2025年7月13日更新.2,519記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

ステロイド外用薬の使用回数は何回がベスト?

ステロイド外用薬の使用回数は何回がベスト?副作用を減らし効果を高める塗り方の工夫

ステロイド外用薬(塗り薬)は、湿疹や皮膚炎、乾癬などさまざまな皮膚疾患に幅広く使われています。しかし、「1日何回塗ればいいの?」「症状が良くなったらどうすれば?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

ステロイド外用薬の使用回数・タイミング・副作用のバランスの取り方について、ガイドラインや臨床の考え方を勉強します。

ステロイド外用薬はなぜ使用回数が議論されるのか?

飲み薬と違い、塗り薬には「毎食後」といった明確なタイミングはなく、「1日1回」「1日2回」という回数のみが指定されることが多いです。

使用回数を増やすと薬の効果は強まりますが、その分皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)や毛細血管拡張などの副作用のリスクも増えるため、回数と効果のバランスがとても重要です。

ステロイドの外用療法では、最小限の副作用で最大限の効果を得ることを目指します。

急性増悪期は1日2回塗布が原則

湿疹や皮膚炎が急に悪化したとき、まずは炎症をしっかり抑えることが最優先です。
この場合、多くのガイドラインでは1日2回の塗布(朝・夕の入浴後)が推奨されています。

理由は、短期間に炎症を鎮めることで、結果的に総投与量を減らし副作用リスクを下げられるからです。

例えば、アトピー性皮膚炎が急に悪化した場合、最初の1~2週間で1日2回塗ってしっかり治し、症状が落ち着いたら1日1回に減らすという流れが推奨されます。

3週間以降は1回塗布と2回塗布で効果に差がない?

日本皮膚科学会のガイドラインなど専門家向け資料では、以下のように述べられています。

「ストロングクラス以上のステロイド外用薬では、1日2回塗布と1日1回塗布の間に、3週間以降の治療効果について有意差はないとされている。」

つまり、急性期を過ぎて維持療法に移行した後は、塗る回数を減らしても大きく効果が落ちるわけではありません。
むしろ回数を減らすことで、皮膚萎縮などの副作用を減らすことが期待されます。

したがって、長期管理では「最少の回数で十分な効果が得られる使い方」が理想とされます。

マイルドクラスでは1日2回の方が有効

一方、比較的作用の穏やかなマイルドクラス(ロコイド、アルメタなど)の場合、1日1回では効果が弱く、1日2回塗布の方が有効性が高いという報告があります。

そのため、同じ1日2回でも「強いステロイドを短期間2回」か「弱めのステロイドをやや長めに2回」かは、症状や患者さんの年齢、部位によって使い分けます。

実際の処方では「部位別に回数を変える」ことも

現場では「全ての部位を同じ回数で塗る」とは限りません。
例えば次のように細かい指示が出る場合もあります。

・症状が強い部分:1日2回
・症状が軽い部分:1日1回
・特に落ち着いている部分:必要時のみ

このように部位ごと・症状ごとにきめ細かく塗布回数を調整することが、治療の質を高めるポイントです。

塗り薬は「いつ塗ればいい?」

「1日1回なら夜?朝?」と迷う方が多いですが、基本は以下の考え方です。

1日1回塗布:お風呂上りに塗るのが最も効果的
→清潔な状態で角質が柔らかく、吸収が良い

1日2回塗布:
①朝(起床後、洗顔や清拭後)
②夜(入浴後)

1日3回塗布:上記に加えて昼頃に1回

入浴後は皮膚が清潔で毛穴も開いているため、塗り薬の浸透性が高まります。

塗る前の準備も大切

どんなタイミングでも、塗る前の準備がとても重要です。

・患部を清潔にする(入浴・シャワー・清拭)
・塗る手もきれいに洗う
・乾いた皮膚に塗る(湿ったままだと効果が薄れることがある)

なお、症状がひどく浸出液が多い場合は、医師の指示で軟膏ではなくローションや湿布を使うこともあります。

使用回数を減らすと副作用は本当に減る?

副作用の発生は「強さ」「塗布回数」「使用期間」の3つが大きく関わります。

使用回数を減らすと、理論上は総投与量が減り、萎縮・血管拡張・多毛などのリスクも抑えられます。
ただし、症状を抑えきれない状態で塗布を減らすと、炎症が長引いてかえって強い薬を使う期間が増えることもあるため注意が必要です。

「急性増悪期にはしっかり塗って、早めに落ち着かせる→維持期は回数を減らす」
このステップが副作用を抑えるための基本方針です。

自己判断で回数を変えていい?

「調子が良くなったからもう塗らなくていいだろう」「1日3回に増やしたい」と自己判断で回数を変えるのはトラブルのもとです。

自己中断するとリバウンド(再燃)が起きやすくなり、最初より強い炎症を招くこともあります。
また、勝手に回数を増やすと過量使用につながります。

必ず医師や薬剤師に相談しながら調整しましょう。

まとめ:回数は「最少で最大の効果」を目指す

ステロイド外用薬は、適切な強さ・回数・量で使うことでとても有用な薬です。

・急性増悪期はしっかり1日2回塗って炎症を抑える
・症状が落ち着いたら1日1回に減らして維持
・部位や症状で塗る回数を調整
・使う前は患部と手を清潔に
・自己判断で回数を変えない

このバランスが副作用を抑えながら、症状を長期的にコントロールするコツです。

塗り薬を正しく使って、皮膚の健康を保っていきましょう。

コメント


カテゴリ

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書: 薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブックの表紙
SNS:X/Twitter
プライバシーポリシー

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

最新の記事


人気の記事

検索