2025年7月23日更新.2,539記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ぶどう膜炎は目の中の病気?

ブドウ膜炎は「目の中の病気」?

「結膜炎や角膜炎なら聞いたことがあるけれど、ブドウ膜炎って何?」
そんな疑問を抱く方は少なくないでしょう。目の病気といえば目ヤニや充血、かゆみなどを連想しますが、ブドウ膜炎はそれとは異なり、「目の中」で起こる炎症です。

しかも、原因不明のものが多く、慢性化するリスクや、場合によっては視力を失うことさえある病気です。

ブドウ膜炎とは?─「内眼炎」とも呼ばれる、目の奥の病気

「ブドウ膜炎」とは、目の中にある「ブドウ膜」に炎症が起こる疾患の総称です。ブドウ膜とは、以下の3つの組織をまとめた呼び名です。

・虹彩(こうさい):瞳の周囲の色のついた部分。光の量を調整します。
・毛様体(もうようたい):水晶体の厚みを変えてピントを調節します。
・脈絡膜(みゃくらくまく):網膜の外側にある血管が豊富な膜。栄養を供給します。

この3つの組織に炎症が起きると、「ブドウ膜炎」と呼ばれます。外から見えない目の中の炎症なので、「内眼炎」とも呼ばれます。

結膜炎や角膜炎とどう違うのか?

結膜炎や角膜炎は、いわゆる「外眼炎」で、外からのウイルスや細菌感染によって起こります。目の充血や目ヤニ、痛みなどを伴い、抗菌薬や抗ウイルス薬などで比較的短期間に治療が可能です。

一方、ブドウ膜炎は内側で起きるため、症状が見えづらく、治療に時間がかかるという特徴があります。

ブドウ膜炎の原因は?

ブドウ膜炎の原因は非常に多岐にわたり、主に以下のように分類されます。

① 免疫異常に関係する疾患
・サルコイドーシス
・原田病(フォークト–小柳–原田病)
・ベーチェット病

この3つは「日本の三大ブドウ膜炎」とされてきました。ただし近年ではベーチェット病の患者数は減少傾向にあります。

② 感染性の原因
・細菌感染(例:結核、梅毒、細菌性眼内炎など)
・ウイルス感染(例:単純ヘルペス、サイトメガロウイルスなど)
・真菌(カビ)
・寄生虫(トキソプラズマなど)

③ その他
・外傷
・悪性腫瘍(眼内リンパ腫など)
・強膜炎に伴う炎症

④ 原因不明(特発性)
2009年の調査でも、3人に1人は原因が特定できないとされており、「特発性ブドウ膜炎」と診断されることもあります。

全身疾患との関連にも注意

ブドウ膜炎の原因がサルコイドーシスだった場合、そのサルコイドーシス自体も原因不明の病気です。また、原田病やベーチェット病も全身の免疫系に関連する疾患です。

つまり、目の炎症として発見されたブドウ膜炎が、全身性自己免疫疾患の初発症状であることもあるのです。

どんな症状が出るのか?

ブドウ膜炎では以下のような症状が見られます。

・霧視(むし):かすんで見える
・飛蚊症:視界に虫のような浮遊物が見える
・羞明(しゅうめい):光がまぶしい
・充血
・眼痛(がんつう)
・視力低下

片目だけに症状が出ることもあれば、両目に出ることもあります。また、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すケースが多く、慢性化しやすいのが特徴です。

ブドウ膜炎は「失明の原因」になる?

ブドウ膜炎は放置すると、重篤な合併症を引き起こすことがあります。

主な合併症
・緑内障(眼圧の上昇による視神経障害)
・白内障(水晶体の混濁)
・黄斑浮腫(網膜の中心がむくむ)

これらは視力障害や失明につながる可能性があるため、早期の治療が重要です。

治療法は?─基本はステロイド

治療の中心はステロイド(副腎皮質ホルモン)による抗炎症療法です。

点眼薬
・フルメトロン点眼液
・リンデロン点眼液

内服薬・注射薬
・プレドニゾロン(内服)
・ステロイドパルス療法(重症例)
・免疫抑制剤・生物学的製剤:
ステロイドでコントロールできない場合、免疫抑制剤(シクロスポリン、メトトレキサートなど)や生物学的製剤(アダリムマブなど)が使用されることもあります。

ステロイド使用中の注意点

ステロイドは炎症を抑える効果が強力な反面、長期使用には注意が必要です。

・眼圧上昇(ステロイド緑内障)
・白内障の進行
・感染症のリスク増大

また、もともとブドウ膜炎自体が眼圧を上げることがあるため、定期的な眼圧チェックが不可欠です。

ブドウ膜炎と長く付き合うために

ブドウ膜炎は、「点眼薬を数日させば治る」というタイプの病気ではありません。原因によっては、長期間の治療や再発予防のための維持療法が必要になります。

また、内科や免疫科と連携して全身性疾患を含めた診断と治療が必要になるケースもあります。

・ブドウ膜炎は「目の中」の炎症=内眼炎
・原因は免疫異常や感染、外傷、腫瘍など多岐にわたる
・症状はかすみ目、飛蚊症、羞明、視力低下など
・ステロイドが治療の中心だが、副作用に注意が必要
・放置すると視力障害や失明のリスクがある

「目の奥が変だな」と思ったら、迷わず眼科受診を

目の症状を自己判断せず、「結膜炎だろう」と市販薬で様子を見るのは危険です。特に視力が落ちたり、かすんで見えたり、見え方に異変を感じた場合は、早めの眼科受診がカギです。

ブドウ膜炎は「目だけの病気」ではなく、体の不調のサインかもしれないのです。

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