2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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DPP4阻害薬の使い分け

DPP4阻害薬

ジャヌビア/グラクティブ、エクア、ネシーナ、テネリア、スイニー、トラクリア、オングリザといったDPP4阻害薬。
違いがよくわからない。

医薬品名規格用法代謝経路
ジャヌビア/グラクティブ12.5mg/25mg/50mg/100mg1日1回腎排泄
エクア50mg1日1~2回腎排泄
ネシーナ6.25mg/12.5mg/25mg1日1回腎排泄
スイニー100mg1日2回腎排泄
テネリア20mg1日1回腎・胆汁排泄
トラゼンタ5mg1日1回胆汁排泄
オングリザ2.5mg/5mg1日1回腎排泄

1日1回の用法で、腎臓からも肝臓からも代謝されるテネリアが一番よさそうですが、処方頻度は多くない。

DPP-4阻害薬は、膵臓からのインスリン分泌を促進するインクレチンというホルモンを分解するDPP-4という酵素の働きを抑え、インクレチンを分解されにくくします。
その結果、インクレチン作用が高まって、インスリン分泌量を増やし、血糖値を下げます。
薬剤によって服薬が朝1回なのか、朝夕2回なのかの違いはありますが、有効性や安全性などはほとんど差がありません。
シタグリプチンとアログリプチン、アナグリプチン、サキサグリプチン、トレラグリプチン、オマグリプチンは腎機能に応じて用量の調節が必要ですが、それ以外はほとんど変わらないので、何も考えないで最初に処方する分にはとても使いやすい薬です。

透析患者に使えるDPP4阻害薬

シタグリプチンリン酸塩水和物(グラクティブ、ジャヌビア)、ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン安息香酸塩(ネシーナ)といった腎排泄型のDPP阻害薬とは異なり、リナグリプチン(トラゼンタ)は胆汁排泄型であることが大きな特徴である。

主に糞中に未変化体として排泄され、腎臓からはほとんど排泄されない。
このため、透析患者にも用量調節の必要なく投与できる。

現にリナグリプチンの添付文書には、禁忌や慎重投与の項に透析患者や腎障害患者の記載がない。
他のDPP4阻害薬を見ると、シタグリプチンは透析患者には禁忌であり、アログリプチンは透析患者に投与可能だが減量が必要である。

ビルダグリプチンは、腎排泄型であるが肝での加水分解で主に代謝されるので、透析患者にも用量調節せずに投与が可能である。
ただ、ビルダグリプチンは透析患者に対する使用経験が少ないため、透析患者には慎重投与となっている。

リナグリプチンは、胆汁排泄型であることに加え、単剤使用であれば低血糖を起こしにくいというDPP4阻害薬に特有の利点も持つ。
このような特長は、血糖値が変動しやすい透析患者にはメリットが大きい。
ただし、リナグリプチンでも低血糖や腹部膨満感、便秘などの副作用は起こり得るので、そのことは患者に指導しておく必要がある。

医薬品名一般名尿中未変化体排泄率
グラクティブ/ジャヌビアシタグリプチンリン酸塩水和物79~88%
ネシーナアログリプチン安息香酸塩72.80%
エクアビルダグリプチン23%
トラゼンタリナグリプチン5%
テネリアテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物14.8~22.1%
スイニーアナグリプチン49.90%
オングリザサキサグリプチン水和物15.80%
ザファテックトレラグリプチンコハク酸塩76.10%
マリゼブオマリグリプチン74%

トラゼンタやテネリアは、尿中未変化体排泄率が低く、腎機能障害患者に対する投与量の調節も必要がない。

透析患者に禁忌のDPP4阻害薬

ザファテックの禁忌には、

高度の腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者[本剤は主に腎臓で排泄されるため、排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。]

とあり、透析患者に禁忌である。

シタグリプチンリン酸塩水和物(グラクティブ、ジャヌビア)は従来、重度腎機能障害と透析を要する末期腎不全には禁忌だったが、2013年6月に割線入りの25㎎錠、同年9月に12.5㎎錠が承認され、現在は投与可能である。

トラゼンタは腎臓にやさしい?

トラゼンタ(リナグリプチン)は、DPP-4阻害薬のなかで唯一、胆汁排泄型薬剤である。

未変化体として胆汁中に約80%排泄されるため、尿中未変化体排泄率は約5%と低く、添付文書にも腎機能低下時の注意に関する記載がない。
この点はシタグリプチン(グラクティブ、ジャヌビア)、アログリプチン(ネシーナ)では腎機能障害を有する患者への減量基準が設けられていることと大きく異なる。

肝機能障害を有する患者への投与においてもAUCやCmaxが増加せず、肝機能の低下に伴う曝露の増大を認めなかった。
このため、ビルダグリプチン(エクア)のように重度肝機能障害を有する患者に対しての禁忌や、投与後の定期的な肝機能検査を義務付ける記載も無い。

トラゼンタの消失半減期はおよそ12時間と産出され、服用から24時間後のDPP-4阻害率は70%以上とされている。
シタグリプチン(服用から24時間後のDPP-4阻害率:80%以上)やアログリプチン(服用から24時間後のDPP-4阻害率:75%以上)と同様に1日1回での服用が基本用法となっている。
一方で、ビルダグリプチンの消失半減期は約2.4時間であり、服用から12時間後のDPP-4阻害率は80%以上だが、24時間後には4.5%と低下するため、1日2回の服用が基本となる。

トラゼンタは2相性の消失を呈し、終末相の半減期は143時間と非常に長い。これは、トラゼンタの分布容積が類薬と比較しけた違いに大きいことや、DPP-4に結合したトラゼンタの解離が緩徐であることが寄与しているとされる。
トラゼンタは胆汁中に排泄されるため腸肝循環の寄与も想定されるが、動物実験による検討ではその影響は極めて低いと考察されている。

DPP4阻害薬

DPP-4阻害薬はインクレチンと呼ばれるホルモンに関係する薬である。
ではインクレチンとは、どんなホルモンなのか。

簡単に言ってしまうとインクレチンは「膵臓からのインスリン分泌を促すホルモンの総称」だ。
食事をとった時に、インクレチンは腸管から分泌される。
そして分泌されたインクレチンは、血糖値を下げるインスリンの分泌を促す。

このように、通常は血糖値が下がるようになっている。
しかしインクレチンは、DPP-4と呼ばれる物質によって分解されてしまう。
その結果、血糖値を十分に下げられないのだ。
そこでDPP-の働きを阻害してやれば、インスリン分泌を促進できるので血糖値を下げられることが分かる。

DPP-4阻害薬の作用機序

DPP-4阻害薬はDPP-4の働きを阻害することで、活性型GLP-1濃度や活性型GIP濃度を高め血糖依存性のインスリン分泌促進作用やグルカゴン分泌抑制作用を示す薬剤です。

膵β細胞からのインスリン分泌を促進するグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)はジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)で速やかに分解・不活性化される。
DPP-4を選択的・可逆的に阻害することで内因性GLP-1濃度を高め、血糖依存性にインスリン分泌を促進させるとともに膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、血糖降下作用を発揮する。

【DPP-4阻害薬の副作用】
主な副作用は消化器症状である。血糖依存的に作用を示すことから、単剤では低血糖リスクは低いとされる。ただし、SU薬併用例では重症低血糖を起こす恐れがあることから、併用時にはSU薬の減量を考慮する。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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