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DPP-4阻害薬は便秘になりやすい?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約3分7秒で読めます.
5,161 ビュー. カテゴリ:DPP-4阻害薬
インスリンの分泌を助けて、血糖値を下げる薬です。
食後に消化管から分泌されるインクレチンというホルモンは血糖を下げるインスリンというホルモンの分泌を促進したり、血糖を上げるグルカゴンというホルモンの分泌をおさえたりする働きがあります。
この薬は、インクレチンを分解するDPP-4という酵素の働きを阻害することにより、インクレチンの濃度が上昇することで、インスリン分泌をうながし、グルカゴン分泌を抑えて、血糖を下げる薬です。
インスリン分泌能の残る2型糖尿病例に有効。 SU剤と併用する場合は、SU剤を減量して低血糖に注意する。
血糖上昇時に膵からのインスリン分泌を促し血糖改善する。
単独では低血糖は起こらないが、SU剤と併用時、低血糖の可能性あり。
DPP4阻害薬と便秘
GLP1には、消化管の蠕動運動を抑制し、幽門筋の収縮力を高め、経口摂取された食物の十二指腸への流入を遅延させる働きがある。
そのため血中のGLP1濃度が高まると、吐き気、腹部膨満、便秘などの消化管症状が起こりやすくなる。
これらは、GLP1アナログ製剤ではよく知られた副作用だが、GLP1の分解を阻害するDPP4阻害薬でも、起こる可能性は十分にある。
エクアの副作用をみると、
(1%~5%未満)便秘、腹部膨満、血中アミラーゼ増加、リパーゼ増加
と、高めの割合でみられる。
DPP4阻害薬と膵炎
DPP4阻害薬のスイニー錠(アナグリプチン)、トラゼンタ錠(リナグリプチン)、テネリア錠(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物)、またテネリアを含むカナリア配合錠(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物)の重大な副作用に「急性膵炎」が追記されました。
過去3年の国内報告数(因果関係が否定できない例数)として、スイニー錠2例(死亡なし)、トラゼンタ錠4例(死亡例なし)、テネリア錠5例(死亡例なし)、カナリア配合錠0例となっています。
カナリアは0例ですが、テネリアを含むので改訂指示されています。
ほかのDPP4阻害薬、グラクティブ/ジャヌビア(シタグリプチン)、エクア(ビルダグリプチン)、ネシーナ(アログリプチン)、オングリザ(サキサグリプチン)、ザファテック(トレラグリプチン)、マリゼブ(オマリグリプチン)にはすでに重大な副作用に急性膵炎は記載されています。
そもそも糖尿病の人は膵炎やすい臓がんを発症しやすいといわれており、DPP4阻害薬がそのリスクをさらに押し上げているのかどうかは不明な状態。
膵炎とDPP4阻害薬の使用に因果関係はないという報告もある。
DPP4阻害薬もまだまだ新しい類の薬なので、今後さらに長期投与が増えていって因果関係がわかっていくのでしょう。
それを待ってては遅いということで添付文書的には早めの注意喚起が求められます。
インクレチンと膵臓
インクレチンの働きについておさらい。
インクレチンは小腸から分泌されている消化管ホルモンです。
インクレチンにはグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)とグルカゴン様ペプチド-1 (glucagon-like peptide-1:GLP-1)があります。
インクレチンは食物を感知して膵臓のインスリン分泌を高め、血糖を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を抑えます。
インクレチンは、血糖値が上昇した時のみに作用します。血糖値が 80mg/dl以下になるとその作用をストップします。そのため、原則的に低血糖は起きません。
通常、インクレチンは、消化管、腎臓、前立腺などの上皮細胞や内皮細胞、リンパ球などの細胞膜に発現し、可溶性タンパク質として血中にも存在しているジペプチジルペプチダーゼ-4(dipeptidyl peptidase-4:DPP-4)によって速やかに不活性化されるため、インクレチンの血中半減期は数分とごく短いのです。
じゃあ、このDPP4を働かなくさせればインクレチンの働きが長く保たれる、ということでDPP4阻害薬が開発されました。
インクレチンが膵臓からのホルモン分泌をコントロールしていると考えれば、本当は短時間でなくなるはずのホルモンが長時間居座り続け、膵臓がオーバーヒート(膵炎)を起こす可能性は想像はできます。
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