:コレスチミド)は高コレステロール血症や胆汁酸による下痢の改善を目的に使われる薬ですが、その作用機序の関係で「体重が減った」と感じる人が一定数いるのは事実です。
コレバインとはどんな薬?
コレバイン錠500mgは、陰イオン交換樹脂・胆汁酸吸着薬に分類される処方薬です。消化管内で胆汁酸と結合して体外に排泄させることにより、間接的にコレステロール値を下げる薬として用いられています。
添付文書上の適応症は「高コレステロール血症」、「家族性高コレステロール血症」ですが、「小腸切除後などで胆汁酸による下痢が起こる場合」「原発性胆汁性胆管炎に伴うそう痒感」などにも使われます。
日本では主にLDL-C高値の脂質異常症に対して、スタチンなどの薬剤で不十分な場合の補助的治療として使われます。
コレバインに「やせる」効果がある理由
コレバインはもともと体重減少を目的に開発された薬ではありませんが、以下のような作用が「やせた」と感じさせる可能性があります。
①脂質や糖質の吸収抑制
・胆汁酸吸着による脂質の吸収抑制:
胆汁酸が減ることで食事中の脂質の消化・吸収が抑制されます。
・糖吸収の遅延・抑制:
最近の研究では、コレバインが腸管内でブドウ糖を直接吸着し、吸収を遅らせる可能性が指摘されています。
②満腹感の持続
・コレバインは消化管内で膨張しやすく、食前に服用することで胃内滞留時間が増し、満腹感を持続させます。
③食欲低下と食事量の減少
・コレバインによる便秘・膨満感などの副作用が、間接的に食欲を減退させる可能性があります。
④血糖値の改善とインスリン感受性の変化
・2型糖尿病患者への投与では、食後血糖値の低下と同時にGLP-1(インクレチン)の上昇が認められています。
・腸管ホルモンを介して食後のインスリン分泌を促す可能性も。
これらの複合的な作用により、「体重が減った」「食べる量が減った」と感じることがあるのです。
コレバインはダイエット目的で使える?
医療用医薬品としてのコレバインは、ダイエット目的での処方は認められていません。
保険適応も、あくまで「脂質異常症」「下痢」などの明確な診断に基づくものです。美容やダイエットを目的とした使用は推奨されず、自己判断での使用はリスクを伴います。
副作用には注意が必要
コレバインを服用していると、次のような副作用が見られることがあります。
副作用 | 発現率・特徴 |
---|---|
便秘 | 最も多く報告される副作用。腸閉塞のリスクにも注意。 |
膨満感・腹部不快感 | 長期使用や高用量で出やすい |
ビタミン吸収阻害 | 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)などの吸収が低下 |
脂肪便 | 脂肪吸収低下によって便が油っぽくなることも |
特に脂溶性ビタミンの吸収障害には注意が必要で、長期服用の際には補充の検討がされることもあります。
コレバインと血糖値の関係:糖尿病治療にも有効?
近年、コレバインには血糖降下作用があるという報告が増えており、以下のようなメカニズムが提唱されています。
・胆汁酸排泄促進:肝臓での胆汁酸合成を促し、LDL受容体を増やすことで脂質を下げる
・糖吸着作用:消化管でのグルコース吸着→吸収遅延が血糖値の上昇を抑える
・GLP-1分泌促進:食後血糖値の低下とともに、インクレチン(GLP-1)の上昇が報告されている
・核内受容体への影響:胆汁酸による糖新生酵素誘導を抑える作用の可能性もある(機序は未解明)
こうした理由から、アメリカではコレスチミド(Colesevelam)は糖尿病治療薬としての適応も承認されています。
一方、日本では高コレステロール血症の治療薬としての保険適応のみであり、糖尿病への適応はありません。
コレバインはやせ薬ではない
コレバインはあくまで脂質異常症や胆汁酸性下痢などに用いられる医療用医薬品であり、減量目的での使用は想定されていません。
一部で「やせた」と感じる理由には、便秘や食欲低下、脂肪吸収抑制などがあるものの、それは本来の薬効による副次的な現象にすぎません。
薬剤師の立場から言えば、安易な目的での使用や処方依頼は控えるべきであり、体重管理は食事・運動・生活習慣の見直しが基本です。