2025年11月10日更新.2,664記事.

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ギュラックとカルシウムを併用してはいけない?

ギュラックとカルシウムを併用してはいけない?

2024年に市販薬として発売された ギュラック(一般名:ポリカルボフィルカルシウム) は、過敏性腸症候群(IBS)の症状改善に用いられる新しいOTC薬です。医療用の「ポリフル」と同成分で、下痢型・便秘型いずれのIBSにも対応できる“便通調整薬”として注目されています。

ところが、ギュラックの添付文書には「服用している間はカルシウム剤を使用しないこと」と明記されています。これは、骨粗鬆症治療薬やカルシウムサプリを飲んでいる方にとって大きな気になる点です。なぜカルシウムとの併用が問題になるのでしょうか?

ギュラック(ポリカルボフィルカルシウム)の特徴

作用機序
・ポリカルボフィルカルシウムは水分を吸収して膨潤する性質を持つ合成高分子です。
・腸内の状態に応じて、水分を保持したり放出したりして便通を調整します。
・下痢型IBSでは水分を吸着して便を固め、便秘型IBSでは水分を保持して便を柔らかくする、という“双方向調整”作用が特徴です。

含有成分としての「カルシウム」
・ポリカルボフィルカルシウム1.0g中に、カルシウムとして約200mgが含まれます。
・服用により一定量のカルシウムを摂取することになるため、カルシウム製剤との併用には注意が必要となります。

医療用ポリフルでの位置づけ

医療用の ポリフル(ポリカルボフィルカルシウム) では、カルシウム製剤は「併用注意」とされています。その理由は以下の2点です。

高カルシウム血症のリスク
・本剤自体にカルシウムを含むため、他のカルシウム製剤と併用するとカルシウム過剰となる可能性がある。

薬効の減弱
・本剤はカルシウムが腸内で脱離することで薬効を発揮する。
・ところがカルシウム製剤を併用すると、脱離したカルシウムと再結合してしまい、効果が弱まるおそれがある。

つまり「禁忌」ではないが、注意して併用しなければならない薬剤 とされています。

市販薬ギュラックでの扱い

一方、市販薬のギュラックの添付文書には、以下のように「カルシウム剤は服用しないこと」と明記されています。

本剤を服用している間は、次の医薬品を服用しないこと:
 過敏性腸症候群(IBS)の症状改善薬(トリメブチンマレイン酸塩等)、
 活性型ビタミンD製剤(アルファカルシドール等)、
 カルシウム剤(乳酸カルシウム等)、
 強心配糖体(ジゴキシン等)、
 抗生物質(テトラサイクリン、ノルフロキサシン等)、
 プロトンポンプ阻害剤(オメプラゾール等)、H2ブロッカー(ファモチジン等)、制酸剤(水酸化アルミニウムゲル、水酸化マグネシウム等)

OTCでは「併用注意」ではなく「してはいけないこと」に分類されているのがポイントです。

なぜ市販薬では「してはいけないこと」になるのか?

高カルシウム血症リスクを強調
カルシウムを多く含む薬剤を併用すると、血中カルシウム濃度が過剰に上昇する危険があります。高カルシウム血症は倦怠感・食欲不振・便秘・腎障害などを引き起こす可能性があるため、OTCでは「禁止」として一般消費者に強く注意を促しています。

薬効減弱の懸念
カルシウム剤との併用でギュラックの効果が弱まる可能性があるため、「効かない」と誤解して乱用する危険を防ぐために禁止としています。

自己判断での使用リスク
OTCは医師のモニタリングがないため、安全マージンを大きくとる必要があります。そのため「併用注意」とされている薬剤も「使用禁止」と表現されることがあるのです。

臨床での実際

医療用ポリフルでは、骨粗鬆症治療中の患者にカルシウム製剤が同時処方されるケースもあります。その際は:

・血清カルシウム値を定期的にモニタリング
・便通の改善効果が得られているかを観察
・必要に応じて他の整腸薬に切り替え

といった工夫がされています。

つまり、医師の管理下では併用可能だが、OTCでは避けるべき という整理になります。

薬剤師の指導ポイント

市販薬ギュラック使用中はカルシウムサプリを併用しないよう説明する
→ 骨粗鬆症治療薬やサプリを飲んでいる人は特に注意。

医療機関で処方されている場合は自己判断で中止・変更しないこと
→ 医師が血液検査で管理しているケースがある。

効果が感じられない場合に安易に増量しないこと
→ 相互作用で効果が減弱している可能性も考慮する。

サプリメントも含めた情報収集をする
→ OTC利用者はカルシウムサプリを自己判断で摂取していることが多い。

まとめ

・ギュラック(ポリカルボフィルカルシウム)はIBS改善薬で、カルシウムを含む便通調整薬。
・医療用ポリフルでは「カルシウム製剤は併用注意」とされる。理由は「高カルシウム血症のリスク」「薬効減弱の可能性」。
・市販薬ギュラックでは「カルシウム剤は服用しないこと」としてより厳しく制限されている。
・背景にはOTCの自己判断使用リスクがある。
・臨床では併用されることもあるが、必ず医師の管理下で行うべきであり、OTCでは禁止と考えるのが安全。

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