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1型糖尿病=インスリン依存型糖尿病?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約3分21秒で読めます.
2,291 ビュー. カテゴリ:IDDMとNIDDM
昔はインスリン依存性糖尿病(IDDM)とか、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)とか、IDDMのことを若年性糖尿病だとか言っていましたが、現在は1型糖尿病、2型糖尿病と呼ぶことが多い。
糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。
1型糖尿病では、インスリンを合成・分泌する膵β細胞が破壊・消失し、インスリンの産生が低下し、インスリンの作用不足を生じます。
2型糖尿病では、インスリン分泌不全やインスリン抵抗性(インスリン分泌は正常だが、効力が低下している状態)をきたす複数の遺伝因子に、過食・運動不足・肥満・ストレスなどの環境因子が加わり、インスリンの作用不足を生じます。
インスリン分泌がほぼなくなって、著しい高血糖になって、体外からインスリンを補い続けるインスリン療法が欠かせない状態をインスリン依存状態といいます。
これに対し、インスリン分泌が少し残っていて、インスリン療法をしなくても生命を維持できる状態をインスリン非依存状態といいます。
前者は以前、IDDM(insulin dependent diabetes mellitus)と呼ばれ、1型糖尿病と同じ意味で使われることもありました。
また後者はNIDDM(non-insulin dependent diabetes mellitus)と呼ばれ、おもに2型糖尿病のことを指す言葉として使われていました。
実際に、1型糖尿病のほとんどはインスリン依存状態にあり、2型糖尿病の多くはインスリン非依存状態ですが、全く同じ意味では使用できません。
1型でも一時的にインスリン療法が不要になる時期もありますし、2型にその逆のことが起きるケースもあります。
1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
---|---|---|
割合 | およそ5% | およそ95%以上 |
成因 | 主に自己免疫を基礎とした膵β細胞の破壊 | インスリン分泌低下、インスリン抵抗性 |
病態 | 主にインスリン依存状態(絶対的なインスリン欠乏)⇒生命維持にインスリン治療が不可欠 | 主にインスリン非依存状態(相対的なインスリン不足)⇒生命維持にインスリン治療は必須ではない |
インスリン抵抗性 | なし | あり(程度は様々) |
発症年齢 | 若年期に多い(中高年でも認められる) | 40歳以上に多い(近年は若年発症も増加している) |
肥満との関係性 | 関係性はない | 肥満、または肥満の既往が多い |
家族歴 | 血縁者における糖尿病は、2型糖尿病より少ない | 血縁者にしばしば糖尿病を認める |
症状の進行 | 多くの場合、急激に症状があらわれる | 進行するにつれて緩徐に症状があらわれる |
昏睡 | 糖尿病ケトアシドーシスが多い | 高浸透圧高血糖症候群が多い |
1型糖尿病にDPP-4阻害薬は禁忌?
エクアなどのDPP-4阻害薬の禁忌には、
「糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、1型糖尿病の患者〔インスリンの適用である。〕」
と書かれており、1型糖尿病に対して禁忌となっている。
バイエッタなどのGLP-1受容体作動薬も1型糖尿病に対して禁忌となっている。
1型糖尿病はインスリン分泌能が無いか、あってもわずかなので、インクレチンを増やしてもインスリン分泌が促されることがなく、使っても無意味。
と思っていましたが。
インクレチン関連薬は,DPP-4 阻害薬およびGLP-1 受容体作動薬ともに,添付文書上は1型糖尿病に対しては「禁忌」となっている.確かに,インスリン依存状態にある患者に対する単独投与は高血糖・ケトアシドーシスを招く可能性があるため大変危険であり,従来は「インスリン依存型糖尿病」であったものがそのまま「1型糖尿病」に添付文書上で置き換わったためこのような記載となった.しかし,成因論的な分類である「1型糖尿病」と臨床的な病態を表す「インスリン依存」は本来区別されるべきである.実際,DPP-4 阻害薬で作用が増強するGLP-1 とGLP-1 受容体作動薬には,インスリン分泌促進作用以外に膵β細胞の温存作用や免疫修飾作用があり,インスリンが残存している時期の使用による進展予防効果が期待され,とくに日本で多くみられる緩徐進行1 型糖尿病における有効性が注目されている.また,GLP-1 にはグルカゴン分泌抑制,胃排泄運動の抑制,食欲抑制作用などがあり,内因性インスリン分泌が認められない症例に対しても,インクレチン関連薬をインスリンと併用することにより血糖安定化やインスリン使用量および体重の減少が期待できる.
インクレチン関連薬の可能性
1型糖尿病=インスリン依存型糖尿病、というわけではない。
2型糖尿病=インスリン非依存型糖尿病、というのはある意味正しいかも知れませんが。
しばらくインスリン分泌が保たれるタイプの、緩徐進行1型糖尿病では、DPP-4阻害薬や、その他の内服薬も効く可能性があるわけだ。
でも、緩徐進行1型糖尿病の場合、初めはインスリン分泌があり、SU剤などで血糖値が下がるわけで、2型糖尿病として治療が進められる。
そのうち内服薬の効果が無くなってきて、結果的に「緩徐進行1型糖尿病だったのか」と思いますが、初めから緩徐進行1型糖尿病であると見抜くことは困難と思われる。
なので、やっぱり1型糖尿病にDPP-4阻害薬が処方されることは無いわけで、禁忌にしておいても問題はないかな。
ちなみに、アマリールの禁忌には、
「重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、インスリン依存型糖尿病(若年型糖尿病、ブリットル型糖尿病等)の患者[インスリンの適用である。]」
インスリン依存型糖尿病と書かれており、1型糖尿病ではない。古いのかな。
適応症は2型糖尿病なのに。
適応症もインスリン非依存型糖尿病に変えたらいいのに。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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