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食事に気をつけてもコレステロールは下がらない?
公開. 更新. 投稿者:脂質異常症.この記事は約4分45秒で読めます.
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卵やエビはコレステロールを上げる?「1日1個まで」は古い常識?

「卵は1日1個までにしなさい」
「エビやイカ、タコはコレステロールが高いから控えたほうがいい」
こういったアドバイスを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
かつて、食品に含まれるコレステロール=血液中のコレステロールを上げる犯人とされていたため、動脈硬化や脂質異常症を心配する人たちは、卵や魚介類を避ける食生活を送っていました。
しかし、近年の栄養学的知見の進歩により、この常識は大きく覆されています。
コレステロールの正体とは?悪者扱いされてきた理由
コレステロールという言葉には、「ドロドロ血」「動脈硬化」「心筋梗塞」といったネガティブなイメージがついて回ります。
しかし、コレステロールは本来、
・細胞膜の主要な構成成分
・ホルモン(男性・女性ホルモン、副腎皮質ホルモン)
・ビタミンDや胆汁酸の原料
など、私たちの生命維持に欠かせない脂質です。
特に、細胞の再生が活発な人ほどコレステロールが必要になりますし、免疫細胞の膜にも不可欠な材料でもあります。
食事でとったコレステロールはどこへ行く?
私たちの体内には、2つのコレステロール供給源があります。
供給源 | 割合 | 特徴 |
---|---|---|
食事由来 | 約20~30% | 卵や魚介類などに含まれるコレステロール |
体内合成(主に肝臓) | 約70~80% | 必要に応じて自動的に合成される |
そして驚くべきことに、食事でコレステロールを多く摂ると、肝臓でのコレステロール合成は抑えられるという「フィードバック機構」が備わっています。
逆に、食事での摂取が少ないと、体内での合成が増加するのです。
つまり、食事中のコレステロール量がそのまま血中コレステロールに反映されるわけではないのです。
「コレステロール=上限付き」はもう古い!厚労省の見解
日本では2015年、厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準」から、コレステロールの摂取上限値(男性750mg/女性600mg)が削除されました。
これは、「食事中のコレステロール摂取が血中値に及ぼす影響は限定的である」という科学的根拠に基づいています。
この改定をきっかけに、「卵は1日1個まで」「エビは食べすぎ注意」といった指導も見直されつつあります。
卵1個には約200mgのコレステロールが含まれていますが、先述のフィードバック機構により、毎日数個食べてもコレステロール値に影響を与えない人が多いことがわかっています。
また、エビ・イカ・タコ・貝類といった魚介類もコレステロール含有量は高いものの、
・脂質(飽和脂肪酸)が少ない
・良質なタンパク源
・タウリンなどの有益な栄養素が豊富
といったメリットがあり、むしろ積極的に摂るべき食品といえるでしょう。
気をつけたいのは「脂質の質と量」
注意すべきは、「コレステロール含有量」そのものよりも、一緒に含まれている脂質の“質”と“量”です。
〇特に注意したいのは「飽和脂肪酸」と「トランス脂肪酸」
・飽和脂肪酸:肉の脂身、バター、ラードなど → LDL(悪玉)を増やす
・トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニング、加工菓子など → 心疾患リスクを上げる
これらの摂りすぎが、肝臓のコレステロール合成を刺激し、血中LDL値を上昇させる原因となります。
LDL・HDL・LH比のバランスが重要
単に「コレステロール値が高いか低いか」ではなく、以下のバランスが重要です。
LDLコレステロール(悪玉):全身にコレステロールを運ぶ、多すぎると動脈硬化
HDLコレステロール(善玉): 余分なコレステロールを回収、高いほうが良い
LH比(LDL÷HDL):リスク評価指標 2.5以上で動脈硬化リスク増
つまり、コレステロール摂取を一律に制限するよりも、バランスを見ながら調整することが現代の考え方なのです。
コレステロールが不足すると何が起こる?
コレステロールが極端に不足すると、以下のような不調を招くこともあります。
・ホルモンバランスの乱れ(性ホルモンの合成不足)
・免疫力低下(細胞膜構成不良)
・骨の弱化(ビタミンD合成不足)
・消化不良(胆汁酸不足)
特に高齢者や痩せすぎの人では、コレステロールを必要以上に制限することの方が健康リスクにつながることもあります。
脂質異常症を防ぐための食事のポイント
コレステロール摂取よりも、以下のような生活習慣が脂質異常症の予防に有効です。
〇食事編
・魚(EPA・DHA)やオリーブオイルを活用
・肉の脂身や揚げ物はほどほどに
・野菜・きのこ・海藻など食物繊維をしっかり摂る
・加工食品(スナック菓子・カップ麺)を控える
〇生活習慣編
・有酸素運動(ウォーキング・水泳)を習慣に
・禁煙・節酒を心がける
・ストレス管理と十分な睡眠
かつての「卵は1日1個まで」「エビはコレステロールが多いからダメ」といった指導は、現代の栄養学では見直されています。
・コレステロールは生命維持に必要な脂質
・食事からの摂取がそのまま血中値に反映されるわけではない
・LDLとHDLのバランス(LH比)が最も重要
・飽和脂肪酸・トランス脂肪酸にこそ注意を
・食品を“制限”するより“選び方”が大切
体にいい卵や魚介類を必要以上に避けるのではなく、正しく理解して上手に取り入れることが健康への近道です。