記事
LABA使用中にSABAを使ってもいいか?
公開. 更新. 投稿者:喘息/COPD/喫煙.この記事は約3分51秒で読めます.
115 ビュー. カテゴリ:LABA使用中にSABAを使っても良いか?

気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物療法において、「長時間作用性β₂刺激薬(LABA)」と「短時間作用性β₂刺激薬(SABA)」は、いずれも重要な役割を担っています。
しかし、現場ではしばしば以下のような疑問が寄せられます。
「LABAを毎日吸入している患者に、発作時にSABAを使っても良いのか?」
「LABAを使っていることで、SABAの効果が減弱するのではないか?」
LABAとSABAの違い
特性 | SABA(短時間作用性β₂刺激薬) | LABA(長時間作用性β₂刺激薬) |
---|---|---|
代表薬 | サルブタモール、プロカテロール | サルメテロール、ホルモテロール、インダカテロール |
発現時間 | 数分以内 | 15~30分(薬剤により差あり) |
持続時間 | 4~6時間程度 | 12~24時間 |
用途 | 急性症状(発作時)の頓用 | 維持療法としての定期使用 |
SABAは急性症状をすばやく緩和する「レスキュー薬」として使用され、LABAは炎症治療薬(吸入ステロイド薬など)との併用で長期管理に用いられます。
LABA使用中にSABAを使ってもいいのか?
結論から述べると、LABAを使用中でもSABAの使用は可能であり、推奨されている場面もあります。
〇両薬剤は作用時間の違いによって使い分けられている:
LABAは症状の予防的な維持管理、SABAは急性期の即時緩和が目的です。作用の立ち上がりや持続時間が異なるため、薬理学的には競合せず、補完的な関係にあります。
〇LABA使用によってSABAの効果が弱くなることはない:
臨床研究およびガイドラインにおいても、LABAの継続使用によってSABAの効果が減弱するというエビデンスは確認されていません。安心して併用が可能です。
ガイドラインでの位置づけ
日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」:
・LABAはICS(吸入ステロイド)と併用し、長期管理薬として位置づけられています。
・発作時はSABAの頓用が基本とされ、LABA使用中であってもSABAの使用が想定されています。
GOLD(COPDガイドライン):
・COPDにおいても、LABAは症状コントロール・増悪予防のために定期吸入。
・呼吸困難や運動時の急な症状には、SABAの頓用が有効とされています。
つまり、LABA使用中でもSABAの使用はガイドラインで明確に認められているということです。
実際の患者対応での注意点
〇患者の自己判断によるSABAの多用に注意
SABAの使用は「頓用」であり、頻繁な使用はコントロール不良のサインです。
1日2回以上の使用が続くようなら、治療計画の見直しが必要です。
〇LABA単剤使用のリスク(喘息患者)
喘息治療においては、LABA単剤使用は禁忌とされています。
必ずICSとの合剤または併用とし、炎症のコントロールが前提です。
〇LABA/SABAどちらを使っているかの服薬管理
患者がどの吸入薬を「毎日使っているか」「発作時に使うか」を正しく理解しているか確認することが重要です。
ラベルの色や薬剤名が似ていて混乱しやすいため、ピクトグラムや色分けなどの工夫も有用です。
薬剤師としての指導ポイント
「LABAを使っていても、発作時にはSABAが効きます。安心して使ってください」
「ただし、SABAを毎日のように使うようなら主治医に相談してください」
「ICSとLABAはセットで使用します。LABAだけの使用は危険です」
これらの指導は、薬物治療の安全性確保とアドヒアランス向上に直結します。
・LABA使用中でも、SABAは効果を発揮し、安全に使用できる。
・両者の作用時間が異なるため、発作時のSABA使用はむしろ適切。
・ガイドラインでもLABA+ICSによる長期管理と、SABAによる急性対応は併用可能とされている。
・頻回なSABA使用はコントロール不良の指標となるため、使用頻度には注意が必要。
・LABA単剤の喘息治療は禁忌であり、ICSとの併用が前提である。
患者からの「この薬、毎日使ってるけど、もう一つの薬も使っていいの?」という不安に対し、正確な知識で安心を届けるのも薬剤師の重要な役割です。LABAとSABAの併用について正しく理解し、自信を持って患者対応に臨みましょう。